2022/01/13

朝の山林で採食するホンシュウジカ♂@山形県【トレイルカメラ】

 

2021年10月中旬・午前9:40頃・晴れ 

里山の水場を監視するトレイルカメラ(無人センサーカメラ)でまたもや衝撃映像が撮れました。 
なんとホンシュウジカ♂(Cervus nippon centralis)が登場したので仰天しました。 
ここ山形県では20世紀前半に絶滅したのに、いつの間にか復活していたようです。 
山形県の最新版レッドリストからホンシュウジカは外されていました。
福島県から北上したのか、新潟県や宮城県から山伝いに来たのか、興味深いところです。

【参考文献】 

晴れた午前中なのに、現場は鬱蒼とした雑木林に囲まれてかなり暗く、赤外線の暗視モードで録画されていました。 
てっきりいつものニホンカモシカかと思いきや、頭部に立派な角があるのでニホンジカの♂と判明しました。 
生きた鹿を見たのは昔、奈良公園に行ったとき以来なので、とても興奮しました。 
せっかくのスクープ映像がモノクロなのは残念ですが、林道に浮かぶ鹿のシルエットが逆に幻想的です。 

池の対岸で地面の匂いを嗅いで回り、下草や灌木の葉を採食しているようです。 
池の水を飲むかと期待したのですが、なぜか水辺には近寄らず、何かに驚いて急に右へ跳んで水場から離れました。 
トレイルカメラの立てる微かな物音に敏感なのか、それとも私が池の岸辺に置いた茹で栗に気づいて警戒したのかもしれません。 
(ヒトの体臭を嗅ぎ取った? カビの生えかけたクリの存在が気に入らない?) 

その後は林道を歩いて灌木の葉を採食しているようです。 
角からボロボロに垂れ下がっているのは、角から剥がれかけた皮膚なのか、あるいは枯れ葉などのゴミが角に付着したのかな? 

私の通うフィールドで見つかる蹄の足跡と言えば、かつてはカモシカだけでした。 
見分ける必要がなくて楽だったのですが、最近は絶滅から復活したイノシシとシカもたまに出没するようになり、ややこしくなりました。 
有蹄類の足跡の見分け方をしっかり勉強し直さないといけません。 

オオカミが絶滅して以来、現代の日本の山林は捕食者の大型肉食獣が不在という歪な生態系になりました。 
その結果、草食獣が増え放題となり、農作物の食害や山林の荒廃が生じるようになりました。 
特にシカ問題はどこも深刻です。
山形県も対岸の火事ではなくなりました。


【追記】
古典的名著(バイブル)の誉れ高い、高槻成紀『北に生きるシカたち シカ、ササそして雪をめぐる生態学(復刻版)』を読んで北国のニホンジカについて勉強してみたら、私の認識に誤りがあることが分かりました。
奥羽山脈の西側に位置する山形県は日本海側の気候に晒される多雪地帯です。
多雪地帯に適応したニホンカモシカと異なり、ニホンジカは蹄の面積が小さくて深雪では活動が著しく制限されてしまうのだそうです。
草食獣としては同じでも、ウシ科のニホンカモシカは低木を食べるブラウザー(browser)的、シカ科のニホンジカはイネ科の草を食べるグレイザー(grazer)的とされ、解剖学的にも生理学的にも生態学的にも異なるのだそうです。
シカの主な食料である常緑の笹が雪の下に埋もれてしまうと、飢えた鹿は低地または寡雪地域に移動します。
したがって、山形県でシカの個体数が増える可能性は今後も低いでしょう。
山形県はシカによる深刻な食害問題から冬の豪雪によって守られているのです。
逆に、暖冬が続いてシカの目撃例が山形県で増えるようだと、地球温暖化の影響が非常に深刻であることを意味します。

・シカの分布は基本的に積雪50cm以下の地域に限られており、100cm以上の地域にはほとんどいない(p101より引用)
・ニホンジカは多雪地域には進出できなかった。(p167より)
・東北地方の山地性落葉樹林は積雪量に対応して、太平洋側にブナ-ミヤコザサ-シカ複合体が、そして日本海側にブナ-チシマザサ-カモシカ複合体がある。(p104より)

今回10月中旬に雄鹿の動画が撮れた意味もだいぶ分かるようになりました。

・8月下旬になると♂の角は伸び切り、皮が剥げるようになる。♂は角を藪に荒々しく打ち付けて皮を剥ぎ、その後、角を木の枝や幹にこすりつけて磨きあげる。(中略)♂の体毛がますます黒くなり、行動も猛々しくなる10月、いよいよシカの交尾の季節になる。(p133より引用)
・10月をピークとする季節はシカの交尾期であり、この季節に成♂は体力を消耗させる。(中略)この時期の成♂は食物を摂ることも忘れたように猛々しくなり、♀を追い掛けまわす。(p150より)



つづく(1年後の撮影)→里山のトレイルカメラに写ったホンシュウジカの下半身 



ノシメトンボ♀♂交尾ペアの連結飛翔【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年10月中旬・午前11:50頃・晴れ

郊外の道端で交尾中のノシメトンボSympetrum infuscatum)♀♂ペアがコンクリート塀の天辺に止まっていました。 
♂は翅を深く下げて休んでいます。 
コンクリートに映る翅の縁紋や翅脈の影も美しいですね。 
 
飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:17〜) 
私がノシメトンボ♀♂の目の前で脚を動かして蹴る素振りをして飛び立たせました。
更に再生速度を落とした1/40倍速のスローモーションを見ると、 ♂が先に反応して飛び立ち、続けて♀も羽ばたき始めていることが分かりました。 
交尾姿勢のまま、♂が主導権を握って飛び去りました。 
コンクリートの塀だと私が思っていたのは、ソバ畑と車道の境界となる土留めでした。

直前までノシメトンボ♂は翅を深く下げていたので、飛び立つには一度翅を上げてから打ち下ろす必要があります。 
本当の捕食者が襲ってきたときなど危機に瀕した際には明らかにタイムロスになるはずです。 
どうして翅を深く下げて休む行動が淘汰されずに生き残っているのでしょうか? 
予備動作無しでいきなりフルパワーで翅を打ち下ろすことができない理由が何かあるのかな? 

飛んで逃げたノシメトンボ♀♂は隣のソバ 畑に逃げ込みました。 
今度はソバの実に止まって交尾を続けています。 
おかげで、側面のアングルで交尾姿勢がしっかり見えるようになりました。 
♂の副性器に♀の尾端を接触して移精しているようです。 
ときどき♂の副性器の辺りが動いているのは、連結角度を調節しているのか、精包を♀に送り込んでいるのでしょう。 
今度も♂は翅を深く下げて休んでいました。 

先を急ぐ用事があった私は、ノシメトンボ♀♂の交尾終了(連結解除)まで見届ける余裕がありませんでした。

(ノシメトンボの)交尾はおもに午前中。植物などに止まって行われる。(図鑑『日本のトンボ』p383より引用)

確かに今回の撮影時刻は正午前でした。 

2022/01/12

夜の雑木林を飛び回るヤママユガ?(蛾)【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2021年10月中旬・午後19:00頃・ 月齢11.7

里山の水場に設置したトレイルカメラ(無人センサーカメラ)に夜行性の蛾が飛ぶ姿が記録されていました。 
白黒の暗視映像では蛾の種類を見分けられませんが、大型のようですし、周囲は雑木林なので、クスサンとかヤママユなどのヤママユガ科ではないかと思います。 
ほぼ無風の静かな夜なのに、まるで風に舞う落葉のような複雑な飛び方をしていました。
♂が性フェロモンの匂いを頼りに♀を探索している探雌飛翔なのかもしれません。 

トレイルカメラは恒温動物の熱源を動体検知して起動するはずなのに、変温動物の蛾がヒラヒラと横切っただけでセンサーが反応したのでしょうか? 
(センサーが反応した原因がこの蛾とは限りません。)
飛翔中の大型の蛾は体温が意外に高いのかもしれません。
運が良ければ闇夜で繰り広げられるコウモリと蛾の攻防戦も撮れそうなので、気長に監視を続けることにします。

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