定点観察の間隔が開いて10日ぶりになってしまいました。
深夜でも半月で明るかったです(月齢19.0)。
いつものように赤外線の暗視カメラで樹洞内をそっと撮影していみると、モンスズメバチ(Vespa crabro)の巣盤を上からすっぽり覆う外皮の底部が大きく開口していました(巣口の拡大)。
嬉しいことに、雄蜂♂が既に数匹羽化していて(少なくとも3匹?)、巣盤上を徘徊していました。
雄蜂♂の触角は長くて先端が緩くカールしてるのですぐ判ります。
生殖カーストが羽化し始めたということは、コロニーの営巣段階が無事に後半を迎えたことになります。
新女王よりも雄蜂♂が早く羽化する雄性先熟なのでしょう。
ただし気がかりなのは、私はこの巣でこれまで創設女王の存在を確認できていません。
もし今後、新女王が羽化してこなかったら、雄蜂♂はワーカー♀が未受精卵を産卵した結果かもしれません。
巣盤の育房内では幼虫が蠢いていました。
おそらくこの蜂の子が新女王に育つのでしょう。
繭キャップは見当たりませんでした。
在巣のモンスズメバチ成虫の中には、空いた育房に頭を深く突っ込んでいる個体が数匹いました。
寝ているのか、それとも育房内の幼虫が吐き戻す栄養液を摂取している(栄養交換)のでしょう。
頭を育房から引き抜いたら触角の長い♂でした。
もう一つの特筆すべき変化として、モンスズメバチの巣に居候する虫たちの数が増え、以前より大胆に活動するようになっていました。
ヤマトゴキブリ(Periplaneta japonica)と思われるゴキブリが多数と、1匹のゲジが巣に出入りしていました。 肉食性のゲジは獲物として何を狩るのでしょうか?
樹洞内にワラジムシの姿が見えなくなったのは、ゲジが捕食した結果なのかな?
ゲジが蜂の子を襲って捕食する可能性があるのか、興味深いところです。
ヤマトゴキブリは無翅の幼虫または短翅の♀成虫ばかりで、長翅の♂成虫を見かけませんでした。
ゴキブリが傍若無人に巣に出入りしたり外皮を齧ったり(?)しても、在巣のモンスズメバチ♀は追い払うどころか全く気づいていない(気にしない?)様子でした。
モンスズメバチは夜行性(昼も夜も外役が可能)のはずなのに、暗闇で目が良く見えるという訳ではないようです。
居候を決め込んだゴキブリは、体表成分をモンスズメバチに化学擬態して気づかれないようにしているのだとしたら面白いですね。
モンスズメバチは雄蜂♂の羽化と引き換えに在巣のワーカー♀個体数が減っていたので、コロニー全体の防衛力が低下しているのかもしれません。
木屑(外皮の破片?)を糸で綴ったようなゴミが樹洞内にぶら下がっていました。
何者か(居候昆虫:蛾類?)の巣かもしれません。
後日、この位置にマイマイガの垂蛹が見つかりました。
他には微小なアリ(種名不詳)も何匹か樹洞内を徘徊していました。
動画撮影の合間に赤外線のデジタル温度計で測定してみると、巣盤の表面温度は24.6℃。
樹洞の底に溜まった木屑は24.3℃。
樹洞内部(開口部の奥)は24.4℃。
営巣木の周囲の外気温は24.3℃、湿度76%。
ちなみに、点灯した赤外線投光器の表面温度は32.3℃まで発熱していました。