2019年8月下旬・午後14:05頃
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離着陸を繰り返すオナガサナエ成熟♀【HD動画&ハイスピード動画】
道端の笹薮で見つけたオナガサナエ(Melligomphus viridicostus)の成熟♀が飛び立つシーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ろうとしたら、とても鈍感なので驚きました。
笹の枯れ葉に止まって個体を飛び立たせようと私が右手の指をそっと伸ばしても逃げません。
それどころか、腹端や翅に繰り返し触れたり押し上げたりしても飛び立たないのです。
かなりしつこく指で翅を擦り上げるように触れたら、ようやく前方に飛んでくれました。
さすがに同じ場所には戻って来ませんでした。
少し飛んだだけで近くの笹の葉に止まり直したので、同一個体でもう一度やってみましょう。
指でオナガサナエ♀の翅や後脚に触れても、やはりなかなか飛んでくれませんでした。
ようやく飛び立つと、同じ場所には舞い戻って来ませんでした。
オナガサナエと出会ったのはこの日が初めてだったので、たまたま(個体差)なのかと思いました。
酷暑で夏バテ(衰弱)しているのでしょうか?
帰宅してから調べてみると、オナガサナエは鈍感なのだそうです。
(オナガサナエの)成熟個体は河川中流域の河原の石の上や枝の先などにじっと静止していることが多い。本種は警戒心が薄く、かなり至近距離に近づくまで逃げないことが多い。 (wikipediaより引用)
こんなおっとりした性質が弱肉強食の自然界で淘汰されずに残っているのが不思議です。
鳥などの捕食者に襲われたらひとたまりもないでしょう。
物陰に隠れたり擬態している訳でもありませんし、一体どうやって身を守っているのかな?
2019年8月下旬・午後15:30頃
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舗装路で産卵を試みるショウリョウバッタ♀
ショウリョウバッタ♀(Acrida cinerea)が舗装路で産卵していることに気づかなかった私は、跳んで逃げるシーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
三脚に固定したカメラで狙いを付けてから私が歩み寄ると、ショウリョウバッタ♀はまず後脚を引き寄せて跳躍の準備体勢になりました。(逃げる気満々)
更に私が近づくと、長い後脚で力強く地面を蹴ってから翅を広げて羽ばたきながら飛び去りました。
ちなみに♂のショウリョウバッタは飛びながら「チキチキチ……♪」と発音することが知られています。
♀は鳴かないのですが、どのみちハイスピード動画では残念ながら録音されません。
仮に鳴いたとしても、おそらく近くを流れる川の水音で掻き消されてしまったでしょう。
舗装路の横の芝生に着陸したので、もう一度撮影を繰り返します。
画面の中央に居るショウリョウバッタ♀が視聴者の皆さんには見えますか?
緑色型のショウリョウバッタ♀は周囲の芝生に完全に溶け込んでいます。(見事な保護色)
バッタの背後から右手を差し出すと、警戒して飛んで逃げました。
後半は逃避行動を更に1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(実際の動きに対して1/40倍速のスローモーション)
▼関連記事(3年前の撮影:褐色型♀)
ショウリョウバッタ♀の跳躍と飛翔【ハイスピード動画】
【追記】
内田正吉『減るバッタ増えるバッタ―環境の変化とバッタ相の変遷』という本を読みました。
筆者は生物地理学(動物地理学)や生態地理学の観点から調査し、それをまとめた本なのですが、私の琴線に触れたのは、「ショウリョウバッタはなぜハの字型なのか?」という余談です。
日本産バッタの大部分の種は、静止している時には、後脚は腹部に密着するようにしている。ところが例外的に、静止しているときにも後脚を腹部から離しているバッタがいる。(中略)それは、ごく普通に見られるショウリョウバッタである。(p66より引用)
ショウリョウバッタモドキが静止している時は、常に後脚を腹部に接している。一方、ショウリョウバッタは後脚を腹部に接することはなく、「ハの字型」をしている。(p68より引用)
そして筆者は次のような仮説を提示しています。
ショウリョウバッタの成虫、特に♀の成虫は、高茎のイネ科植物の葉を食べる修正がある。(中略)ショウリョウバッタは、イナゴのように直立している茎につかまることはできない。また、ショウリョウバッタは、特に♀では体が大きいので植物上に乗るのは工夫が必要だ。そこで、脚を四方に広げることで、重たい体重を少しでも分散させ、下に落下する危険性を少なくしているのではないだろうか? (p71-72より引用)
確かに言われてみれば、ショウリョウバッタの後脚はガニ股でハの字型に開いていました。
こういう素朴な疑問をエボデボで真面目に研究してみると面白いかもしれません。
発音行動や求愛、交尾の際に後脚がガニ股でないと困る、という別の可能性も考えられます。