2017年5月中旬
イチモンジチョウの飼育記録#5
食餌植物として新鮮なタニウツギの小枝を採取してきて与えてやりました。
するとイチモンジチョウ(Limenitis camilla)終齢幼虫は花のつぼみの基部に5本ある緑色の細長い萼片に口をつけて食べ始めました。
なぜか若葉よりも萼の味が気に入ったようで、やがてほぼ全てのつぼみの萼が丸坊主になってしまいました。
しかし花の蕾自体は決して齧りませんでした。
常識を疑いタニウツギの葉に毒が蓄積されていると仮定すれば、イチモンジチョウ幼虫が葉よりも若い萼片を好むのも納得できますし、前進運動のぎこちなさは中毒による神経症状で説明できるかもしれません。 (追記:緩急をつけたぎこちない前進運動はイチモンジチョウ幼虫に特有なもので、異常な運動障害ではありませんでした。)
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#6:食欲を失ったイチモンジチョウ終齢幼虫の徘徊運動
▼前回の記事
営巣地の縄張り内で配偶者を侵入者と誤認したハシボソガラス(野鳥)
高圧線の鉄塔#19でのハシボソガラス営巣記録#9
2017年5月中旬・午後17:26~17:28
在巣のハシボソガラス(Corvus corone)雛鳥は3羽。
やんちゃ盛りの雛は親鳥が留守の間も巣の中で暴れ回り、ときどき激しく羽ばたいて飛ぶための練習をしています。
互いの体の上に乗って羽ばたいているのは遊びのような兄弟喧嘩でマウンティングする(順位を決める)要素もあるのでしょうか?
騒ぎ疲れると、おとなしくなります。
雛の羽ばたき練習を見たのはこれが初めてで、私も感無量です。
飛翔筋を鍛え、このまま無事に巣立ちを迎えて欲しいものです。
つづく→#10:巣内で相互羽繕いするハシボソガラスの雛(野鳥)
2017年5月中旬
イチモンジチョウの飼育記録#4
さて、これまで紹介した記録映像をご覧になった方は何かおかしな動きにお気づきになられましたでしょうか?
1匹だけ飼育しているイチモンジチョウ(Limenitis camilla)終齢幼虫の蠕動運動による前進がぎこちないことに私は違和感を覚えました。
ピクッピクッとぎこちないリズムでギクシャクしながら前進します。
Uターンしようとする動きもぎこちない。
室温も別に低くはありませんでした。
この個体だけの運動異常なのか、それとも本種の幼虫に特有な動き方なのですかね?
卵から孵化した直後からこういうぎこちない前進運動なのか、多頭飼育で確かめたいところです。
幼虫の体の緑色は食樹植物の上では保護色ですし、例えば捕食者に見つかりにくいなど適応的な動きなのかな?
私はカメレオンのゆっくりとしたぎこちない歩行を連想しました。(前後に体を揺らしながらギクシャクと「三歩進んで二歩下がる」ときもある)
10年前に飼育した個体の映像を見直してもこんな変な動き方ではありませんでしたが、当時のフィールドノートには「前進シーンもおっとりしている」という謎の記述がありました。
▼関連記事(口元にクローズアップしているため正直言って全身の動きはよく分かりません)
イチモンジチョウ終齢幼虫の食事
撮影時の私は体内寄生を強く疑いました。
▼関連記事
イチモンジチョウ幼虫と寄生蜂の繭
ところが後日、無事に成虫が羽化したので、ますます原因が分からなくなりました。
たまたま幼虫期に運動神経や筋肉に軽い異常を来した変異個体だったのでしょうか?
タニウツギが幼虫に食べられないように毒を葉に溜め込むようになったとか?(中毒症状)
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#5:タニウツギ蕾の萼を食すイチモンジチョウ終齢幼虫
【追記】
古い図鑑ですが、保育社『原色日本蝶類生態図鑑(II)1983』を紐解いてイチモンジチョウの項目を参照すると、答えがしっかり書いてありました。
決して異常な症例ではないと分かり、すっきりしました。
幼虫の歩き方はミスジチョウ類ともよく似ており、緩急のリズムを伴ったごくゆっくりしたものである。(p134-135より引用)
この独特な動きがもし対捕食者戦略として進化したのなら、その有効性(適応)を実証した上で、エボデボの切り口で調べる価値があるかもしれません。