2014年7月上旬
郊外の住宅地で民家の屋根のTVアンテナおよび庭木(針葉樹)の梢に2羽のモズ(Lanius bucephalus)が止まって鳴き交わしていました。
映像で嘴の動きと鳴き声が一致しているので(リップシンクロ)、この個体の鳴き声に間違いありません。
テリトリーを接する♂同士が縄張り争いをしているのでしょうか?
番(つがい)のペアなのかな?
曇り空を背景に逆光なので百舌鳥のシルエットしか分からず、少しでも改善するために自動色調補正を施してあります。
特に、右の木のてっぺんにいる個体の性別が分かりにくく、もどかしいです。
(こちらもたぶん♂だと思います。)
実はこの直前、同じ町内の電線に止まっていたモズ♂の姿を見ています。
▼関連記事
電線から飛ぶモズ♂(野鳥)
個体識別できていませんが、片方はそれと同一個体かもしれません。
長い尾羽を上下しながらキチキチキチ♪と鋭い鳴き声を応酬するだけで、直接的な闘争行動には至りません。
知らず知らず巣に近づいてしまった私に対する警戒声なのかな?
(住宅地で通行人に対していちいち警戒していたら大変そうです。)
巣立ったばかりの幼鳥が縄張りに残っている可能性は?
「モズの高鳴き」と表現される行動が秋にあるそうなのですが、季節が違いますかね?
言い換えれば、今回観察した映像に「モズの高鳴き」とタイトルを付けるのは季節外れでしょうか?
秋から冬にかけてモズの行動を自分の目で観察できていないので、未だ色々と勉強不足です。
最後はTVアンテナに止まっていた個体が左の方に飛び去りました。
逃げたということは、他人の縄張りに来た侵入者だったのかもしれません。
主に鳴いていたのは左の個体@アンテナだったので、意外でした。
梢に残った個体は勝ち誇ったようにしばらく鳴き続けています。
『雪国動物記:第12章:モズのテリトリー』p134-135によると、
モズのテリトリーの境界には必ず緩衝地帯がある。お互いにその緩衝地帯をおかすことがほとんどない。ひとたびテリトリーが確立すれば、その後はほとんど境界あらそいをおこさず、お互いに自分の領地に安んじてせいかつできるのはそういう緩衝地帯のおかげであろう。
縄張り争いするモズ♂の競り鳴きを声紋解析してみる
やや遠いかもしれませんが、いつものようにオリジナルのMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードし、適当に一部を切り取ってからスペクトログラムを描いてみました。
【追記】
山岸哲 編『鳥類生態学入門―観察と研究のしかた』によると、
モズの争い行動は、定住独身♂や放浪独身♂といった独身♂とつがい♂との間に最も多く、両隣つがいとの争いはごくまれにしか起こらない。(中略)モズのつがい♂は、ある空間を防衛するというより、独身♂から産卵前の♀を防衛しており、これを配偶者防衛行動と呼ぶ。 (p54-55より引用)
2014年7月上旬
▼前回の記事
マイマイガ(蛾)終齢幼虫cの繭作り【50倍速映像】
前日、紙箱内に繭を紡いだマイマイガ(Lymantria dispar japonica)飼育個体cの観察記録です。
蛹化脱皮するまで10秒間隔のインターバル撮影で監視することにしました。
採寸の代わりに、一円玉を並べて置いて写し込みました。
前蛹は脱皮に備えて眠(みん)の状態と思われますが、粗く紡いだ粗末な繭の中でときどき蠕動したり寝返りを打ったりしています。
ところが突然、前蛹が反転を始め(22:07 pm)、遂に繭から脱出した(22:21 pm)ので仰天しました。
これは全く予想外の行動でした。
一体全体、何事でしょう?!
脱皮は繭の外で行うのだとしたら、わざわざ苦労して繭を作る意味が分かりません。
無防備な前蛹のときだけ身を守れれば良いのかな?
微速度撮影のため照明を一日中照らし続けているのがストレスなのでしょうか?
室内で撮ったので、寄生蜂の飛来など何か脱走するきっかけがあったとは考えにくいです。
もちろん蚊取り線香(殺虫剤)などは焚いていません。
実はこの個体は寄生バエに体内寄生されていることが後に判明します。
今回観察した前蛹の異常行動がヤドリバエによる寄主操作の一種だったら面白いですね。
マイマイガの内分泌系(脱皮変態ホルモン)が撹乱されていて、もはや脱皮できないようです。
筋肉や運動神経系を食い荒らされている断末魔なのかもしれません。
微速度撮影の早回し映像というのは、見て心地よいスピードが人それぞれ違うようです。
更に2倍速くしたバージョン↑もブログ限定で公開しますので、宜しければご覧ください。
つづく
2014年7月上旬
溜池に近い平地の林縁でモノサシトンボ♀(Copera annulata)がウコギの葉に止まって休んでいました。
平和な光景もよく見ると、実は恐ろしい惨劇の直後だったようです。
交尾しようとした♂が♀の頭部を腹端の把握器で捕まえたまま天敵に捕食されてしまい、腹部の一部しか残っていません。
♀だけが命からがら逃げ延びたのでしょう。
ちぎり取られて残された♂の腹部がときどき自発的に屈曲する様がなんとも不気味です。
トンボの♂は副性器(交接器)に移精してから♀と交尾します。
(トンボの交尾がハート型の体勢になるのはそのためです。)
したがって、カマキリの性的共食いとは異なり、腹端だけ残っていても♂はもはや交尾不能です。
静止している♀は頭部を脚で拭って身繕い。
おそらく♀は自力で♂の把握器を外したり振り解いたり出来ませんから、もはや次の♂と新たに交尾することも難しいでしょう。
そうなると♂は身を犠牲にしつつも究極の貞操帯を♀に付けて死んだことになりますね。(配偶者ガード)
♀にしたら良い迷惑かもしれません。
【追記】
井上清、谷幸三『トンボのすべて(第2改訂版)』という本に「連結中に♂が襲われ、腹端だけ♀の頭に残ったクロイトトンボ」と題した生態写真が掲載されていました。
イトトンボの仲間は♀の産卵中♂が尾部付属器で♀の前胸を挟んで直立し、警護することが多いのですが、そのとき♂が鳥などに襲われ、残った腹端を前胸につけたままの♀を見かけることがあります。(p87より引用)