住宅地の外れで古い物置小屋の軒先にコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の初期巣を見つけました。
徳利を上下逆さまにした独特の形状です。
初期巣とは越冬明けの創設女王が単独で作り上げた巣のことで、中でワーカーが卵から幼虫、蛹へと育ちつつあります。
外敵の侵入を防ぐために、下向きに巣口を細長く伸ばしてあるのがコガタスズメバチの初期巣の特徴です。
この細長い煙突状の巣口は、初ワーカーが羽化した途端にコガタスズメバチ♀自身が撤去する予定です。
この日は初期巣を写真に撮っただけです。
巣の成長を微速度撮影(タイムラプス)したくても、定点カメラを設置できそうな場所がありません。
コガタスズメバチの巣はどうせすぐに駆除されてしまいますから、通りすがりにさり気なく定点観察することにしました。
コガタスズメバチ初期巣の横には前年に営巣したアシナガバチの古巣が残っています。
古巣がぼろぼろになっているのは、風化した上に寄生蛾の幼虫に食害されたからでしょう。
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今年もアシナガバチが営巣しているかな?と期待して軒先を覗き込んだら、コガタスズメバチの巣を見つけたのです。
2023年6月中旬〜下旬
梅雨の季節で、3回しか定点観察できませんでした。
通りすがりに短い動画を撮るだけなので、創設女王の姿は一度も見れませんでした。
私がじっくり観察していると近所の人に怪しまれ、巣の存在を気づかれたら最後、駆除されてしまうでしょう。
連続写真を見比べると、この時期、コガタスズメバチ初期巣の成長は止まっていました。
外皮の大きさも煙突状の巣口の長さも変わっていないようです。
創設女王が外出中に不慮の死を遂げてしまったのではないか?と気を揉みながらも、推移を見守るしかありません。
初期巣の段階で巣が壊されてしまうと、女王蜂はまた一から巣を作り直す必要がありますから、ワーカー♀が羽化してコロニーの防衛力が上がるまでは必要最低限の初期投資しかしないのでしょう。
ノブドウの蔓が軒先まで少しずつ伸びてきました。
コガタスズメバチの初期巣がノブドウの葉にすっかり覆われてしまえば、巣の発覚が遅れて駆除されるまでの時間が稼げるかもしれません。
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2023年7月上旬・午前10:50頃・くもり
しばらく間隔が開いてしまいましたが、久しぶりに様子を見に来てみると、煙突状の細長い巣口が部分的に取り壊されていました。(@0:39〜)
細長い巣口先端部の縁がギザギザに欠けていて、一部を撤去した形跡があります。
更に、丸い外皮の下部が食い破られて、新たに大きな巣口が作られていました。
待ちわびた1匹目のワーカー♀が無事に羽化したようです。
ちなみに、かじり取った外皮は捨てるのではなく、内部の巣盤や育房の材料(巣材)として再利用されるかもしれません。
動画撮影中に運良くコガタスズメバチ♀が飛来しました。
ワーカー♀か創設女王か、私には外見で区別できません。
新しく開けた大きな巣口ではなく、従来通り律儀に煙突状の巣口の狭い先端から潜り込んだのが興味深く思いました。
これまでの帰巣ルーチンの癖が残っているということは、この個体は創設女王だろうと思います。
帰巣シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう(@1:00〜)。
よく見ると、口元に何か黒っぽい団子を運んでいました。
色から判断すると、巣に搬入したのは獲物の肉団子ではなく、どうやら巣材のパルプのようです。
巣盤に掴まって(ぶら下がって)何かしているものの(咀嚼作業?)、残念ながら姿がよく見えません。
獲物の肉団子だとしたら、育房内の幼虫に給餌するはずです。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
数時間後に現場を再訪したのですが、近隣住民が草刈りしていたので撮影できませんでした。
通りすがりに横目でちらっと見ると、煙突状の巣口の状態は往路で見たときと変わりませんでした。
コガタスズメバチの初期巣に特有の細長い巣口を撤去する作業は、ごく短時間に行われると予想していたので、意外でした。
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