2022年8月上旬・午前00:10頃・ 雨上がり
停滞する線状降水帯がもたらした集中豪雨で、川が一気に増水しました。
コンクリートブロックで覆われた護岸がすっかり水没しています。
雨が一時止んだ深夜に、画面の上からツーっと糸を引きながら小さな造網性(?)クモが降りて来ました。
河畔林の樹上に潜んで雨宿りしていたのでしょう。
しおり糸にぶら下がったまま空中でしばらく静止したということは、無風のようです。
やがて、意を決したように更に懸垂下降しました。
そのまま激流に入水してしまうのではないか…と無謀な挑戦が心配になります。
しかし水面に触れたのか、慌てたように引き糸を登り返しました。
クモの種類は多様で水面を走って獲物を狩る者や水中で暮らす者もいますが、普通の造網性クモは水面を避けるようです。
関連記事(6年前の撮影)▶ 糸を引いて懸垂下降するも水面を忌避するアカオニグモ♀(蜘蛛)【3倍速映像】
クモはたとえ昼間でも目がほとんど見えませんから、振動覚(風の動き)で周囲の状況を察知するしかありません。
それでも水害の異変を感じて、安全な場所へ避難しようと試みたのでしょう。
トレイルカメラをくくりつけていたニセアカシアの木は川岸の水際に立っていたのに、今回の増水でも流出や倒伏を免れました。
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※ クモは変温動物ですから本来はトレイルカメラで動体検知できないはずです。
激しい水流や揺れる枝葉などで誤作動した結果、たまたま撮れた映像です。
【追記】
芥川龍之介の書いた有名な短編小説『蜘蛛の糸』で、お釈迦様はクモの糸を極楽から地獄に向かって垂らしました。
糸を吐いたクモがどうなったか、小説を読み返しても全く記述されていません。
実物のクモは自らがしおり糸の先端にぶら下がり、体重を利用して懸垂下降します。
クモの糸だけをどんどん下に降ろすということは不可能です。(風を利用してクモの糸を吹き流すことは可能ですけど、それなら極楽から地獄に向かって強風が吹いていないといけません。)
また、懸垂下降で地獄の血の池まで来たクモは、着水前に水面を怖がって引き返してしまうはずです。
その前にカンダタは素早く腕を伸ばしてクモの糸を掴まないと助かりません。
小説のオチでは、クモの糸にすがって極楽へ登る途中でクモの糸が切れてしまい、他の罪人もろとも地獄に再び落ちてしまいました。
このとき、糸の下端にぶら下がって居たクモも巻き添えを食って地獄の血の池に(真っ先に)落ちた訳ですから、お釈迦様は罪のないクモを見殺しにしたことになります。
以上、腐朽の文学作品に対して野暮な生物学的つっこみを入れてみました。
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