2019年10月下旬・午後16:12・晴れ
▼前回の記事
桑の木で集団婚活するキボシカミキリ♀♂
新たに飛来したキボシカミキリ♂(Psacothea hilaris hilaris)がヤマグワの幹に着陸しました。
飛来シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
♂は♀に比べて触角がとても長いので、すぐに分かります。
本種(しぐま註:キボシカミキリ)の触角は性的2型があり♂の触角は著しく長い(体長に対し触角全長の平均は、♀は約2倍、♂は2.7倍) (『カミキリムシの生態』p162より引用)
キボシカミキリ♂は探雌行動の木登りを始めました。
この後の映像は、キボシカミキリ♂が視覚ではなく触角で交尾相手の♀を探していることを示唆しています。
独身♀が単独で樹皮を齧っている横で新参の独身♂が立ち止まり、周囲を長い触角でしきりに探っています。
しかし結局♂は♀の存在に気づけずに、歩いてどんどん上に登ってしまいました。
キボシカミキリは視覚が良くないようで、♂の触角が♀の胴体にしっかり触れないと異性を発見できないのでしょう。
揮発性の性フェロモンは使われていないようです。
キボシカミキリの配偶行動を実際に観察してから、深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』という総説を読むと、非常に参考になりました。(『カミキリムシの生態』第5章に収録)
キボシカミキリは桑の木を食害する悪名高い害虫です。
養蚕業を救う対策を立てるために、キボシカミキリの生態について詳細な基礎研究が行われてきたという歴史があります。
今回の映像に関連した事項を抜き書きしてみます。
・本種は生木食ではあるが、産卵場所として少し衰弱が始まりかけた生木を好む。すなわちクワやイチジクが多数植えてあっても、成虫は一様に分布するのではなく、樹勢がやや衰えた株、主・支枝などに集中し、そこで交尾・産卵する傾向がある。
・ キボシカミキリでは、遠距離で作用する誘引フェロモンの存在は証明されておらず、寄主樹木からの揮発物質に誘引されて寄主に集合すると考えられている。
・キボシカミキリは単に後食する場所で交尾しているのではなく、産卵する場所(=幼虫の寄主)を交尾場所として選択し、集合していると考えられる。
・ 寄主樹木に飛来、集合したキボシカミキリは、夕方から深夜にかけて特に活発に徘徊する。この徘徊によって寄主樹木上で雌雄が偶然遭遇し、接触する機会が増える。
・ キボシカミキリは寄主上で♂、♀共に徘徊、待ち伏せをするが、♂の方がより活発に歩き回る。しかし雌雄とも、ごく近くに異性が存在しても直接に触る前に相手に気づいているようには見えない。(中略)キボシカミキリは接触する前に配偶者を認識し、定位するとは考えられていない。 (以上、同書p158〜160より引用)
普通の昆虫図鑑や百科事典で調べてもカミキリムシの生態や行動に関する記述があまりにも少ないので、興味のある方に『カミキリムシの生態』を強くオススメします。
分厚い専門書なので敬遠するかもしれませんが、執筆陣は国内の第一人者ばかりですから、少々値が張っても満足度は高いです。(バイブル!)
つづく→ヤマグワの樹皮を産卵加工するキボシカミキリ♀
左♀、右♂ |
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