2014年5月中旬・室温21℃
ヤマトゴキブリ(Periplaneta japonica)成虫♀♂ペアを飼っていると、喧嘩が勃発しました。
長翅の♂は羽化後8日目、短翅の♀は羽化後6日目。
攻撃法は体をやや横向きにして、後脚で横に相手を蹴飛ばします。
ゴキブリの飼育観察を始めて一番興奮しました!
朽木の上に置いた餌のパンを巡る争いでは♀が勝利を収めました(占有行動)。
パンを食べている♀が近づく♂を蹴飛ばしました。
怒った♀がすごい剣幕で♂に駆け寄って追い回すことがあります。
どうやらカカア天下のようです。
ところで♂がパンを食べる様子を見たことがありません。
自分で食べないのになぜパン(食料)の取り合いになるのか謎です。
(ゴキブリは夜行性なので、私が見ていない暗闇では臆病な♂もパンを食べているのかもしれません。)
全体の印象として、♂がちょっかいを出すも、♀は色気より食い気(花より団子)なようです。
隠れ家(朽木の割れ目や窪み)をめぐる争いも目撃しました。(映像なし)
ゴキブリには集合フェロモンを介して集団を作る集合性が有名です。
しかし、成虫同士が近づきすぎると互いに牽制したり喧嘩になるようです。
赤外線を使った暗視カメラがあれば、夜行性ゴキブリの自然な行動をもっと監視・記録できるのになー。
この間、♂が♀に求愛しないのがとても不思議でした。
本で調べてみると羽化しても♀の性成熟に時間がかかり、性フェロモンを未だ分泌していないのでしょう。
本種の♀はなんと単為生殖できるらしいので、交尾しなくても困らないそうです。
『日本動物大百科8昆虫I』によると
・ゴキブリ科の♀は成虫になって(およそ10日)から性フェロモンを生産するようになるが、それを♂成虫が受容して配偶行動が始まる。p92
・ゴキブリ目の配偶行動の特徴は、成熟した♂が成熟♀を認知したときに翅上げ行動をとることである。(中略)ヤマトゴキブリなどの♂は♀の発散するにおいフェロモン(セスキテルペン)をまず触角で感知している。翅上げ行動の後、♂は背面の分泌腺から♀を誘う物質を出し、♀は♂の分泌物を舐めながら背面にのり交尾が成立する。p92
・交尾の際に♀が♂の上に乗る姿勢は、♀上位と呼ばれ、原始的な交尾姿勢として知られている。p90
・♂の背板腺からは、背板への誘引物質と背板をなめさせる刺激物質が分泌される。p92
・(キョウト)ゴキブリの♂同士が出会うと互いに咬み合ったりして攻撃行動を示す。p90
別の参考サイト:ゴキブリの繁殖
互いに蹴り合う闘争行動に関する記述は見つけられませんでした。
もしかすると新発見?!(※)
求愛交尾行動の観察を楽しみにしていたのですけど、そのうち♂は居心地が悪いと感じたのか飼育容器の蓋にあるスリット状の換気孔から脱走してしまいました。
後日、なんとか再捕獲。
ゴキブリ飼育の脱走防止策についてはまた改めて別の記事を書く予定です。
【追記】
※ 『エソロジカル・エッセイ:無名のものたちの世界III』という古本にヤマトゴキブリの近縁種であるクロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)の「間おき集合(spaced-out gregariousness)」について調べた章を見つけました。
p136-137をかいつまんで引用すると、
・集合性昆虫といわれながら、行動を一つ一つリストアップしていくと、攻撃行動、防衛行動、牽制行動ばかりが目立ってくる。
・ある場所を占めた個体は、雌雄を問わず、明らかに占有場所の防衛を行う。
・順位制があるようでもあり、ないようでもある。
・主な能動的行動は、触角を他個体のいる方向に伸長し、ドラミングに似たような探りを入れる行動(さぐり)と、より積極的に、方向転換し、相手に対面し、後脚を浮かし、前のめりのようなかっこうで探りを入れる行動(のぞき)である。これらに対し、受動側が無反応という場合は少なく、多くの場合、
(1)能動行為者をいなすような感じで、向きをかえる(回転)か、刺激の少ない方向へ少し移動する(よけ)行動、
(2)体を高く持ち上げ、体を左右にゆすったり(ゆすり)、主に後脚を用いて能動行為者をける(けり)という牽制行動、
(3)はじかれたようにとびのく(とびのき)、または一目散に逃走する行動(逃走)のいずれかが観察された。
そしてたいてはこれで終りで、再び静かな「間おき集合」が回復するのである。
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