2013年8月中旬
ヨシカレハの飼育記録1
里山でススキの葉に止まっていたヨシカレハ(Euthrix potatoria bergmani)の幼虫を採集してから4日後。
この間、女竹や葦など食草をあれこれ与えてやっても全く食欲がありません。
そのうちに徘徊が激しくなり、繭作りを始めそうな予感。
何度食草に戻してやってもボトッと床に落ちてしまいます。
プラスチックの飼育容器内では絹糸が足場にくっ付きにくいだろうと出してやり、ボール紙でできたティッシュの空き箱に幼虫を閉じ込めました。
箱上部の透明ビニールカバーが覗き窓となって好都合です。
(脱走防止のため、切れ目をセロテープで塞いでおきました。)
薄暗い方が幼虫も安心して繭を紡いでくれそうです。
いざとなったらすぐに紙箱をハサミで切り開いて観察できるという利点もあります。
少し仮眠してから深夜に目覚めてチェックすると、紙箱の側面に繭を作っているところでした。
無から形を創り上げる最初の過程を観察できずに残念。
後で思うと、透明プラスチックの飼育ケースに紙箱の隅の部分だけを切って入れてやれば、外から進捗状況を確認しつつ、繭を作る位置も指定できたかもしれません。
カイコの場合、平面吐糸では繭を作れない。糸を張る足場となる2面以上で囲まれた立体空間が必要。(『糸の博物誌:ムシたちが糸で織りなす多様な世界』第6章:チョウとガの糸 p148より)
慌てて紙箱を切り開き、微速度撮影を開始。
ジオラマモードで撮った10倍速の動画を更にスピードアップした30倍速映像をご覧ください。
撮り始めた時には既にハンモックのような白い繭が大まかに作られています。
しばらく警戒していましたが、ようやく営繭を再開。
狭い繭の中で時折Uターンしながら絹糸を口から吐いて繭を紡いでいます。
休みなく営繭を続けます。
途中から急に絹糸が褐色に変わり、繭の中が透けて見えなくなりました。
絹糸の種類を変えたのか、あるいは何か絹糸を変質させる酵素を分泌し始めたのでしょうか?
毛虫の体毛を繭に植えているのかもしれません。
繭全体が少しずつ褐色を帯びていきます。
繭の網目を漉して落下した黒い脱毛が紙箱の床に少しずつ細かな綿埃のように溜まっていきます。
これに素手で触れるとかぶれるので要注意!
・毒針毛は繭にもあるが、成虫にはない。(wikipediaより)
・カレハガ科のマツカレハなどの繭には幼虫時代の刺毛が含まれます。(『糸の博物誌:ムシたちが糸で織りなす多様な世界』p156より)
完成した繭は灰褐色でした。
近縁種タケカレハの繭に見られたような黒点は無く、形は似ていても色が違います。
関連記事→「繭を紡ぐタケカレハ(蛾)終齢幼虫(150倍速映像)」
参考サイト:「ヨシカレハの観察日記」@晶子のお庭は虫づくし
つづく→「寄主ヨシカレハ(蛾)の繭から脱出するヤドリバエ幼虫」
紙箱に営繭 |
繭の直下には脱毛が散乱 |
採寸 |
側面 |
側面 |
後日、繭を切り開いて調べてみると、紙箱に接した部分は絹糸を節約していることが分かりました。
また、繭の内側には何か漆喰のような粘液を塗った後で白く固まったものが見つかりました。
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