2016/01/26

寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀の産卵および寄主ヒメクモバチとの攻防



2015年10月上旬

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#7


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)が作った泥巣bに招かざる客の到来です。
真っ直ぐに伸びた長い産卵管を有する黒いヒメバチの一種♀が境界標を思わせぶりに徘徊しています。
産卵するチャンスを虎視眈々と窺っている寄生蜂だとしたら、7年前の記憶が鮮明に蘇りました。

▼関連記事(2008年9月下旬撮影)
コクロオナガトガリヒメバチ@ヒメベッコウ泥巣
そのときヒメクモバチ(Auplopus carbonarius)に寄生する蜂として名前を教えてもらったコクロオナガトガリヒメバチ♀(Picardiella tarsalis)の写真(@「日本産ヒメバチ目録」サイト)にそっくりです。

たまたまホスト(寄主)が油断して泥巣を留守にした隙に、寄生蜂が泥巣の下部を触角で探りながら丹念に調べていました。
初めは境界標の側面でマイマイガ幼虫の死骸を調べていたのですが、寄主は鱗翅目ではなく本命はヒメクモバチの泥巣にありました。



「山形県」の刻印(窪み)を利用して泥を詰め込んで作った巣の中で、「形」の字の第6画後半に強い興味を示しています。
ここにヒメクモバチの育房があるようです。

(育房内には母蜂が狩ってきたクモが貯食され、麻酔されたクモの表面に卵が産み付けられているはずです。もしかするとヒメクモバチの幼虫が既に孵化していてクモを食べているところかもしれません。)
寄生蜂♀は腹端を前方に曲げ、産卵管を前に向けると産卵姿勢になりました。
厚く泥塗りされ乾いた巣にこんな華奢な蜂が細い産卵管で突き刺し産卵するとは驚きです。
産卵シーンを背面ではなくできれば側面から撮りたいのですが、私が下手に動くと気配を感じて寄生蜂が逃げてしまいそうで我慢しました。
まさに産卵中に母蜂が空荷で帰宅しました。(@2:20)
境界標の下から登ってきたヒメクモバチ♀bは寄生蜂を見つけても特に激しい攻撃は加えないのが意外でした。
ヒメクモバチ♀が近寄ると寄生蜂が慌てて逃げました。
母蜂は泥巣全体を心配そうに見回ります。
一方、追い払われた寄生蜂は境界標の泥巣がある面の角を曲がった側面に止まっています。
ホスト♀が横を通ると寄生蜂は飛んで逃げるものの、またすぐに舞い戻って来て境界標の天辺の角に静止しました。

マクロレンズを装着して寄生蜂を接写してみました。
しっかり背面を接写するのはアングルが確保できず無理でした。
触角の中央部、腹端、および後脚の先が白色で、残りは全身黒色の蜂です。
泥巣をガードしているホストの顔も接写すると、触角の根本が白く見えました。
寄生蜂の居る上を向いたまま油断なくじっとしています。
(※ マクロレンズで接写したパートのみ動画編集時に自動色調補正を施してあります。)


ほとぼりが冷めると、寄生蜂は境界標の側面から慎重に泥巣へ忍び寄りました。
泥巣上のヒメクモバチ♀bは後ろを向いていて、恐るべき天敵の存在に気づいていません。


「志村〜、後ろ、後ろ〜!!」
ヒメクモバチ♀はなんとなく警戒しているのですが、なぜか寄生蜂とは逆方向へ泥巣を離れてしまいました。
その間に寄生蜂が泥巣の下部に到達し、触角で探っています。
ようやく異変に気づいたヒメクモバチ♀が駆け寄ると、寄生蜂は慌てて飛んで逃げました。
産卵未遂と思われます。
ヒメクモバチ♀は泥巣上で油断なく警戒を続けています。

逃げたと思った寄生蜂はちゃっかり境界標の天辺に居ました。
触角を拭い身繕いしています。
産卵のチャンスを虎視眈々と待っている印象。
急に飛び立つと、境界標の横に生えた灌木(常緑樹)の葉に止まりました。
しばらく休んだり身繕いしてから飛んで境界標へ戻りました。
その間、寄主のヒメクモバチ♀bが警戒して泥巣をガードしています。

7年越しに寄生産卵の決定的瞬間を撮影できて感無量でした。

寄生蜂と寄主が境界標で繰り広げる小競り合いも何度か観察しました。
ヒメクモバチがいくら寄生蜂を追い払っても、しばらくするとまた戻って来ます。
個体識別のマーキングを施していませんが、おそらく同一個体のコクロオナガトガリヒメバチ♀なのでしょう。
ヒメクモバチ♀は天敵の寄生蜂を撃退する有効な対抗手段や防衛戦略を持ち合わせていないようです。
寄生蜂は素早く飛んで逃げてしまうため、殺すこともできません。
もしこの泥巣を採集して蜂の子を飼育すると、果たしてヒメバチが羽化してくるでしょうか?(ヒメクモバチの寄生率を調べる)

母蜂(ヒメクモバチ♀b)がこの日は全く造巣活動せずに泥巣をひたすらガードしていたのは寄生蜂対策だったようです。
息詰まるような神経戦が続き、天敵が心配でおちおち外出できないのでしょう。
もし仮に寄生蜂を採集・除去したらヒメクモバチ♀bは安心して造巣を再開してくれるかな?
それとも別個体の寄生蜂が侵入して来るだけでしょうか?
逆に、泥巣をガードする寄主のヒメクモバチ♀bを除去すれば寄生蜂が産卵する様子をじっくり観察できるかもしれません。
(除去実験は頭をよぎっただけで、今回は自然の成り行きに任せ見守りました。)

つづく→#8:ヒメクモバチは夜どこで寝るのか?【暗視映像】




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