2025/06/17

ヤマキヒゲナガ♂の群飛とレック形成【蛾:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月下旬・午後13:20頃・くもり 

里山の急斜面をつづら折れの山道で登っていると、草むらの上を多数の小蛾がチラチラと飛び回っていました。 
この季節だと、てっきりオドリバエの群飛かと思いきや、下草に着陸した虫をよく見たらヤマキヒゲナガ♂(Nemophora japonica)でした。 
飛び疲れた個体なのか、近くのシダの葉や灌木の若葉に2頭ずつ並んで留まっていました。 
お気に入りの場所で交尾相手の♀を待ち伏せする作戦なのかもしれませんが、♂同士で止まり木を巡る争いにはなりませんでした。
(縄張り争いや占有行動はなし。)

飛翔シーンを高画質のFHD動画で撮影しても、体が小さい上にちらちらと羽ばたく動きが素早すぎてよく見えません。 
ヤマキヒゲナガ♂の群飛を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:51〜) 
少なくとも4頭以上の個体が激しく飛び回っています。 
最後まで飛んでいた個体が、シダの葉に着陸しました。 

同じレック型求愛でも、ユスリカの群飛(蚊柱)とは様子がまるで違いますね。 

関連記事(1、10年前の撮影)▶  


実は、今回撮影した動画素材の順番を入れ替えています。 
ハイスピード動画を一番初めに撮影していて、私が近づいたせいなのか群飛が次第に解消しました。 




【考察】 
ヒゲナガガ科の仲間は、♂が求愛のために群飛をすることで有名です。 
私が山道を通りかかったせいで、ヤマキヒゲナガ♂の群れが警戒して下草から飛び立った訳ではありません。 
群飛を見つけた私がそっと近づいて、動画で撮影したのです。 

くらべてわかる蛾1704種』という図鑑にヤマキヒゲナガは非掲載でしたが、ヒゲナガガ科についての解説を読むと、
小型。♂の触角は前翅長の3倍以上と非常に長い。♀の触角は♂の半分以下と短く、基半部に黒い毛が生え太く見える種が多い。♂は昼間長い触角をたなびかせて競い合うように群飛する。 (p15より引用)
日本動物大百科9昆虫II』によれば、
ヒゲナガガ科には群飛する種と群飛しない種がいる。(中略)クロハネシロヒゲナガは、日中、草地を低くとびかうのが見られ、多数の♂が同じ場所で白い触角を目立たせて飛翔することもあるが、これらの♂は互いにまったく無関心で干渉がないように見える。 群飛をするホソオビヒゲナガでは、♂がからみあって上下するような飛翔をする。樹上のかなり高い位置で群飛することもあり、カ類の群飛と見まちがえることもある。(p71より引用)
ヒゲナガガ類の♂では極端に長くなっていて、前翅長の2〜3倍の長さがある。これは群飛のときバランスをとるのに役立つのかもしれない。(p25より引用)
ヒゲナガガ科の♂は多数が集まって求愛のためのレックを形成し、群飛で♀を誘引して飛びながら交尾するのだそうです。
資源とは特に関係の無い場所に集まった雄が、そこで小さな縄張りを作り、求愛のディスプレイを行う。 このような行動をする雄たちをレック (lek) という。レックが求愛のディスプレイで自分をアピールし、雌を呼び寄せて交尾をするというのがレック型一夫多妻である。
ヤマキヒゲナガ幼虫の食草が何なのか、解明されていないそうです。 
産卵に来る♀を待ち伏せするために、食草の付近で♂がレックを形成している可能性もあります。 
今回ヤマキヒゲナガ♂が留まっていた植物(シダ植物や灌木)の種類をまじめに同定すべきでしたね。 
また、羽化した直後の♀と交尾する可能性もありますが、どこで羽化するかも分かっていないらしい。 

ヤマキヒゲナガの群飛(求愛レック)で性フェロモンを放出している個体は♀♂どちらなのか、という点がとても大切な問題になります。 
そして、性的二型の触角の機能とも関連してきます。 
ヤマキヒゲナガの性フェロモン分子の実態はまだ化学的に同定されていません。 
他の多くの蛾の仲間と同様に、♀が性フェロモンを放出していると仮定した上で、♂の長い触角は空気中の微量な性フェロモンを検知しやすくするための進化適応だというのが、ネット上に流布する定説になっているようです。 
しかし、この定説を誰が言い出したのか、一次ソース(出典)や科学的根拠を見つけられませんでした。 

私はこの定説にどうしても納得できません。 
ヒゲナガガ触角の性的二型が長短の違いだけなら、私も定説に文句をつけたりしないのですが、そうではありません。
ヒゲナガガ♂の触角はただただ異様に長いだけで、単純な形状(糸状)だからです。 
一方、♀の触角は♂よりも短いものの、基部に黒い短毛が密生していて、太くなっています。 
つまり触角の表面積は♀の方が圧倒的に大きくて、微量な性フェロモンを検知しやすくなっています。 
性フェロモン受容体の分布を直接調べることが出来たら、解決するはずです。 
ヤマキヒゲナガ♂は群飛しながら性フェロモンを放出し、♀が視覚的および化学的(嗅覚的)シグナルで誘引されて群飛に飛び込み、1頭の♂と交尾する、というのが私の仮説です。

また、ヤマキヒゲナガの♂は何を頼りにして求愛レックを形成するのでしょうか? 
♀が来そうだと思う場所(目立つ茂みの近くなど)を個々の♂が判断し、結果として複数の♂が集まってくるだけかもしれませんが、いかにも効率が悪そうです。 
遠くまで聞こえる鳴き声(聴覚的なシグナル) を発している訳でもありません。
白くて長い触角や翅の金属光沢など視覚的なシグナルを頼りにして、♂たちが集まってくると考えられているそうです。 
集合フェロモンを放出しているかもしれない、と私は思いつきました。(嗅覚的、化学的なシグナル) 
♂が放出する(と個人的に仮定している)性フェロモンと集合フェロモンは別個の分子かもしれませんし、同じ分子が受け手の性別によって異なる効果をもたらすのかもしれません。 

ヒゲナガガの群飛はなかなか面白そうな研究テーマですが、配偶行動の観察だけでなく、食草や飼育法を確立するところから始める必要がありそうです。 
長い触角を実験的に切除すると、飛翔や配偶行動のどの過程に支障を来すでしょうか?

木の葉の表面に居座って周囲を360°見回していた♂個体は、これからまさに他の♂と合流してレックを形成し始めるところだったのかもしれません。 


今回もPerplexity AIを相談相手に調べ物をしたり、観察結果の解釈についてしつこく問答を繰り返しました。
ブレインストーミングの結果を以下のレポートに要約してもらいました。 (文言の一部を手直し済み)
もっともらしい専門用語を駆使して、かなり背伸びをした「それっぽいこと」を生成AIが言ってるだけなので、ご注意ください。
AI自身が私の動画を視聴した上でヤマキヒゲナガ♂の行動を独自に解釈している訳でもありません。
今後の展望についても、素人には手に余ることばかりです。
いずれ誰かが解明してくれることを期待します。


ヤマキヒゲナガ♂の群飛行動と配偶システムに関する考察

Ⅰ. 観察概要

  • 日時・場所:2024年5月下旬・山形県の里山(草木に覆われた山腹の急斜面)

  • 気象条件:曇天・無風状態

  • 行動特徴

    • 少なくとも4頭の♂が同一空間で緩やかな群飛

    • 飛翔個体に加え、シダ植物と広葉樹幼木(推定:ニワトコ・オシダ?)に静止する♂が混在

    • オス同士の闘争行動は確認されず

    • メスおよび交尾行動は未観察

Ⅱ. 行動生態学的解釈

1. 群飛の機能仮説

  • レック型配偶システム

    • オスが特定の微気象条件(風速・日照)下で集団飛翔し、メスの訪問を待機1

    • ヒロオビヒゲナガ(N. raddei)の日没前スウォーム行動との類似性

  • 待機戦略の多様性

    • 飛翔個体:視覚的アピールによるメス誘引

    • 静止個体:エネルギー節約型の待機戦略

2. 触角の形態と機能

  • オス触角の特徴

    • 体長の3倍に達する糸状触角(全長約15mm)

    • 表面積は♀触角(毛密生)の1/5以下

  • 機能仮説

    • フェロモン検知:未検証(従来説の再考必要)

    • 飛翔安定装置:長い触角が「生物学的スタビライザー」として機能6

    • 視覚シグナル:光反射による個体間通信

3. フェロモンシステムの特殊性

  • 従来説との矛盾

    • ヒゲナガガ科では♀発信型フェロモンが主流とされる

    • 本種では♂がフェロモンを放出している可能性

  • 二重機能仮説

    • オスフェロモンが同性を集合させ(集合フェロモン)、同時に♀を誘引

Ⅲ. 未解決問題と研究課題

1. 行動メカニズム

  • 群飛形成の誘引要因(化学的/視覚的/地形的)

  • 静止個体と飛翔個体の役割分業

  • メスの出現パターンと時間帯依存性

2. 生理学的課題

  • 触角切除実験による飛翔安定性の定量評価

  • 分泌物質のGC-MS分析によるフェロモン同定

  • 触角感覚器の走査型電子顕微鏡観察

3. 進化的意義

  • 小型化(体長5-7mm)と触角長大化の相関

  • レイノルズ数(慣性力と粘性力の比)低下環境(体長比Re≈100)での飛翔制御適応

  • 種特異的フェロモンシステムの分子基盤

Ⅳ. 今後の観察指針

  1. 時間帯別行動記録:日出~日没まで1時間毎の個体数変動

  2. 環境要因記録

    • 気温・湿度・風速の連続測定

    • 植物フェノロジー(開花・新芽展開)との関連

  3. 標識再捕法

    • 蛍光粉末による個体追跡

    • 行動圏と移動距離の推定


総括

本観察はヒゲナガガ科の配偶システム解明において以下を示唆:

  • 従来の「♀発信型フェロモン」モデルに当てはまらない可能性

  • 触角の多機能性(感覚・飛翔制御・視覚信号)の共存

  • レック行動の多様性(闘争なき集団形成)

今後の詳細な行動観察と化学分析が、昆虫の微小環境適応戦略解明に貢献すると期待されます。216

  1. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9939265/
  2. https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenmin/ao-kendo/files/H24dmns-1.pdf
  3. https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/855/45554.pdf
  4. https://hs-gakko.org/wp-content/uploads/2024/03/ikimono.pdf
  5. http://www.esj.ne.jp/meeting/51/pdf/book/jes51p2.pdf
  6. interests.insect_physiology
  7. http://www.jpmoth.org/Adelidae/Adelinae/Nemophora_japonica.html
  8. https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/kanagawa/_pdf/eis2_kanagawah14.pdf
  9. https://www.city.minokamo.lg.jp/uploaded/attachment/2441.pdf
  10. https://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/uploaded/attachment/8659.pdf
  11. https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/20200500/Pubs%202020/HullFonagy%202019.pdf

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2025/06/16

旧営巣地に日中戻って仰向けで毛繕いするニホンアナグマ♀【トレイルカメラ】

 



2024年6月上旬・午後12:15頃・晴れ・気温24℃ 

平地の二次林で、越冬中に死んだアナグマの旧営巣地(セット)を自動撮影カメラで監視し続けています。 

ある日の昼下がりに、ニホンアナグマMeles anakuma)が単独で来ていました。 
ミズキの下にリラックスして座り込み、仰向けになって毛繕いを始めました。
ときどき痒い体をボリボリ掻いています。 
昨年(2023年)ここで営巣していた個体で散々見慣れた行動ですが、今季は初見です。 

大股開きの股間に陰茎や睾丸が見えれば♂、腹面に乳首が見えれば♀と性別が分かります。 
ちょうど手前に生えた幼木の葉が邪魔で、肝心の股間がしっかり見えませんでした。 
顔つきからは♀だと思うのですが、どうですかね? 

今季産まれた幼獣を連れて、ここに転入(引っ越し)してくれないかと、密かに期待しています。

つづく→

水浴中のフクロウが近くに現れたニホンノウサギ2羽を狩らずに見逃す【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】





2024年6月上旬 

シーン0:6/7・午後13:14・くもり(@0:00〜) 
シーン0:6/7・午後13:40・くもり(@0:04〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
山林内にある泥水溜りを2台の自動センサーカメラで見張っています。 
水溜りは浅いのですが、湧き水で一年中涸れることはありません。 
ジメジメとした湿地帯の全景を広角で撮ると、左側にあるメインの水溜りの他に、右にも少し小さな水溜りがあります(画面の右端に見切れています)。 
ここは野鳥や野生動物が通ってくる水場となっているようです。 


シーン1:6/10・午前1:49(@0:08〜) 
深夜に、左手前の泥水溜りにフクロウStrix uralensis)が水浴びに来ています。 
右上奥の草むらを野生動物の白く光る眼が手前に移動してきました。 
奥を左右に通っている林道から緩斜面を下って湿地帯に出てきたようです。 
ピョンピョン跳躍する動きから、ニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)のようです。 



フクロウは暗闇でも獲物の接近に気づいていて、そちらを凝視しました。 
絶好のチャンスなのに、なぜかノウサギに襲いかかることはありませんでした。 
水溜りにただ佇み、周囲をキョロキョロと見回しています。 


シーン2:6/10・午前1:51(@0:30〜) 
タイムスタンプが少しずれていますが、別アングルの監視カメラでも同時に撮れていました。 
フクロウが浅い泥水溜りに入っていて、後ろ向きで足浴していました。 
対岸の奥の草むらでノウサギの白く光る眼が動いています。 
フクロウは獲物の存在に気づいていて、そちらを見つめています。 
果たして待ち伏せ猟をするでしょうか? 

 しばらくすると、左奥の草むらから別個体のノウサギが現れ、右へと横切りました。(@0:52〜) 
先行する個体を追いかけてきたようです。
先行個体が右へ逃げ出したものの、求愛や縄張り争いのような激しい追いかけっこにはなりませんでした。 
ノウサギの♀♂ペアが一緒に水を飲みに来たのかな? 
しかしノウサギは乱婚型で、♂は交尾した後に子育てに協力したり♀と一緒に暮らしたりすることはないはずです。 

2羽のノウサギを見送ったフクロウは、手前の岸辺からピョンと入水し、右上奥の草むらを油断なく凝視しています。 
フクロウが水場に来る獲物(野ネズミやノウサギなど)を待ち伏せして狩るつもりなら、近くの樹上など高所に隠れるはずです。 
地上に降りてしまうと、獲物を見つけても一旦飛び上がってから襲いかかる必要があり、タイムロスになりそうです(獲物に逃げられてしまう可能性が高い)。


シーン3:6/10・午前1:51(@1:34〜) 
広角で湿地帯を見張る別の監視カメラでも撮れていました。 
トレイルカメラ2台が同時に起動したことで、赤外線の光量も2倍になり、広い範囲を充分明るく照らしてくれました。 

ノウサギが右上奥の林道から手前の湿地帯に向かって緩斜面をゆっくり降りてきました。 
その動きを画面中央のフクロウが凝視しています。 
このアングルで見ると、フクロウからノウサギまで結構離れていることが分かります。 
ノウサギに襲いかかっても逃げられそうだとフクロウは冷静に判断して、狩りを行わなかっただけかもしれません。 
水浴に来ていたフクロウは羽根が濡れていて体が少し重く羽根の静音性も低下していますから、狩りを成功させる自信がなかったのかもしれません。 
しばらくすると、フクロウは右へピョンと飛んで水溜りの中に入りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】
獲物を狩る絶好のチャンスだったのに、フクロウがノウサギを襲わなかったのが意外でした。 
たまたま満腹だから獲物を見逃したのかと思ったのですが、この時期(6月上旬)は育雛後期ですから、フクロウの親鳥はたとえ自分が満腹でも、獲物を狩って雛や幼鳥に給餌するはずです。
もしもこのフクロウが巣立ったばかりの幼鳥だとしたら、狩りの能力が未熟なのでノウサギとニアミスしても襲撃をためらったのは理解できます。 

私はフクロウの観察歴がまだ浅くて、成鳥と幼鳥を自信を持って見分けられません。
しかし、この時期(6月上旬)だと巣立ったばかりの幼鳥はフワフワの幼綿羽があるはずです。
トレイルカメラの暗視映像に写った個体は、ふわふわしてないので素人目には成鳥に見えます。

この水溜りにはアズマヒキガエルの幼生と思われるオタマジャクシが泳いでいます。
夜行性のフクロウは水溜りで長居しても、昼行性のクロツグミとは違って、オタマジャクシを狩りませんでした。
フクロウは興味津々で水中のオタマジャクシを観察しているだけかもしれません。

逆に、ノウサギはフクロウの存在に気づいていたのでしょうか? 
ノウサギも夜行性で、瞳にはタペータムが発達していますから、暗い夜でも目が見えるはずです。
ノウサギは長い耳が発達して聴覚は非常に優れていますが、このときフクロウはバシャバシャと音を立てて水浴中ではありませんでした。
ノウサギが天敵であるフクロウに気づいて、水場を回避したのかどうかが、映像ではよく分かりません。
ノウサギ同士の遭遇(追跡?)に気を取られて、水場で静かに佇んでいたフクロウに気づかなかったのかもしれません。




動画の解釈について、いつものようにPerplexity AIとブレインストーミングした後で、簡潔なレポートにまとめてもらいました。
注意点として、AIは動画そのものを見て行動を独自に解釈している訳ではありません。
あくまでも私が解釈した文字情報に対して、推論回答しているだけです。



トレイルカメラによる水場でのフクロウとノウサギのニアミス観察とその解釈


1. 観察の概要

  • 2024年6月上旬、山形県の山林内湿地帯(水場)に設置したトレイルカメラで深夜の動物行動を記録。

  • 水場にフクロウ(Strix uralensis)が静かに佇み、周囲を見回している様子が撮影された。

  • その直後、2羽のニホンノウサギ(Lepus brachyurus)が続けて水場を横切ったが、フクロウは凝視するだけで狩りのアクションを起こさなかった。


2. 行動の生態学的解釈

フクロウの行動

  • フクロウは主にネズミ類や小型哺乳類を捕食するが、ノウサギも捕食対象となり得る57

  • 通常、待ち伏せ型の狩りを行う際は樹上など高所から獲物を狙うことが多く、地上で静止している場合は狩り以外の目的(警戒、観察、水分補給など)の可能性が高い9

  • 水場に長居していたが、オタマジャクシなど水生小動物を狩る様子は記録されず、興味本位で観察していたと考えられる。

ノウサギの行動

  • ノウサギは夜行性で、行動範囲は寝床から半径約400mとされる3

  • 繁殖期(2~7月)にはオス同士やオス・メス間で激しい追いかけっこが見られることがあるが、今回の映像では穏やかな動きであり、繁殖行動以外の単なる移動や採食、親子・同性個体の可能性も考えられる。

  • ノウサギはタペータムの発達した目を持ち、夜間でも周囲の動物を認識できるが、フクロウが静止していたため気づかなかった、もしくは警戒しつつも水場を利用した可能性がある139


3. 幼鳥・成鳥の識別と繁殖期のタイミング

  • 6月上旬はフクロウの育雛期~巣立ち直後の時期であり、観察された個体が幼鳥である可能性もある10

  • 幼鳥は巣立ち直後は綿羽が残るが、換羽の進行や暗視映像の解像度によっては判別が難しい。綿羽が見えなくても幼鳥の可能性は排除できない。

  • 巣立ったばかりの幼鳥は通常樹上で親の給餌を待つが、行動範囲が広がる過程で水場に現れることもまれにある。


4. 狩りが起こらなかった理由の考察

  • フクロウが満腹だった、あるいは幼鳥で狩り経験が浅かった可能性。

  • ノウサギが成体であれば、フクロウにとってリスクや負担が大きく、狩りの対象に選ばなかった可能性。

  • 水場での静止は狩りのための待ち伏せではなく、警戒・観察・水分補給など他の目的だった可能性が高い。

  • ノウサギもフクロウの存在に気づいていたかもしれないが、警戒しつつも水場を利用した、あるいはフクロウが静止していたため危険と認識しなかった可能性がある。


5. まとめ

  • トレイルカメラ映像から、夜間の水場でフクロウとノウサギがニアミスしても、必ずしも狩りが発生するとは限らない。

  • 両種の行動には、繁殖期のタイミング・個体の年齢・行動目的・警戒心など様々な要素が複雑に絡んでいる。

  • 今回の観察は、野生動物の多様な行動戦略と、単純な「捕食―被食関係」だけでは説明できない現場のリアルな生態を示している910

  1. https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/12/1/12_1_1_11/_pdf
  2. https://note.com/p_c_m22/n/nbcca18728e01
  3. http://sancyokohama.sakura.ne.jp/houkoku/19/YNSchousahoukoku19_1.pdf
  4. https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/prestatement/yamanashi/_pdf/yamanashiy08-04-03.pdf
  5. https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001021259.pdf
  6. https://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/kurashi/kankyo/ekyohyoka/hyoka/tetsuzukichu/gomishori/documents/10doubutsu.pdf
  7. https://www.town.minakami.gunma.jp/minakamibr/nature/pdf/nature07.pdf
  8. https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/12/1/12_1_1_11/_pdf/-char/ja
  9. interests.animal_behavior
  10. interests.bird_biology
 


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