2021/06/10

ヤマアカガエルは繁殖池の底でも♀に飢えた♂同士で互いに追い回す

 

2021年3月中旬・午後12:30頃・晴れ 

♀を待つヤマアカガエル♂(Rana ornativentris)同士による蛙合戦の前哨戦は岸辺だけでなく、繁殖池の底(水中)でも繰り広げられています。 
例えば水中から浮上して岸辺に一度現れた独身♂が何かに驚いて(撮影している私を警戒?)再び水中に潜ると、水底に待機していた多数の♂が素早く集まってきます。 
相手に触れるとすぐに誤認(♀ではない)だと悟るようで、本格的な抱接には至らずにすぐ別れます。 
逆に池の底に潜んでいた♂が岸辺を目指して急に泳ぎ始めた時も、その動きに反応して近くの♂が素早く泳ぎ寄ってきます。 
水底に潜んでいる♂個体の密度が高ければ、ちょっとしたきっかけで連鎖反応のように小競り合いが繰り広げられるのです。 
ただし、岸辺とは異なり水中には各♂の縄張りというものは存在しないようで、互いに位置が自由に変わりますし、近くのライバル♂を攻撃して追い払う行動は見られません。 
つまり、水中の小競り合いは縄張り争いではありません。 


2021/06/09

巣材を運ぶ途中で交尾するハシブトガラス♀♂のつがい(野鳥)

 

2021年3月下旬・午前10:30頃・晴れ 

郊外の刈田の端にあるブロック塀の上でハシブトガラス♀♂(Corvus macrorhynchos)が交尾していました。 
♀の背に乗った♂が激しく羽ばたいて器用にバランスを取りながら交尾しています。 
カラスの交尾シーンを見れたのは初めてで嬉しかったのですが、私が慌ててカメラを向けた途端に交尾が終わってしまいました。 

そもそも私は普段、カラスの性別を外見で見分けられません。
今回は交尾直後のペアを見比べることで、体格に明らかな性差があることが分かりました。 
左の個体が♂、右が♀で、体格は♀R<♂Lでした。 

♀Rは嘴に何か巣材を咥えていますね。 
巣の外側を作る小枝ではなく、柔らかい材質(フワフワと毛羽立っている)なので、産座として巣内に敷き詰めるものと思われます。 

交尾直後の♀Rは体勢を低くしたまま(前傾姿勢)尾羽を細かく上下に震わせており、素人目にはなんとなく♂にもう一度交尾してもらいたいような性的に興奮した仕草に見えました。 
私もハシブトガラスが交尾を繰り返してくれることを期待したのですが、どうも私に見られていることを警戒した♀♂つがいは交尾する気が失せたようです。 
やがて♀Rがブロック塀を横歩きで♂Lから離れてしまいました。 
最後は♂L、♀Rの順でブロック塀から飛び立ち、同じ方向へ飛び去りました。 
ハシブトガラス♀は巣材を運んで営巣地に向かったはずですが、残念ながら私は見失ってしまい、巣の場所を突き止められませんでした。 
冒頭の交尾シーンおよび最後の飛び立つシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

カラス♀♂が巣材集めの途中で交尾するとは知りませんでした。 
今までカラスの交尾シーンを見たことがなかったということは、今後は午前中の観察を増やすべきかもしれません。

繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その1)

前回の記事:▶ バックハグでまったり過ごすヤマアカガエル♂のBLペア(誤認抱接)
2021年3月中旬・午後13:53〜14:01頃・晴れ 

雪山の池Hで観察を続けると、水中でようやく待望のヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の抱接ペアを発見。 
残念ながら♀♂ペア形成の過程は見逃してしまいました。 
水中を勢いよく泳いで来た抱接♀♂ペアが水底でしばらく静止してから、此岸に向かって移動を開始。 
ヤマアカガエルの体格には性的二型があり、明らかに♀>♂でした。 
産卵準備のできた♀は腹部が膨らんでいます。 
♀♂ペアの抱接体勢は、それまで散々見てきた♂同士の誤認抱接とはまるで違いました。 
♀の背後からマウントした♂が♀の脇の下に前腕を回してきつく抱き締めています。 
♂は後脚を畳んで♀の背に乗っていました。
(♂同士の誤認抱接の際は前腕の抱き締めも緩く、後脚を広げていました) 
大型の♀が自分の意志で移動しており、小型の♂は♀の背に乗って完全に身を委ねています。 

浅瀬に上陸した♀♂ペアは初め警戒してじっと辺りの様子をうかがっていました。 
♂の喉がヒクヒク動いています。 

やがて♀が♂を背負ったまま浅瀬をあちこち徘徊し始めました。 
静止状態から♀がノソノソと歩き出す度に必ず♂が小声で「クヮックヮッ♪」と短く2回鳴きました。(@2:10、2:20、2:31、3:16、4:18、5:15、5:20、6:08、6:11、6:15、6:33、6:50、6:57、7:02、7:06) 
一方、大胆になった♀が大きく跳ぶときには♂は「クヮックヮックヮッ♪(またはケケケ♪)」と短い鳴き声を3回続けて発しました。 
♂が鳴く際には求愛歌のときと同様に、両頬が大きく膨らみます。
▼関連記事(同日に池Lで撮影) 
早春の池で♀を呼ぶヤマアカガエル♂の鳴き声♪(求愛歌)
♀を励ましているのか、それとも♀の産卵気分を高めているのでしょうか? 
あるいは周囲の安全状況を♂が♀に知らせているのかな? 
もしかすると抱接♂の鳴き声に特別な意味などは無くて、おんぶした♀が不意に動き出す度に揺れて乗客の♂が「おっと!」という感じに声が漏れてしまうだけかもしれません。 
せっかく抱接ペアを形成したのに産卵地探索中に鳴いたりしたら、他のあぶれ♂が集まってきて♀の奪い合いになりそうな気がするのですけど、今回はそんな事態になりませんでした。(独身♂は岸辺で各自の縄張りを離れないようです) 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

遂にこの抱接♀♂ペアは、私が岸辺に立てた三脚の真下まで来てくれました。 
おそろしく警戒心の強いヤマアカガエルがこんなに間近まで来るとは思わなかったので、興奮を隠し切れない私も息を潜め気配を消して静かに撮影します。 
浅瀬から完全に上陸すると、小石の多い陸地を右往左往しています。 

ここで産卵を始めてくれ!という私の願いも虚しく、♀♂抱接ペアは再び池Hに戻って入水してしまいました。 
私の存在に気づいて警戒したのか、あるいは産卵地の諸条件を吟味した結果気に入らなかったようです。 
息を吐きながら潜水し、再び池の底で静止しました。
この池Hでは私が近くで監視しているせいで、独身♂たちが求愛歌を鳴き交わすほどリラックスしていませんでした。
予め録音しておいたヤマアカガエル♂の求愛歌を抱接♀♂に聞かせたら、安心して産卵を始めてくれるかな?(プレイバック実験)

ヤマアカガエルの繁殖行動を初めて観察する私は、このとき重大な疑問を抱いていました。 
抱接ペア♀♂が池の岸をウロウロするばかりで産卵してくれないので、この♀は既に産卵済みなのではないか?という疑いです。 
つまり、産卵を済ませた♀が再び冬眠するために池から出て山への帰り道を探し回っているだけかもしれません。 
だとすると、愚かな♂は♀の気持ちも知らずに必死にしがみついている(抱接)だけということになります。 
独身♀はどこから現れるのか?という疑問とも関連しています。 
繁殖池の岸辺に並んで♀を待ち構えている独身♂たちが必ず池の外を向いて待機しているのも、独身♀が産卵のために外から繁殖池を目指してやって来ることを示唆しています。 
これはヒキガエルの繁殖行動で見られるパターンです(完全に雪が溶けた約1ヶ月半後)。
しかし、この現場は雪山で、池の周囲は未だ深い雪で覆われています。 
早春とは言え、変温動物のヤマアカガエルが雪山を長距離踏破して繁殖池と山中の冬眠場所を行き来するとは信じ難い話です。(スクープ映像が撮れたら嬉しいですけど) 
もし池のヤマアカガエルを一時捕獲して、池から少し離れた雪面に解放したら、池を目指して移動するでしょうか?

雪国のヤマアカガエルは池の底で冬眠することが知られています。 
冬眠明けの♀♂がその池で繁殖を始め、産卵後の♀は再び同じ池の底に潜って冬眠し直すのだとすれば、納得できます。 
ピッキオ『森のいろいろ事情がありまして』という名著によると、
 カエルは地中で冬眠するものと思われがちですが、軽井沢のような寒冷地では、多くのカエル(ヤマアカガエル:しぐま註)が水中で冬を越すようです。深い池の底や、流れがあって凍らないところでは、水の温度が0度を下回らず、水の外よりも温度が安定しているはずです。また、気温はマイナス15度にも下がりますから、ちょっとぐらい土に潜っても、体が凍り付いてしまうでしょう。また、0度近い低温では、代謝が下がっていますので、呼吸もあまり必要でなくなります。わずかな皮膚呼吸だけでまかなえるのでしょう。彼らは水中から出てこなくてもひと冬を越せるのです。  しかし、11〜3月に池を網ですくって数百匹のカエルを捕らえても、それは大人ばかりで、若い小さなカエルたちがどこで冬眠しているのかはわかっていません。また、春になると歩いて池に集まってくるカエルもいますので、すべてが水中越冬ではないかもしれません。(p123〜124より引用)

ヤマアカガエル♀♂抱接ペアの行動をもう少し観察してみましょう。 

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