2013/07/13

タニウツギの花で交尾するコアオハナムグリ



2013年6月上旬

タニウツギに訪花したコアオハナムグリGametis jucunda)が交尾していました。
♂にマウントされた♀は食事に余念がありません。
「花潜り」の名前通り、基本的に花筒の中に潜り込んで花粉を食べます。
ところが、♀が花の根元を外側から噛んで甘い蜜腺を直接舐めようとしている行動が一度だけ撮れました。@0:30〜0:36
これは蜂の盗蜜行動と同じで興味深く思いました。

関連記事→「クマバチ♀の盗蜜行動@タニウツギ」、「タニウツギの花で盗蜜するハキリバチの一種

交尾器の結合部をなんとか接写したいのですけど、♀が花の上を動き回る上に風揺れで悩まされます。
裏技として枝ごとナイフでそっと切り落として花を地面に置いたら♂が異変に気づき、飛んで逃げました。
一方、♀は花に潜り込みました。




2013/07/12

結婚飛行前のクロオオアリ♂



2013年6月上旬

尾根道の地面にクロオオアリCamponotus japonicus)のコロニーを見つけました。
巣穴は2つあり、その間隔は25cm。



ちょうど結婚飛行のシーズンで、巣口に羽アリの姿が見えます。
有翅の♂は頭部が小さく胸部の飛翔筋が発達しているのですぐに見分けられます。
巣口から顔を出してはすぐに引っ込んでしまうため、♂が巣外に全身を現すことは稀です。
気象条件を探って飛び立つタイミングを逡巡しているようです。
♂アリのせいで狭い入口が混雑しています。

ちょうど3年前にも観察した行動です。

【関連記事】→「巣立ち前のクロオオアリ♂


その間、ワーカーは巣内から砂粒を咥えて外に捨てる作業をせっせと続けていました。

また、巣口のすぐ横で見張り役(門番?)を務めているように見えるワーカーが居ます。
体長が大きい個体なので、もしかすると兵アリでしょうか?
隣の巣穴にも同じく見張り役のワーカーが居ます。
巣口の横でときどき身繕いしたり仲間と触角で挨拶したりするぐらいで、あとは立ち尽くしています。
一度だけ、見張り役のワーカー♀が♂を巣内に押し戻す行動が見られました(偶然かな?)。 (追記参照)

やがて曇ってきたら羽アリは全て巣内に篭ってしまいました。

つづく→「結婚飛行前のクロオオアリ新女王




【追記】
矢島稔『観察の記録六〇年: 秘蔵写真が語る自然のふしぎ‎』によると、
(クロオオアリの)結婚飛行が行われるのは、晴れて風がほとんどない日の昼ごろが多い。巣の入り口で、出入りする個体を確認している「門番」役の働きアリが、その日その時の気象条件を判断して、結婚飛行に飛び立たせるかどうかを決める。門番の判断が、クロオオアリのすべての巣から飛び立つ若い女王アリと♂アリの交尾を可能にするわけだから、その責任は重大である。 (p67より引用)


巣の入り口のすぐ下に集まっているハネムーンのための♂と♀がどう騒いでも、条件が合わないと、門番はけっして外に出さず、ときには口で脚や翅をくわえて中のほうに入れてしまう。 (p70より)



ウワミズザクラの葉を食すシロシタバ(蛾)幼虫



2013年6月上旬

里山の山腹に生えた若いウワミズザクラの枝先で若葉をもりもり食べているカラフルな幼虫を発見。
毛虫ではなく芋虫タイプの幼虫です。
腰のあたりにある赤い条が目立ちます。

葉の食べ方が独特で、枝に止まって葉の主脈から蚕食するため中央から虫食い穴が出来ました。
柔らかそうな若葉を食べ尽くすと次は葉柄までも摂食しました。
食後は尺取り運動で移動します。(後退も可能。)

これほどユニークな外見で食草も分かっているのに、自分で調べても幼虫の名前が分かりませんでした。
未採集、未採寸。
飼育ネタはもう手一杯なので、今回は採集せずスルー。
よく見ると腹部の歩脚が5対あるので、シャクガ科ではなさそうです。
尺取虫とは呼べないかも)

いつもお世話になっている「不明幼虫の問い合わせのための画像掲示板」にて問い合わせたところ、atozさんから以下のコメントを頂きました。

『日本産蛾類生態図鑑』を参照すると、頭部頂点近くの赤斑や、第5腹節の大きなオレンジの隆起とそれに続く側面の帯、亜背線に並ぶオレンジの小突起列が、シロシタバCatocala nivea nivea)の幼虫に似ています。 ただ、ネット上で検索すると出るシロシタバとされている幼虫(昆虫エクスプローラなど)とは異なるので、どちらかが誤同定でしょう。 シロシタバは幼虫の食性が狭く、サクラ属(Prunus)の中でもウワミズザクラやイヌザクラなど特定の種群しか食べず、ヤマザクラやソメイヨシノ等は食べないと言われています。 一方ノコメキシタバについてはリンゴ属(Malus)を食べるがサクラ属は食べないと言われています。(PDF文献 このような食樹の情報からもシロシタバの可能性が高いのではないかと思います。

『日本のCatocala』(西尾規孝 著)は長年カトカラを研究されてきた著者の集大成となる書で、日本産のカトカラ属29種の生態、卵、幼虫(若齢、終齢)がカラー写真を使って詳細に解説されております。その中でカトカラの幼虫には似通った種が多く、かつ色彩変異が激しいことが分かり、今回の幼虫同定のポイントとして、「食餌植物」、「頭部の斑紋」、「第5腹節の隆起」、「分布」に着目してみました。
まず食餌植物で、サクラ属を食べる可能性があるのはシロシタバ、ワモンキシタバ、キララキシタバ、ハイモンキシタバの4種で、ノコメキシタバについてはサクラ属の記録をどの文献でも見つけることができませんでした。
(なお、シロシタバは蛾類生態図鑑にはヤマザクラやソメイヨシノは食べないと書いてありましたが、「日本のCatocala」ではこれらも代用食となると書かれています。自然状態では大抵ウワミズザクラで、孵化幼虫はヤマザクラなどには食いつかないケースが多いようです)
形態については上記の種は色彩変異があり、同種内でも突起がオレンジ、黒、白と様々で、体色も明るい色から黒い色まで様々でしたので、色では同定は無理だと思います。第5腹節の隆起に違いが見られ、シロシタバだけがしぐまさんの幼虫のように幅が広い形をしています。ハイモンとノコメは小さめで、ワモンとキララは長く突出します。
また、頭部の斑紋にも違いがあり、動画を確認するとシロシタバと一致します。

最後に分布ですが、しぐまさんがノコメは未見とおっしゃるように、ノコメは北海道と本州中部に隔離分布しており、なぜか東北地方は空白地帯となっています。(宮城県などで少数の記録があるのみ)。信州では普通種なのに不思議です。
シロ、ハイモン、ワモンは東北にも分布しています。ワモンに近縁のキララは北海道中部以東に分布します。

以上からこの幼虫はシロシタバだろうと結論付けました。
『日本のCatocala』掲載の数個体のシロシタバ終齢幼虫のうちの1例が、この幼虫と色彩がそっくりに見えます。

ちなみに、昆虫エクスプローラのシロシタバ幼虫はカトカラ属ではなく、カキバトモエの間違いだと思います。








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