2012年6月上旬
道端のタニウツギに訪花するオオマルハナバチを観察しました。
 |
オオマルハナバチ♀aによる通常の吸蜜 |
映像の初めに登場する個体♀aは、花に頭を突っ込んで花蜜を吸っています。(正当訪花)
この♀aは胸部が花粉まみれになっています。
 |
オオマルハナバチ♀bによる盗蜜行動 |
一方、2匹目の個体♀bは食事の作法が違いました。なんと、花の根元を毎回食い破っています。
後脚の花粉籠は空なので、目当ては花粉ではなく花蜜でしょう。
これはまさしく盗蜜と呼ばれる行動です。
花とハナバチは共進化してきたのですが、特定の送粉者だけを花蜜でもてなすために複雑な構造を持つに至った花の裏をかき、蜜のみを奪って受粉には関与しない吸蜜行動のことです。
マルハナバチも「隙あらば楽をしよう」と狡猾に振る舞うようです。
念願だった穿孔盗蜜の決定的な映像が撮れて感無量です♪後で思うと、タニウツギの花筒に盗蜜痕の有無を確認すれば完璧でしたね。
2匹の蜂が訪花していたタニウツギは少し離れたところに生えた別の木です。
『マルハナバチ・ハンドブック』p30によると、
オオマルハナバチはがっしりした顔つきで、盗蜜癖があります。
『日本の真社会性ハチ』p238によると、
オオマルハナバチの口吻は短いため花弁に穴をあけて吸蜜する。
オオマルハナバチが同じタニウツギの花に対して異なる吸蜜戦略を採っていたのが興味深く思いました。
花の微妙な大小によって臨機応変に吸蜜行動を切り替えるのでしょうか?
2匹目の♀が盗蜜ばかり行ったことで、これは否定されます。
採食戦略に個体差があるのでしょうか?
あるいは盗蜜は学習の賜物なのだろうか?(一度成功すると味を占めて盗蜜ばかり行うようになる?)
盗みの味は蜜の味…。
個人的な仮説としては、次のように推測しました。
- 今回観察した一匹目は営巣初期のワーカー。
- 頭の小さいワーカーは花の奥まで舌が届くので、盗蜜する必要が無い。
- 盗蜜行動していた個体は単独営巣期の創設女王。
- 大柄な女王は「頭でっかち」で、通常の方法では花の奥に舌が届かず、盗蜜に手を染めるようになった。
オオマルハナバチ♀の吸蜜行動を観察した後で片端から捕獲して個体識別のマーキングを施し、頭部の幅や舌の長さをノギスで採寸すれば、この仮説が正しいかどうか分かるはずです。
タニウツギ花筒の深さや入り口の直径も採寸する必要があります。
マルハナバチの働きバチは、生まれた時期によって体の大きさや舌の長さが異なります。(『セイヨウオオマルハナバチを追え:外来生物とはなにか』p6より)
2012年6月上旬
峠道を通すために切り開いた法面にモルタルを吹き付け、落石防止の鉄骨を多数設置してあります。
ここで野生ニホンザル(Macaca fuscata)の群れに遭遇しました。
背景に人工物が多いと、どこか動物園の猿山や野猿公苑で撮ったと思われそうですが、正真正銘、野生の猿です。
この群れで「みつ口」という特徴的な顔貌の猿(成獣)を一頭見つけました。
先天的な奇形(口唇裂)の症例なのか、それとも後天的な怪我(裂傷)なのか、一体どちらなのでしょう?
性別も知りたいところです。
映像から見分けられる方はご一報ください。
たまたま『頭骨コレクション』という本を読んでいたら、次の記述を見つけました。
オスザルどうしのケンカで唇が裂けている個体は、どの群れにも一頭くらいはいるものだ。(p103より)
後日このみつ口の猿と再会を果たすことになります。
【追記】
ニホンザル奇形問題研究会『奇形ザル:野猿公苑からの報告』によると、
・(宮島の群れで)1977年にも、四肢奇形のアカンボウが四頭生まれ、これ以外に生まれつき右の下唇が切れているサルが生まれた。ニホンザルは、頬の下に左右一対のほほぶくろを持ち、食物をいったんここに貯めこんで、後で改めて食うことをやる。このコザルは、ほほぶくろに入れたコムギが裂け目からこぼれ落ちそうになるのを、手で押し込んでいた。(p123-124より引用)
・ニホンザルの奇形は、四肢に集中して出現している。とりわけ四肢の骨格の異常と、それに伴う筋肉および皮膚の異常が多く見られ、ほかの部位の奇形は、少数しか見つかっていない。(p147より引用)
・表35:ニホンザルで観察された四肢以外の奇形(p148)に「兎唇」が含まれていました。
2012年6月上旬
ケヤキの枝で数羽のカワラヒワ(Carduelis sinica)が賑やかに鳴きながら何やら啄んでいます。
初めはケヤキの実を採食中なのかと早とちり。
ケヤキの実にしてはどうも変なので更に調べてみると、葉の表にできた虫こぶ(虫癭:ちゅうえい)と判明。
この独特の形状をした虫こぶはケヤキハフクロフシという名前で、ケヤキフシアブラムシ(=ケヤキヒトスジワタムシ;Paracolopha morrisoni)が葉裏に寄生したことで肥大するらしい。
(ある種の)虫こぶには確か渋味成分のタンニンなどが多く含まれるはずで、野鳥が食べて美味しいのだろうか?
タンニンを摂取した鳥は消化が抑えられます。(藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』p173より引用)
それとも、ケヤキハフクロフシにはタンニンの含有量が少ないのかな?
カワラヒワは虫こぶそのものではなく、中に潜むアブラムシが目当てだった可能性もあります。
(ケヤキハフクロフシ)虫えい内の第2世代は全て有翅虫となり、6月に虫えいの側方が裂開して脱出。(『虫こぶハンドブック』p29より)
しかしカワラヒワの食性は主に植物の種子なので、虫を捕食していたとは考えにくいように思います。(※追記参照)
余談ですが、ケヤキフシアブラムシはケヤキとササ類との間で寄主の交代を行うらしい。
(『虫こぶ入門:虫と植物の奇妙な関係』p69より)
後に現場を確認すると、ケヤキの木から少し離れた場所に果たして笹の小さな群落がありました。
虫こぶを巡る生き物たちのつながりも奥が深く面白そうですね。
複雑な生態系の深淵を覗いたようで、気が遠くなります。
【追記】
ハンマーさんの興味深いブログ記事「虫こぶをかじるヤナギハムシ」に対してyamasanaeさんが次のようなコメントを残しておられました。
先日、カワラヒワが地面に大量に落ちているエノキハトガリタマフシをしきりにつついていました。残っていたのは、割られたエノキハトガリタマフシ。
ある程度育った、エノキトガリタマバエの幼虫が入っているのを知っているのかと、驚きました。虫こぶ(フシ)を狙っているものは多くいるのでしょうね。
※ 『日本動物大百科4鳥類Ⅱ』p148によると、カワラヒワは
エノキの葉につく虫こぶ、アブラムシやアワフキムシといった昆虫も食べることがある。