2012/04/02

野菜屑を採食するムクドリの群れと喧嘩(突つき順位)【野鳥】



2012年3月中旬

生ゴミから堆肥を作るコンポストの方からムクドリSturnus cineraceus)が騒ぐ声がします。
堆肥の上に積もった雪が溶けた所から野菜屑を失敬しに3~4羽の群れでやって来たようです。
「掃き溜めに鶴」、ならぬ「掃き溜めに椋鳥」ですね。

2羽が同時に採食しようとすると、激しく鳴きながら小競り合いの喧嘩になります。
飛び立っても近くの木の枝に一時的に退避するだけで、どうやら見下ろしながら順番待ちをしているようです。
野菜屑の何を啄んでいるのかは不明ですが、嘴の先が濡れています。
様子を見ていると大体いつも同じ場所から採食しています。
野菜屑なら何でも良いという訳ではなく、選り好みがあるようです。
入れ替わり立ち替わり餌場にやって来るムクドリ同士が場所取りの喧嘩になるのはそのためです。

3羽の関係性が撮れたシーン(2:02~5:13)が特に興味深いです。
小さな群れでも典型的な突つきの順位(pecking order)があるようです。
初めは2羽αβが野菜屑を採食しています。
一羽βは食べるのを止め、キョロキョロしながら辺りを徘徊。
途中からもう一羽γがやって来るも、βに軽く追い払われました。
初めの一羽αが満足したのか飛び去ると、二羽が残りました。
βは待ってましたとばかりに、それまでαが啄んでいた野菜屑を食べ始めます。
先客のβが近づいてくる新参のγを攻撃するも、ひらりとかわします。
この間、鳴き声を発せず。
βが飛び去るとγだけ居残って採食を続けます。

最後のシーン(6:10~)では、食事を終えた一羽が飛び立つと入れ替わりで二羽が降り立ちました。
このペアにはつつき順位が無いのか(同格?)、仲良く並んで啄んでいます。


手元の図鑑『山渓フィールドブックス4:野鳥』p366によると、

「(ムクドリは)顔の白い部分は個体差が大きく、♂の成鳥ではくっきり白いが、若鳥ではぼんやりしている。」
とのことなので、顔馴染みになれば個体識別が可能になり、もっと興味深い力関係が明かになるかもしれません。



2012/04/01

エンマコオロギ劣位♂の奇行(巣穴掘り?)



2011年9月下旬

エンマコオロギの飼育記録

野外で採集してきたエンマコオロギTeleogryllus emma)の成虫♀♂1匹ずつのペアを同居させています。
そこに♂をもう一匹追加すると、♀を巡って♂同士の喧嘩が絶えません。
2匹の♂には体長差があり、大柄な♂が先住者です。
小柄な♂には個体識別のため胸背に油性ペンで白点を描いてあります。
体格で劣るβ♂(白)は喧嘩でいつもα♂(無印)に負け、逃げ回ってばかりいます。

そんなある日、β♂の奇行に気づきました。
容器の隅で地面の小石を一個ずつ口で咥えては横に運んでいるのです。
穴を掘って隠れようとしているのだろうか(穴があったら入りたい)?
どうもストレスによる異常行動のような気がします。
β♂が少しでも求愛歌を鳴いたり♀に近づくだけでもα♂の逆鱗に触れ、威嚇の鳴き声を発しながらβ♂白を激しく追い回しています。

※ 撮影のため容器内の隠れ家を取り除いてあります。
コオロギの飼育(特に♀の産卵)のためにはこんな小石だらけの土を入れるのは良くないですね。


【追記】
『ファーブル写真昆虫記10野原のバイオリンひき:コオロギ・バッタのなかま』p2より
コオロギは、気に入った場所をみつけると、入り口から奥の部屋まで、全部自分一人で掘っていきます。(中略)昆虫の世界で成虫が、自分のためのすみかをもっている、ということは、とてもめずらしいことです。
同書p9によると、
巣穴をほりはじめるのは、10月の終わり、秋風の中に、初めての寒さが感じられるような頃です。(中略)巣穴を掘る作業は、とてもかんたんです。まず、前脚で土を引っ掻いて、穴を掘り始めます。土の塊は、大顎のはさみをつかって、引き出します。

という訳で、どうやら別に飼育下の異常な行動でも奇行でもなかったようです。
知らなかったなー。
ただし、ファーブルが観察したのはオウシュウクロコオロギという種類で日本産コオロギとは生活史が異なるらしいです。
秋の終りに死んでしまうエンマコオロギにとって、巣穴は隠れ家の役目しか果たしません。(中略)エンマコオロギは、必ずしも自分で巣穴を掘らず、自然の穴を利用したり、石の下や枯葉の重なったその下などに隠れています。(同書p42より)



2012/03/31

アメリカシロヒトリ(蛾)の羽ばたき運動



2012年3月中旬・室温16℃

室内のどこかで季節外れに羽化した2頭目のアメリカシロヒトリHyphantria cunea)成虫を捕獲しました。
2月下旬に見つけた一頭目の記事はこちら→「アメリカシロヒトリ(蛾)が季節外れに室内羽化」。
容器内で大人しく静止しているところを接写すると、前脚および中脚の付け根が黄色いことがお洒落で可愛いらしい。
口吻は退化しているのかな?
仰向けにされても擬死しています。

やがて動きが活発になりました。
必死に飛翔筋を震わせて準備運動をしています。
プラスチック容器が滑って壁を登れないでいるようです。
羽ばたきが激しさを増しても結局、完全には飛び上がれませんでした。
飛翔には至らないまま疲れてしまったのか、羽ばたきを止めました。



羽ばたき運動のリリーサーは明るさの変化?

おそるべき害虫を野外に放虫する訳にもいかないのでしばらく飼い続けると、羽ばたき運動に規則性があることに気づきました。
夕暮れの定時(17:59)になると活発になり羽ばたき始めることが2・3日間続いたので、体内時計の関与がありそうだと思いました。
ところがある朝、窓から差し込む朝日が眩しいので一度開けたカーテンを閉めたら途端にアメリカシロヒトリがその場で激しく羽ばたきを始めました。
この観察結果から、体内時計ではなく視覚(複眼や単眼)で周囲の照度の変化を感知して羽ばたき運動のスイッチが入るのではないかと考えを改めました。
きちんと調べるために、照度計が欲しいなー。


♀なら容器内で未受精卵を産むはずと期待したものの、卵を産むことなく死亡したのでこの個体は♂なのかな?
触角など外見を見ても私には性別が見分けられません。




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