2016/09/30

サシバ♂(野鳥)の水難事故



2016年7月上旬

山麓を流れる深い用水路になぜか落ちて困っているサシバ♂(Butastur indicus)を夕方に見つけました。
羽毛が水をたっぷり吸って重くなり、自力では飛び立てなくなったようです。
濡れた羽毛を乾かすための止まり木もありません。
水量が少なく水深が浅いので、溺死する心配はありません。
しかし、このまま脱出できなければ飢えるだけですし、夏でも低体温症で死ぬかもしれません。
コンクリート三面張りの深い用水路(高さ170cm、幅〜250cm)が「死のトラップ」と化しました。

私が初めに近づいた時だけ怖がってバサバサと少し暴れたものの(映像なし)、その後は観念したのか、ずっとおとなしくしていました。
未だヒトを恐れない幼鳥・若鳥なのかな?
いつから水路に落ちたのか不明ですが、疲労困憊しているのかもしれません。

一体どうしてこんなことになったのか、不思議でなりません。

  • 巣立ちの初飛行に失敗し、水路に墜落した?
  • 他の鳥(カラスや猛禽類)との争いに負けて水路に落ちた?
  • 水路内で魚やカエルを捕獲していた?
  • 暑いから自発的に水浴していた? (気温を測り忘れた。)

まず背後から撮ると、広げた翼と尾羽が水没しています。
胸や頭も濡れていました。

水も滴るいい男。
不安そうにキョロキョロして、私の様子を伺っています。
生きた猛禽類をこれほど間近で見るのは初めてです。
顔のクローズアップすると、鋭い眼光が印象的。
鈎状に曲がった嘴は黄色で、先端だけ黒色でした。
虹彩は黄色で、ときどき瞬きする瞬膜は白っぽい。

次にゆっくりと正面に回り込んでも、サシバはパニックにならず静かにしていました。
サシバは足に魚やカエルなどの獲物を掴んでいませんでした。
足が折れている様子はなく、安心しました。

私の背後で別個体の猛禽類がヒーヤ、ヒーヤ♪と甲高く繰り返し鳴いています。
振り返りたい衝動を抑えつつ、水路内のサシバを撮り続けます。
鳴き声の強さが一定なので、飛びながらではなく近くの樹上で鳴いているようです。
近くでサシバの親鳥またはつがいのパートナーが頻りに呼びかけているのでしょうか?
私に対する警戒声なのかな?
水路内の個体が仲間の鳴き声に呼応するかと思いきや、黙っています。

つづく→サシバ♂(野鳥)救出大作戦

時間の順序を逆にして救出劇の動画を先に公開した(倒叙法)のは、「長々と撮ってないで(傍観してないで)早く助けろ」という視聴者からの批判が予想されるからです。
実は、サシバがすぐに水路から自力で飛び立つだろうと初めは楽観的に予想していました。
その決定的瞬間を記録するために動画で長撮りしていたのです。
いつまで経っても飛び立つ気配がないので、事態の深刻さに気づきました。
後半は救助すべきか否か葛藤し、救助法を思案しながら撮り続けました。
結果論になりますが、私が危害を加えないということをサシバに分かってもらい信頼を得るには時間が必要でした。
拙速で助けようとしても、サシバが怖がって暴れたり失敗したりする可能性が高いでしょう。



【追記】
平凡社『日本動物大百科3:鳥類I』p157でサシバの生活史を調べると、

  • ほかのサシバやカラスなどがなわばりに侵入してくると激しく追い払う。
  • 7月上旬から中旬にかけて巣立ったヒナたちは、その後1〜2週間は親鳥から餌をもらうが、徐々に自分でも餌を捕まえるようになる。



【追記2】
栃木県市貝市での観察記録をまとめたNPO法人オオタカ保護基金 編『英訳付 サシバの里物語 :市貝町とその周辺の里山の四季』によると、
繁殖期の親鳥の主な行動範囲は、巣から半径500m程度です。繁殖が終わると、巣立った幼鳥は7月から8月に、親鳥は9月から10月にこの地を離れます。 (p56より引用)


瞬膜が閉じた瞬間


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