2011/09/10

ヤガタハエトリ♂♀飼育記録:プラトニックな関係(求愛拒否?)




2011年5月下旬〜6月上旬



5月下旬に室内に迷い込んだハエトリグモを捕獲しました。
毎年恒例ですっかり馴染みになったヤガタハエトリ♂(Pseudeuophrys erratica)成体と思われます。
体長は約3.5mm。







相前後して同種の♀と思われる個体も室内で見つけて飼い始めました。
体長〜3mm。




クモ蟲画像掲示板」にて写真鑑定してもらうと、標本を精査しないとイワテハエトリとの区別が難しいらしいのですが、ヤガタハエトリ成体♂♀でまず大丈夫だろうとの所見を頂きました。

ハエトリグモにはよくあるように、ヤガタハエトリの斑紋は性的二型を示します。
大雑把に言うと♂は黒色、♀は褐色です。


繁殖行動を観察するために、この二匹を同じ容器に移しました。
初めの頃、♂は♀の住居網を調べたり潜り込んだり(夜這い)していたので、期待して見守りました。
同居の際に偶然♀の外雌器を接写できました。






ところが待てど暮らせど期待した交接行動は全く観察できません。
♂は興味津々で♀に接近しつつ第一脚を万歳のように振り上げ触肢を動かします(求愛ダンス?)。
しかし♀はそっけなく退却するだけで、決して♂を受け入れようとしません。
容器内で二匹が出会う度にこの行動が繰り返されます。



一つの住居網に同居したのは初めのうちだけで、じきに独立した住居を構えるようになりました。
ご近所トラブルを避けるためか(縄張り?)、容器内で互いに最も離れた対角線の位置に住居網を作ることが多かったです。


長期間の飼育でも共食いは起こりませんでした。


私が見てない間にこっそり交接した可能性も当然考えられます。
そこで飼育を続け、♀が受精したかどうか、つまり卵嚢を作るかどうか、幼体が孵化するまで見届けるつもりでした。
ところがその後、諸事情によりクモの世話や観察を続けられなくなってしまいました。
残念ながら中途半端な結果のまま、気づくとクモは干からびて死んでしまいました。



同種の成体なのになぜ今回のペアリングは不調に終わったのか、なぜプラトニックな関係を貫いたのか、非常に気になるところです。
以下は個人的な覚書で、機会があれば自分で追試します。


  1. 実は別種だった?
  2. ♂または♀が未だ亜成体だった? (脱皮していないと思うが見逃した?)
  3. たまたま♀が何らかの異常で♂を受容しなかった?
  4. 交接済みの♀はそれ以上の交接を拒否する? 本種♀はもしかすると生涯で一度(成体への脱皮直後など)しか交接しないのかも?
  5. ♂が♀の好みに合わず拒否された?(female choice!)
  6. 本種はパンダのような特に繊細な生きもので、飼育下ではなかなか繁殖行動をしてくれない? 特別な飼育環境を整えてやる必要があるかも。(私にとって一番の悪夢)

【追記】
一つのアイデアとして、♀だけをCO2麻酔にかけ寝かせておくと♂が交接するかどうか、試してみる価値はあるかも。
ハエトリグモ♂の中には同種♀の死骸に対しても求愛することがあるらしい。

参考:「麻酔したクモに対するネコハエトリの求愛行動:PDF」、「マミジロハエトリに求愛したヨダンハエトリ










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