2025/07/14

山中の湿地帯で下生えを採食に来たニホンカモシカがトレイルカメラに興味津々【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年6月中旬・午後19:50頃 

山中の湿地帯にある水場を2台の自動撮影カメラで見張っていると、ある晩に左から来た謎の獣がカメラの至近距離に写っていました。 
初めは頭を下げて泥濘の匂いを嗅いでいるようでしたが(下生えを採食?)、右に数歩前進してからようやく頭を上げると、ようやく角が見えてニホンカモシカCapricornis crispus)と判明。 
この地点でカモシカは初見です。 

木の幹に付いている異物の存在に気づいたようで、鼻を近づけてトレイルカメラの匂いを念入りに嗅いでいます。 
カモシカの鼻息♪がフンフンと聞こえます。 
ホオノキの幹に監視カメラを設置した高さは地上90cmでした。 

これほど至近距離からカモシカの顔を撮れたのは初めてかもしれません。 
至近距離でもピンぼけにならず、眼下腺の膨らみもしっかり撮れていました。 
無人カメラならではの迫力のある映像になりました。 
角輪を数えれば、ニホンカモシカの年齢を推定できるかもしれません。
ヤブ蚊がカモシカの毛皮の上スレスレを飛び回っています。 

カモシカが右に立ち去ると、対面に設置したもう1台の監視カメラが起動しました。 
別アングルの映像に切り替えると、カモシカが立ち止まってカメラを見つめていました。 
やがて警戒を解くと、獣道をゆっくり左に歩いて行きます。 

画面の左端で立ちどまり、頭を下げました。 
おそらく湿地帯に生える下生えを採食しているようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

池畔のマユミ枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#3】ニホンザルが泡巣を捕食?

 



2024年6月上旬〜中旬 

繁殖池で、岸辺に自生するマユミの枝葉にモリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)が集まって白い泡巣を次々に作り、産卵する様子をタイムラプス動画で記録しています。 
夏至(6/21)が近づき日が長くなったので、タイムラプス専用カメラのタイマー設定を午前5:30〜午後18:00に前後30分ずつ延長しました。 
1分間隔のインターバル撮影で、ちょうど一週間分(7日間)の記録です(6/7〜6/14)。 
最近は雨不足のようで、池の水量が減り、岸辺は干上がりつつあります。 
当分は雨が降らないとの週間天気予報で、心配です。 

それでは早速、撮れたタイムラプス映像を見てみましょう。 
撮影を延長した薄明薄暮の時間帯も充分明るく撮れていました。 
モリアオガエルの産卵は主に夜行われるようですが、昼間でも新しい泡巣が作られていました。 
例えば6/13午前8:00〜午後13:00の映像が分かりやすく撮れています。 

この時期、面白い事件がいくつか起きていました。 

(1)ニホンザルによるモリアオガエル泡巣の捕食?
カメラが狙っていたマユミ樹上の比較的新しい泡巣のいくつかが、動画の冒頭で突然、しかもほぼ同時に溶け落ちました。 
泡巣の内部でモリアオガエルの幼生(オタマジャクシ)が孵化してある程度育つと、雨が降る日に自然と泡巣が溶け落ち、オタマジャクシは下の池に脱出します。 
しかし、今回の泡巣が自然に溶けたにしては時期が早すぎます。 
つまり、あまりにも不自然な溶解です。 
タイムラプス動画をコマ送りでじっくり見直すと、泡巣消失の謎が解けました。 
事件が起きたのは、6/7の午後15:44〜15:57です。 
何者かがマユミの灌木を激しく揺すったりしならせたりしたせいで、泡巣が何度も水中に没していました。 
そのせいで泡巣が早く溶けてしまったようです。 

このとき、池の対岸を遊動するニホンザルMacaca fuscata fuscata)が写っていました。
山林を遊動してきた群れが池を訪れ、一部の個体が狼藉を働いたようです。
猿が木から木へと伝い歩く際に、細いマユミ灌木上の泡巣が激しく揺すられて、泡巣が壊れたり溶け落ちたりしてしまったのでしょうか?
好奇心旺盛な子ザルがモリアオガエルの泡巣を果物と誤認して興味を持ち、調べに来たのかな? 

夏の暑い日にニホンザルは池に飛び込んで水遊びをすることが知られています。
関連記事(10年前の撮影)▶ 湖で泳ぐ野生ニホンザルの群れ
今回も池畔のマユミ灌木から無邪気に池へ飛び込もうとして、泡巣を意図せずに破壊・融解してしまったのでしょうか?
しかし、干上がりかけた浅い泥沼にニホンザルが入水するとは思えません。

実は、対岸(画面左端)に自生するミヤマガマズミの灌木にもモリアオガエルの白い泡巣が産み付けられています。 





下の連続写真で示すように、別個体のニホンザルがこのミヤマガマズミ群落を訪れて、しばらく座り込んでいました。
どうやらモリアオガエル泡巣に含まれる卵やオタマジャクシを捕食したようです。
ニホンザルにとって、貴重なタンパク源になるでしょう。

ちなみに、翌日6/8には、このミヤマガマズミの枝先にモリアオガエルの新しい泡巣が産み付けられていました。 
ニホンザルが来る前の泡巣の様子。まるで白い果実のように泡巣がたわわになっている。
対岸左のミヤマガマズミにニホンザル登場。右手前のマユミ枝葉が何者かによって大きくしなり、泡巣が写ってない。

ニホンザルが対岸左のミヤマガマズミでモリアオガエルの泡巣を捕食中?

別個体のニホンザルが対岸のスギ林縁を右から左へ遊動。右手前のマユミ枝葉が何者かによって大きくしなり、泡巣が写ってない。
対岸左のミヤマガマズミからニホンザルが去る。

右手前のマユミ枝葉を何者かが激しく揺する。
ニホンザルが居なくなると、マユミ樹上の泡巣は短時間ですっかり溶け落ちていた。

その後はマユミ灌木の真下だけでなく、水面のあちこちにモリアオガエルの溶けた泡巣が浮いていました。 
風に吹かれて水面を移動したのかと思ったのですが、ニホンザルが枝を激しく揺すって泡巣を水面に浸けたことで説明できそうです。 

1分間隔のインターバル撮影では、断片的な情報しか得られません。
もし今後もニホンザルがモリアオガエルの繁殖池に来て泡巣の採食を繰り返すようなら、池畔にトレイルカメラを追加して、動画による証拠映像を撮るしかありません。





【参考文献】
ニホンザルがモリアオガエルの泡巣を捕食するなんて、私にとっては全く予想外の事件で興奮しました。
GoogleScholarで文献検索してみると、残念ながら新発見ではなく、すでに論文になっていました。
井上光興; 辻大和. 野生ニホンザル Macaca fuscata によるモリアオガエル Rhacophorus arboreus 泡巣の採食事例. 霊長類研究, 2016, 32.1: 27-30.(全文PDFをダウンロード可)

ブログで報告している人もいます。
サルが食べていたのは・・・ @秋田・青森県


外来種のアライグマがモリアオガエルの泡巣と成体を捕食した事例も別に報告されていて、この論文は要旨だけ読めました。
ICHIOKA, Yukio; HIJII, Naoki. Raccoon Predation on Foam Nests and Adults of the Forest Green Tree Frog (Zhangixalus arboreus: Rhacophoridae) in Central Japan. Current herpetology, 2021, 40.2: 129-136.
外来種のアライグマが当地で生息しているという確かな証拠映像はまだ撮れていません。

野生動物による捕食圧が高まれば、モリアオガエルも対抗策を進化させる可能性があります。
今の泡巣は白っぽくて樹上でよく目立つので、緑の色素を混ぜ込んで迷彩を施せば、保護色になりそうです。

もしかすると逆に、モリアオガエルはニホンザルに泡巣を見つけてもらいたいのかもしれません。
樹上の果実に擬態してニホンザルの気を惹いているという大胆な仮説です。
泡巣が産み付けられた木にニホンザルがよじ登ろうとしても、細い灌木のことが多いので、猿の体重を支えきれずに大きくしなり、泡巣は水没してしまいます。
泡巣の一部はニホンザルに捕食(食卵)されてしまうかもしれませんが、泡巣が溶けてオタマジャクシが水中に脱出するのをニホンザルが助けているのかもしれません。



(2)6/9午後12:20に対岸の水際をホンドタヌキNyctereutes viverrinus)らしき野生動物がうろついていました。
(3)6/12午前7:49にコガラPoecile montanus)がマユミ樹上に来ていました。 
モリアオガエルの泡巣に集まる昆虫(ハエやシリアゲムシなど)を捕食しに来たのかな? 

他にも私が見落としている事件がまだまだありそうなので、皆さんもタイムラプス動画をスロー再生して見つけたら教えてください。


つづく→

2025/07/13

アカマツの幹に固定したトレイルカメラを手荒に調べるツキノワグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年6月中旬

シーン0:6/14・午後12:14・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
里山にある雑木とスギの混交林で、ニホンカモシカの溜め糞場sr2を自動撮影カメラで見張っています。 
基本的には画面の左から右に向かって上り坂ですが、溜め糞場の付近はほぼ平坦になっています。 
画面の手前から奥に向かう獣道と左右に通る獣道の交差点になっています。 

ツキノワグマUrsus thibetanus)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:6/18・午後19:03・気温20℃(@0:04〜)日の入り時刻は午後19:07。 
日没直前でかなり薄暗いです。 
撮影地点は山腹にあるので、日没時刻よりだいぶ早く太陽が山の端に隠れて暗くなります。 

真っ黒なクマが奥から手前に向かってノシノシ歩いて来ました。
林床に残されたカモシカの糞粒の匂いを嗅ぎ回っても、特に反応しませんでした。 
途中でクマはミズナラの木をちらっと見上げました。 
自動色調補正で明るく加工した上で、リプレイしてみましょう。(@0:23〜) 

手前の死角(アカマツの根元)に来たツキノワグマは何をしているのか、鼻息だけがときどき聞こえます。 
アカマツの根元で私の足跡の残り香をクマは嗅ぎ回っていたようです。 
クマが急に立ち上がり、アカマツ幹に固定してあるトレイルカメラに前足で触れて乱暴に動かしました。 
ガチャガチャと物凄い音がして、撮影アングルが少しずれてしまいましたが、トレイルカメラが壊されずに済んで助かりました。 
ストラップだけでなくワイヤーロックも使ってトレイルカメラをしっかり固定しておいたおかげです。 

諦めたクマは、どこかに立ち去ったようです。 


シーン2:6/18・午後20:18・気温20℃(@2:08〜) 
1時間13分後、すっかり暗くなった晩にツキノワグマが再び現れました。 
獣道を右へ立ち去る途中で左折して、奥へ向かいました。 
(その先には巨大なハリギリ?の倒木が転がっています。) 
同一個体のクマが戻ってきたのか、それとも別個体が生息しているのかな? 

しばらくすると、左奥の暗闇で白い目が光りました。 
クマがそっちに移動したのかと思ったのですが、映像を確認すると、クマが来る前にも既に1回光っていました。 
クマ以外の野生動物やカエルが巨大倒木の周辺に潜んでいたようです。 
蛍の光ではなさそうです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ クマの鼻息や物音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
この地点でツキノワグマは初見です。 
クマが樹上のトレイルカメラに気づいて手荒に悪戯する衝撃映像が撮れていました。
録画時間を2分間に延長しておいてよかったです。 
クマの前足にはニホンザルの手のような器用さはまったくなさそうです。

もしやクマはアカマツに木登りしたかと思ったのですけど、後日に現場検証すると、アカマツ幹にツキノワグマの爪痕は残っていませんでした。 
トレイルカメラの設置角度(斜め下を狙いたい)を微調節するために、カメラの背面とアカマツ幹の間にオニグルミ堅果の殻を挟んでおいたのですが、その匂いにクマが敏感に反応したのかもしれません。 
現場検証すると、そのクルミもトレイルカメラの裏に挟まったままで無事でした。 
ちなみに、監視カメラの高さは地上から約160cmです。 

クマの背が届かない高所にトレイルカメラを設置し直すべきかもしれませんが、クマが本気なら高い木にも楽々と登れますから、対策しても無駄でしょう。 


つづく→

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