2023年6月下旬
平地のスギ防風林にホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場wbcがあります。
関連記事(2ヶ月前の撮影)▶ スギ防風林の溜め糞場で仲良く同時に排便するホンドタヌキ♀♂【トレイルカメラ:暗視映像】
タヌキの溜め糞場wbc-1から約5m離れた地点に、別の溜め糞場stmpを新たに見つけました。
朽ちた切株と捨てられた古い手押し車(猫車)の間に溝が掘られていて(農業用水路の跡?)、そこに黒っぽい下痢便が残されていたのです。
タヌキの溜め糞場とは異なり、しっかりした固形の糞が残っていないのが特徴です。
気にはなっていたものの、監視するためのトレイルカメラの数が足りなくて、検証が後回しになっていました。
他のプロジェクトがようやく一段落したので、溜め糞場stmpにトレイルカメラを設置したところ、ニホンアナグマ(Meles anakuma)が排便に通っていることが判明しました。
アナグマの溜め糞場を見つけたのは、これが2例目です。(n=2)
タヌキとアナグマが溜め糞場を共有(隣接)しているのは、別の地点(里山のスギ林道)でも観察しています。
アナグマが溜め糞場に下痢便を排泄するのも、同じく別の地点(里山のスギ林道)で観察済みです。
シーン1:6/27・午前2:44・(@0:00〜)
夜中に左から来た獣が溜め糞の匂いを嗅いでいます。
切株の方を向いて溜め糞場stmpに跨がり、脱糞しました。
残念ながら手前の切株が邪魔で顔が見えませんでした。
(もっと高所から見下ろすように監視カメラを設置する必要ありそうです。)
林床の溝を通って右下へ立ち去る際に、ようやくアナグマと判明しました。
おそらく♀(または若いヘルパー♂)のようです。
スクワットマーキング(臭腺や肛門腺による匂い付け)はしませんでした。
シーン2:6/28・午前3:45・大雨(@0:25〜)
梅雨の激しい豪雨が降りしきる深夜に、溜め糞場stmpに来たアナグマが左を向いて軟便を排泄しました。
用を足すと、溝を通って右に駆け去りました。
逃走シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。
詳細は伏せますが、アナグマの営巣地(セット)から遠くない場所に、この溜め糞場stmpは位置しています。
この映像では、画面の左上の方向にアナグマの営巣地があります。
ちなみに、タヌキの溜め糞場wbcは、画面の左下方向にあります。
溜め糞場stmpに通うアナグマを個体識別したくなりますが、右目が左目よりも小さい♀かどうか、この動画のアングルからは見分けられませんでした。
アナグマ関連の本には、巣穴の近くに溜め糞場があると記述してあります。
例えば、熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』(2011年)でアナグマの掲載ページを参照すると、
巣穴の近くに穴を掘り、中にフンをした「表札フン」。ミミズ類を多く食べたときのフンは、形状が崩れやすいという。地域によっては、タヌキに似た「ためフン場」をつくる場合もある。(p68より引用)
鈴木欣司『アナグマ・ファミリーの1年』(2000年)によると、
アナグマの糞は、よく巣穴の近くに掘った小穴にタメ糞で見られます。5cmほどの細長い形ですが、軟便のものも多く、ためるとトイレを移します。(p35より引用)
ところが、なぜか私のフィールドでは当てはまらず、巣穴から結構離れた地点にあります。(n=2)
営巣地にトレイルカメラを2台設置して重点的に監視しても、巣穴の近くで脱糞するアナグマの決定的な証拠映像を一度も撮れたことがありません。
(排尿マーキング行動は何度も撮れています。)
営巣地と溜め糞場の分離がこの地域のニホンアナグマ個体群に特有の習性だとしたら面白いのですが、進化的にどんな意味があるのか、今のところ分かりません。
ホンドタヌキの縄張りと重なり合って密接に共存していることが一つの鍵になりそうです。