2022/12/20

スギ林道を外れて法面を登るニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月中旬

里山でタヌキとアナグマが共有する溜め糞場sがあるスギ林道を自動撮影カメラで見張っていると、通りかかったニホンカモシカCapricornis crispus)がカメラの手前下で長居したり姿を消したりすることがちょくちょくあります。 
監視カメラの死角でカモシカが何をしているのか、ずっと気になってました。 
林道脇の法面がちょっとした崖になっているのですが、その土を舐めてミネラル摂取しているのではないか?と思いつき、それを検証するためにトレイルカメラを新たにもう1台設置しました。 
上手く行けば、野生動物を2つのアングルから同時に撮影することが可能です。 
トレイルカメラ2台の内蔵時計を正確に時刻合わせしておくことが肝心です。

シーン1:8/19・午後18:59・気温21℃ (日の入り時刻は午後18:31) 
日没後の真っ暗な林道をいつものように右から登場したカモシカが、 溜め糞場sの匂いを嗅ぎました。 
細めの角がスラッと伸びている個体です。 
第1カメラを固定したスギの木の真下に近づき、死角に消えました。 

同じ林道を挟んで反対側に立つホオノキに固定した第2のトレイルカメラに、このカモシカの行動が逆アングルからしっかり記録されていました。 
法面の崖の土を舐めているのではないかという私の予想は、大ハズレでした。 
林道を歩いて来たカモシカは林道を外れて法面の崖を登ると、下草の生えた急斜面をゆっくり右上に登って行きました。
蹄のあるカモシカは、急斜面を登るのも苦になりません。 
スギの幹にベルトで固定した第1のトレイルカメラから赤外線投光器が煌々と光っています。 
カモシカの頭上よりもずっと高い位置にあり、カモシカは暗視カメラの存在を気にしていませんでした。
(野生動物の目には赤外線が見えないとされています。) 
カモシカが巡回する獣道は途中で林道を外れていることが分かり、ようやく謎が解けました。 
つまり、ここはカモシカが巡回する獣道の分岐点になっていたのです。
実は冬の積雪期にもカモシカは同様のコースを辿っていたのを思い出しました。 
(第1カメラ@スギを通り過ぎる手前から法面を斜めに登り始める。)
トレイルカメラの存在を嫌がって迂回するようになったのか?と当時は気を揉んでいたのですが、そうではないと分かり安心しました。 


シーン2:8/22・午後23:44 (@0:32〜) 
3日後の深夜にニホンカモシカが再登場。 
第2カメラ(@ホオノキ)の映像です。 
対面の第1カメラ(@スギ)もしっかり起動して赤外線が光っているのに、そちらにはなぜかカモシカが写っていませんでした。 
今回は林道脇の法面を登らず、林道を真っ直ぐに歩き続けました。 


シーン3:8/23・午後14:03・気温28℃ (@0:42〜) 
翌日の明るい昼間にまたカモシカがスギ林道を通りかかりました。 
緩やかな坂道になっている林道を右からゆっくりした足取りで登って来ました。 
タヌキの溜め糞を跨いで通り過ぎます。 
このとき第2カメラ(@ホオノキ)の起動が間に合わず、カモシカの顔が写っていません。 
今回も林道脇の法面を登らず、林道を真っ直ぐ通り抜けました。 
それでも対面の第1カメラ(@スギ)と分担して、前後編の動画でカモシカを記録することができました。 

※ 最後のパート(@0:42〜)だけ動画編集時に自動色調補正を施しています。 

私は未だカモシカの個体識別ができていません。 
(1)繰り返し登場する同一個体が巡回ルートをときどき変更。
(2)林道脇の法面を登るカモシカと林道を真っ直ぐ進むカモシカは別個体。
2つある可能性のうちどちらが正しいのか、興味深いところです。 

獣道に設置したトレイルカメラを1台増やすだけで、格段に実りの多い記録になりました。 
勝手にあれこれ妄想するよりも、まさに百聞は一見に如かず。 
予算が許す限りカメラの台数をどんどん増やしたくなりますが、初期費用だけでなくランニングコスト(電池代)も馬鹿になりません。



木の根から滲み出る樹液を舐めるスジクワガタ♂

 

2022年8月中旬・午前9:40頃・くもり 

里山をつづら折れで登る細い山道で、地面に半ば埋もれた木の根っこ(樹種不明)の下に開いた穴にスジクワガタ♂(Dorcus striatipennis striatipennis)が潜んでいました。 
初めはただの落枝が埋もれかけているだけかと思いきや、木の根っこでした。
周囲は二次林(雑木林) ですが、どの木に繋がっている根っこなのか、分かりませんでした。

スジクワガタ♂にズームインしてみると、口吻を伸縮させて樹液を舐めていました。 
大顎に細かい木屑が付着しているということは、木の根っこを傷つけて樹液の分泌を促しているのかもしれません。 

動画とは別に写真でも記録したら、穴の左奥に別個体のお尻も写っていました。 (下に掲載した1枚目の写真)
スジクワガタの♀♂つがいだったのかもしれません。 
現場では2匹目の存在に全く気づきませんでした。 
私はクワガタムシの生態について詳しくないのですが、スジクワガタは木の幹の樹液酒場よりも、なぜか木の根っこに好んで集まる習性があるようです。
関連記事(8年前の撮影)▶  
苔むしたコナラの根際で争うスジクワガタ♂ 
コナラの根際でスジクワガタ♂が地面に穴掘り
スジクワガタ♂の他に、クロクサアリLasius fuji)のワーカー♀も木の根っこの樹液酒場に群がっていました。 
周囲ではエゾゼミ♂、ミンミンゼミ♂、ウグイス♂などが鳴いています。 

撮影後に同定するため採集してみるとスジクワガタ♂で、かなり小型の個体でした。 
持ち帰って、2匹のコクワガタ♂と一緒に飼育することにしました。


【追記】
wikipediaではスジクワガタの食性について、以下のように説明しています。
山地ではヤナギ、ミズナラ、白樺などの樹液に集まるが、樹液を出す樹木が少ないため、ヒメオオクワガタのように枝先などで自ら樹皮を削る、もしくはヒメオオクワガタのおこぼれに与るように一緒か、その食痕の樹液を吸っていることもある。樹液目当てに樹皮を削る行動はミヤマクワガタやヒメオオクワガタなどにも見られるように、主にメスが行う。また、樹液だけではなく草の茎をかじって液を吸うことや落下した栗の実の中に潜み、それを食す例もあり樹液以外にも摂食対象としている。都市部の僅かな樹木の生える公園などでも生息できるコクワガタ同様、僅かな量の樹液でも生息するには十分な様で、小さな餌場に多数の個体が群がる光景も時折観察される。なお競合種の多い地域では、他の甲虫類が多く集まる様な大量の樹液が流れる場所ではなく、他の虫が寄り付かない様な少量の樹液の流れる樹木にひっそりと集まる姿も見られ、同所的な棲み分けとも言える行動を取る場合もある。


私の乏しい経験と照らし合わせて納得できたのは、最後の下線部の記述だけです。

スジクワガタは樹液酒場を巡る闘争で弱い(序列が低い)ことが予想されます。 

2022/12/19

羊歯の葉の上で日光浴するニホンカナヘビ幼体

 

2022年8月中旬・午前10:10頃・晴れ 

里山の山腹を流れる沢に近い山道を歩いていると、日向に生い茂る羊歯(種名不詳)の葉の上にニホンカナヘビTakydromus tachydromoides)の幼体が乗って日光浴していました。 
長い尻尾は無傷で、自切痕がありません。 
じっとしていても、胸が早く拍動しています。 
(背側から見ると胸が左右対称に伸縮しているので、心臓の拍動ではなく呼吸の動きなのでしょう。) 
急に右に向きを変え、移動を始めました。 
動き出しの際にペロッと舌を素早く出して葉を舐めました。 
隣接するシダの葉から葉へチョロチョロと渡り歩きます。


関連記事(11日後の撮影)▶ 羊歯の葉を伝って逃げるニホンカナヘビ成体

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