2015年7月中旬
キアシナガバチ巣の定点観察@トウカエデ枝#4
この日、在巣のキアシナガバチ(Polistes rothneyi)成虫は最大♀5匹でした。
育房を点検して回ったり各々が身繕いしている中、ときどき♀同士でキスを交わし栄養交換しています。
別のワーカーが空荷で帰巣すると、他の♀が一斉に殺到し、給餌をねだり栄養交換しています。
おそらく外で舐めてきた花蜜(またはアブラムシの甘露など)を仲間に分け与えているのでしょう。
今のところ、成虫間でギスギスした優位行動は見られません。
逆に言うと、どれが創設女王か見分けられません。
つづく→#5:夕刻の巣で♀同士キスするキアシナガバチ【暗視映像】
2015年9月上旬
ジョロウグモ♀♂の定点観察#1
窓の外に張られた網にジョロウグモ(Nephila clavata)♀が静止していました。
ここで店開きして、室内の照明に誘引される虫を網で捕らえる捕食戦略なのでしょう。
(この♀の発育ステージは最終脱皮前の亜成体であることが後に判明します。)
さて、♀と同居している♂の不思議な行動が気になりました。
逆光のため網や糸がほとんど見えないのですが、♂は網の中を活発に歩き回りながら脚にへばり付いた粘着糸を舐めて身繕いしているようです。
ときどき明らかに糸屑を食べている様子も観察出来ました。
それとも網に付着した超微小の昆虫を捕食しているのでしょうか?
造網性クモが網を取り壊す際に糸のタンパク質を再利用(リサイクル)するため糸を食べてしまうのは珍しくありません。
今回の場合は♀が作った網なので、♂が勝手に網を取り壊して主に怒られないのか心配になります。
♀は♂の振る舞いを振動で認識しているはずなのに、網の中央で下向きに占座したまま無反応でした(黙認)。
♂は♀に代わって網のメンテナンスをしているのかとも思ったのですが、食べ残しや目に見える大きさのゴミを網に放置していますから違いますね。
ジョロウグモの網は蹄形円網の前後に糸を不規則に張り巡らせた三重構造になっています。
この撮影アングルでは遠近感が不明で、♂が食べている(取り壊している?)網が主網なのか補助網なのかいまいち分かりません。
回り込んで横から観察できないのがもどかしいです。
♀の元に戻った♂が♀の前方から近づくと、邪険に追い払われました。(@3:29)
慌てて逃げた♂は♀の上で下向きに占座しました。(ライバル♂から♀を守る配偶者ガード)
繁殖期のジョロウグモ♂が♀の網に居候して何を食べているのか今まで分からず、不思議でした。(♂の捕食シーンを見たことがありません。)
♀と交接することで頭がいっぱいの成体♂は繁殖期の間は絶食しているのか?と思ったりもしたのですが、ようやく謎が解けました。
『自然の観察事典21:網をはるクモ観察事典』p20によると、
(ジョロウグモの)♀の網の上で、♂は、♀が成体になるのをじっとまちます。ときには、それは1ヶ月近くにもなります。そのあいだ♂は、まったく食事をとりません。なかには、ちゃっかりと♀の食べ残しをとるものもいます。でも多くの♂たちは、のまずくわずの状態で、ほかの♂が網にはいってくるのをふせぎます。
※ ガラス窓越しに撮ったやや不鮮明な映像に対して動画編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→#2:ジョロウグモ(蜘蛛)亜成体♀をガードするα♂:求愛とパトロール
2015年7月中旬・気温33.5℃、湿度45%
キアシナガバチ巣の定点観察@トウカエデ枝#3
植木鉢の下に敷く水皿(直径20cm)が外に放置され、雨水が溜まっています。
猛暑の昼下がり、その水を飲みにキアシナガバチ(Polistes rothneyi)のワーカー♀がせっせと通っていました。
帰巣する蜂を追いかけると、在巣の蜂は計6匹。
一番大型の創設女王と思われる♀が巣盤の天井で休息、身繕いしています。
吸水してきた蜂が紙製の巣盤に水を吐き戻してわざと濡らし、気化熱で巣を冷やそうとしています。
気温が高すぎると卵や蜂の子(幼虫)の発育に悪影響があるのでしょう。
ヒトが打ち水をするのと同じです。
風があるため不快指数はそれほどでもなく、体感で蒸し暑さはありませんでした。
営巣地は建物の北側なので、午後の苛烈な直射日光は射しません。
もし更に暑くなれば、次は散水と扇風行動を組み合わせるはずですが、それは見られませんでした。
ところで、巣を濡らしてもカビが生えたりしないのは何か工夫があるのでしょうか?
巣から僅か数メートル離れた位置にある水盤の横で待ち構えていると、おそらく同一個体の蜂がまた水を飲みに飛来しました。
皿の縁に止まると、水面まで降りて飲み始めます。
水中にはボウフラが浮いています。
トウカエデの葉の付き方は互生ではなく対生です。
樹皮が特徴的で縦に剥がれていきます。
つづく→#4:キアシナガバチ♀成虫間の栄養交換