2014年6月下旬
▼前回の記事
分散を始めた幼体をガードするイエユウレイグモ♀(蜘蛛)
6/25
前日に天井隅の不規則網へ新たに侵入していた無印のイエユウレイグモ成体♂(Pholcus phalangioides)を個体標識することにしました。
一時捕獲してから、炭酸ガス麻酔下で黄色の油性ペンで腹背にマーキングを施しました。
ついでに発達した触肢を接写しておきます。
採寸すると体長7mm(上顎および糸疣を含まず)。
クモ♂が目覚めてしまいました。
イエユウレイグモ♂黄色を網に戻す際にうっかり糸をあちこち切ってしまったようで、網の主である♀が怒って排斥行動を始めました。
映像の冒頭で♂を幼体の居る右側に追いやってしまったのは♀の珍しいミスです。
幼体をガードする♀は常に♂と幼体との間に立ち塞がる必要があります。
♀が長い歩脚を伸ばして触れただけで、♂は慌てて離れました。
♂黄色を追い払った♀が幼体の近くに戻ると身繕いを開始。
その後も♀がときどき♂に少し近づいては牽制しています。
体格差がある訳でもないのに、♂が♀に反撃することはありませんでした。
ところがこの騒ぎの間に幼体は動かず、「蜘蛛の子を散らしたように逃げる」行動は特に見られませんでした。
イエユウレイグモの幼体は運動機能(歩行能力)が未発達なのでしょうか?
だから孵化した後も♀がしばらく保護する必要があるのかな?
肩身の狭い思いをしながら居候を続ける♂は、幼体が完全に分散して♀が再び発情する(求愛を受け入れてくれる)のを待っているのでしょうか?
2014年7月上旬
平地の畑の端に植えられたラベンダーの群落でツメクサガ(Heliothis maritima adaucta)が青い花から花へ飛び回り吸蜜していました。
畑の敷地には勝手に入れないので、望遠レンズで狙います。
モンシロチョウ(Pieris rapae)およびベニシジミ(Lycaena phlaeas)も一緒に訪花していました。
※ 小雨が降ってきて薄暗い状況で撮った映像に自動色調補正を施して彩度を上げています。
2014年6月下旬
▼前回の記事
イエユウレイグモ(蜘蛛)幼体の孵化
6/20
定点観察しているイエユウレイグモ♀(Pholcus phalangioides)の口元でひと塊になって集合していた(団居)幼体は分散を始めていました。
天井隅に張られた不規則網の少し離れた場所にいつの間にか♂(腹背に水色インクで個体標識)が戻っていました。
前日に観察できなかったことが悔やまれます。
幼体の運動・移動を実際に見た訳ではありませんが、同じ日に数時間ごとにチェックする度に幼体の分散が一層進んでいました。
団居(まどい)の分散を微速度撮影してみれば良かったですね。
脚立に登って接写してみると、幼体の頭胸部および歩脚は透明でした。
♀が♂水色の方を向いて牽制しながら歩脚の先を舐めて掃除していました。
♂が幼体に近づくと♀は牽制しています。
6/21
♀は♂水色の方を向いて警戒しています。
 |
♀ |
6/22
♂水色は不規則網に居候を続けています。
幼体はいつまで同居するのでしょうか?
共食いされるリスクは無いのかな?
もし不規則網に獲物がかかった場合、親子でシェアするのか(亜社会性)、それとも強い成体が独り占めにするのか、非常に興味があります。
6/23
冒頭は♀vs♂水色の小競り合い?
♀が長い歩脚の先を舐めていました。
6/24
♂水色がいつの間にか居なくなり、別個体の♂無印が不規則網に来ていました。
♂同士の闘争があったのか、単なる入れ違いの訪問なのか、不明です。
(まさか♂水色は♀に食われた?)
♂をマーキングして個体識別したことで、複数の♂が入れ代わり立ち代わり♀の不規則網を訪れていることが明らかになりました。
監視カメラを設置して愚直に長撮りで記録すれば面白いことが分かったかもしれません。
父子関係がどうなっているのか、DNA鑑定で調べられたら楽しそうです。
♀は依然として分散しかけた幼体の近くでガードを続けています。
成体♂に幼体を捕食する意図があるのかどうか不明ですが、不規則網で♀は常に♂と幼体との間に立ち塞がるように陣取ります。
 |
♂無印(左)と♀(右) |
 |
♂無印 |
 |
幼体を保護する♀ |
 |
不規則網で分散する幼体 |
イエユウレイグモの体や網に触れたりすると、身を激しく揺すって威嚇することが知られています。
▼関連記事
イエユウレイグモの振身威嚇
一方、卵嚢や幼体を保護する♀と♂との間の闘争(牽制・排斥行動)では振身威嚇を発動しないようです。
つづく