2021/09/11

赤いユリズイセンの花蜜を吸うコアシナガバチ♀

 

2021年7月上旬・午後15:30頃・くもり 

家庭菜園の片隅に咲いたユリズイセン(=アルストロメリア)の群落でコアシナガバチPolistes snelleni)のワーカー♀が訪花していました。 
この組み合わせは以前、上手く撮れなかったのですけど、8年越しの宿題がようやく片付きました。
関連記事(8年前の撮影)▶ ユリズイセンを訪花するコアシナガバチ♀?
花弁が赤い品種ですが、上側にある2枚の花弁の内側にある鮮やかな黄色い蜜標を頼りにしてコアシナガバチ♀は訪花しているようです。 
訪花昆虫に対して侵入方向を示す矢印のような模様が描かれています。 

最後は隣の花から飛び立ったオオフタオビドロバチとニアミスし、空中ですれ違いました。 
ニアミスシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

コアシナガバチ♀が吸蜜のために正当訪花を繰り返しても、アルストロメリアの長い雌しべや雄しべの葯にはほとんど触れていません。 
したがって、アルストロメリアの送粉者としてアシナガバチは当てにされていないようです。 アシナガバチはアルストロメリアで盗蜜する場合があるからです。
関連記事(8年前の撮影)▶ ユリズイセンに訪花するフタモンアシナガバチ♀2つの採餌戦略(正当訪花/盗蜜)
大型のアゲハ類に受粉してもらうチョウ媒植物だと思います。
関連記事(2、4年前の撮影)▶  
アルストロメリアを訪花するキアゲハ♂の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】 
ユリズイセンを訪花するオナガアゲハ♂の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】

田園地帯の上空で獲物を狙って停飛するノスリ(野鳥)

 

2021年6月下旬・午後18:00頃・晴れ
前回の記事:▶ スギ樹冠で鳴き続ける♪ノスリ(野鳥)
ノスリが鳴いていた止まり木を逆方向からも撮りたくて、里山から田園地帯に降りて来ました。
しかし手前に植林されたスギ林の樹高が高くて見えませんでした。 

青々としたイネが一面に育つ広大な田園地帯で農道を歩き去る私の上空でノスリButeo japonicus)が再び飛び始めました。 
ところが今度は全く鳴かなくなりました。 
夕方で風が強く、風切り音♪がうるさいのですが、ノスリの鳴き声は聞こえません。 
私が営巣地から遠ざかったので、警戒声を発する必要がなくなったのでしょう。 
個体識別できていないのですが、なんとなく同一個体のノスリではないかと思っています。
関連記事(数十分前の撮影)▶ 対人威嚇の波状飛翔ディスプレイを繰り返しながら鳴くノスリ(野鳥)
私を威嚇するために繰り返していた鬼気迫る波状飛翔ディスプレイとは全く違い、リラックスして滑翔しています。 

やがて、空中の一点に止まりながら激しく羽ばたくようになりました!(@0:27) 
チョウゲンボウ風の停飛です。 
激しく羽ばたいても頭部は動かさず、地上の獲物に狙いを付けているようです。 
直後にスーッと軽く降下するも、獲物にアタックする急降下ではなく、滑翔に戻りました。 
田んぼの上空を飛びながら獲物を探索しているのだと分かりました。(探餌飛翔) 
ホバリングと降下を繰り返し、飛翔高度を少しずつ下げています。
関連記事(4年前の撮影)▶ 水田の上空でホバリングするノスリ(野鳥)
場所をあちこち変えながら、再び水田の上空で停空飛翔(ホバリング)を繰り返しました。(@1:57、2:10) 
いよいよ狩りのシーンが撮れるかと期待して見守ったのですが、残念ながらノスリは地上に急降下してくれませんでした。 

『フィールドガイド日本の猛禽類vol.04ノスリ』を読み返すと、まさに観察した通りの記述がしてありました。
狩り Hunting  風が強い日ほど飛びながら獲物を探すことがよくあり、その際には停空飛翔をする。(中略)獲物を見つけたノスリは段階的に下降しては体勢を整え直すことで徐々に獲物に近づき、最後は落下するように地面に向かって急降下していく。風の強い日にノスリが翼を少し折り曲げ、尾を巧みにあやつって農耕地や山林の上空一点にピタリと浮いて探餌する姿は、夏に本種のいない西日本の大部分の地域では冬の風物詩といえる景色であろう。 (p4〜5より引用)
翼の下面がようやく順光で見えて、白地に黒い前縁紋があったことからノスリと確定しました。(@1:39、2:35、3:15) 

後半になると、飛行高度を再び上げるために上昇気流に乗って帆翔するようになりました。
夕方の空にくるりくるりと弧を描いています。 
一時はかなり遠ざかってしまったノスリが再び私の近くに戻って来てくれました。 

最後は山麓のスギ林に飛び込んで枝に止まったように見えたのですけど、見失ってしまいました。(動画を撮り損ね) 
5年前にもノスリが夕方に高速飛翔でこのスギ林に飛び込むのを見ています。 
同じつがいが近くで代々営巣していそうな気がしています。
関連記事(5年前の撮影)▶ 杉林に飛び込む猛禽類(野鳥)のペア
※ 今回は動画編集時に手ブレ補正のデジタル処理を施していません。 
「空を背景に飛ぶ猛禽」のように、被写体の周囲に物が無いシーンの場合、手ブレ補正すると副作用で不自然な動きの映像になってしまうからです。 
 今まで実際に見たことのなかったノスリの習性をこの日だけで幾つも動画で記録することが出来ました。 
こういう決定的なブレークスルーがたまにあってミッシングリンクが繋がるので、フィールド調査は止められません。 
とても充実した気分で帰りました。

2021/09/10

階段で溜め糞の匂いを嗅ぐニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2021年6月下旬・夜(撮影時刻不明)・気温15〜16℃ 

堤防のコンクリート階段に残された溜め糞にやって来る野生動物を突き止めるためにトレイルカメラを仕掛け、試行錯誤しています。 
残された糞の形状からして、主にタヌキまたはアナグマの仕業だろうと予想していました。 
それに追加してイタチ(またはテン)が残したと思われる糞も少量トッピングされていました。 
中嶋捷恵『我が家にはいろんな動物がやって来る』という書籍によると、
(アナグマの)トイレについては糞をためる傾向が見られるものの、タヌキほどではない。小さな穴を掘ってそこへするが、何回か使うと別の場所に穴を掘る。土はかけずにそのままである。(p92より引用)
ニホンアナグマMeles anakuma)が夜に現場を通りかかった暗視映像をまとめてみました。 

シーン1:気温16℃ 

溜め糞のある階段の1段下を夜行性のアナグマが左から右へ足早に歩いて通り過ぎました。 
なぜか溜め糞には興味を示しませんでした。 

シーン2:気温15℃ 

同一個体なのか別個体なのか不明です。
前回と同じく左から登場し、階段(溜め糞の1段下)の臭いを頻りに嗅いでいます。 
今までで最も長時間、画角内に滞在してくれました。 
三脚およびトレイルカメラの存在にようやく慣れてくれたのかな? 
溜め糞のある段に登ると臭いを念入りにチェックしました。 
しかし、溜め糞のあるエリアの左端しか嗅いでいません。 
残念ながら排便してくれませんでした。
更に1段上に登ると、ゆっくり右へ歩き去りました。 

※ 画面の下に表示されている撮影時刻のタイムスタンプがでたらめな表示になっています。 
前回の使用時に電池を使い切ったら、カメラ内部の時計が全てリセットされてしまったようです。 
私がそれを知らずに電池を交換しただけでカメラを起動させてしまったのです。 
ただし撮影法の細かい設定などは保存されていました。

※ 動画編集時にequalizorフィルターをかけて画面全体を明るく加工しています。 


【調査の総括】
残念ながら、無人のセンサーカメラで連日監視しても、野生動物が溜め糞で実際に排便する証拠映像を撮ることはできませんでした。 
本命のタヌキが一度も登場しなかったのが何よりも意外です。 
不審なカメラの出現に警戒して、野生動物が溜め糞に近寄らなくなったり迂回したりするようになったのでしょうか? 
トレイルカメラをしばらく現場に放置したら慣れてくれるかと思ったのですが、駄目でした。 
カメラの設置場所が被写体から近すぎたのが問題かもしれません。
どうしてもこれ以上離すことができない、という現場の事情がありました。(背水の陣)

溜め糞に含まれていた未消化の種子から発芽して、ツユクサの群落が階段に繁茂するようになりました。 
まさに種子散布(動物散布型)の結果です。 
実はトレイルカメラを設置する直前に、動画の見栄えを考えて、溜め糞の周囲に生えた雑草を除去しました。 
私が現場の草むしりをしたことで、夜行性の野生動物は嗅覚で異変を感じたのかもしれません。 
(その後、夏の間にツユクサの群落が再生し、溜め糞をすっかり覆い隠してしまいました。)

今のところ、階段上の溜め糞に興味を示して匂いを嗅いだのはアナグマだけで、ネコとハクビシンは素通りしました。 
ただし、溜め糞のある段は避けて通ったので、完全に無視している訳ではなく、不潔な糞を踏みたくないという衛生観念はあるようです。


溜め糞に新たな糞が追加されていない上に、古い糞がいつまでも分解されずに原形を保って残っているのがそもそも奇妙です。 
私が溜め糞に鼻を近づけても糞便臭が完全に抜けていました。 
実はかなり古い糞なのかもしれません。 
下が地面ではなくコンクリートなので、糞がいつまで経っても分解されずに階段に残っているだけのような気がしてきました。(獣糞のミイラ化?) 
そして、この溜め糞は野生動物のサインポストとしてもはや使われなくなった(新たに糞を追加してない)のだろうという結論に達しつつあります。 

誰かが昼間に散歩させている飼い犬がここで定期的に排便し、溜め糞を形成したという可能性も考えました。
野生動物は夜行性と分かってきた私は、調査の後半になると昼間はトレイルカメラの監視モードを切ってバッテリーを温存する設定に変えました。
したがって、明るい日中の様子は写っていない可能性があります。
それにしても、新しい糞が追加されていない、という事実は変わりません。

ここでのカメラトラップ調査を諦め、別の場所にトレイルカメラを設置し直すべきかもしれません。 
撮影は無人カメラに任せ、私はフィールドで新たな溜め糞ポイントをあちこち探し回っています。
一般に気温の高い夏の間は糞の分解速度が速く、大きな溜め糞として残りにくい、という問題があります。

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