2025/01/09

狩ったコモリグモ♀(蜘蛛)を運搬中に身繕いするクロクモバチの一種♀

 

2023年10月上旬・午後12:35頃・くもり 

農村部の舗装された農道を私がてくてく歩いていると、牛舎の横の路上をうろつく真っ黒な蜂を見つけました。 
狩ったばかりのクモの横でうろついていたので、クモバチ科(旧称:ベッコウバチ科)の♀だろうとすぐに分かりました。 

蜂は路上で立ち止まると、触角を前脚で拭って化粧しました。 
閉じた翅を細かく震わせています。 
狩りに成功したクモバチ♀は 、獲物を運搬中に私が近づいたので、警戒して獲物を一時的に放棄してしまったようです。 

まず、路上で横倒しのまま放置された獲物を検討しましょう。
コモリグモ科の一種(種名不詳)でした。 
既にクモバチ♀の毒針によって麻痺していて、全く動きません。 
クモの写真を見直すと腹部下面に外雌器があり、♀成体と判明。
クモバチの種類によっては、獲物を狩った直後に運搬しやすいように歩脚を根元から切り落とす者がいるのですが、この獲物では歩脚の欠損はありません。 







蜂は全身真っ黒で、翅も腹背も黒色でした。
以上の情報からクロクモバチの仲間(Priocnemis属)ではないかと蜂の種類を絞り込めたのですが、それ以上は採集して標本を精査しないと分かりません。 





さてこの後、私はどうすべきかが問題です。 
その場にじっと動かずに獲物に注目して動画を撮り続ければ、いずれクロクモバチ♀が取り戻しに来て運搬を再開し、地中に巣穴を掘って貯食・産卵するまで観察できたはずです。 
クモバチの種類によって獲物の運搬法や造巣法も違うので、そこも観察ポイントです。 

クモバチ♀が毒針を刺して獲物を狩る行動を私はまだ実際に見たことがありません。 
『ファーブル昆虫記』にも詳しく書かれてあるように、運搬中の獲物をピンセットなどで摘んで動かなくすると、狩蜂♀は獲物が麻酔から覚めて抵抗したと勘違いして再び毒針を刺して麻酔し直すのだそうです。 
いつかその実演をしようとピンセットを常に持ち歩いていたのですが、ザックの奥深くにしまい込んでいました。 
カメラの電池も動画撮影中に切れてしまいました。
己の準備不足を呪いながらカメラの電池を交換したりピンセットを取り出すのにもたついている間に、クロクモバチ♀はどこかに行ってしまい、見失いました。 
巣穴をどこに掘るべきか、獲物を置いて偵察に出かけたのかもしれません。
経験豊富な蜂屋さんなら、ピンセットを使わなくても咄嗟に指で獲物のコモリグモを押さえつけたかもしれません。
しかし、素手でうっかりクモバチ♀に刺されるとひどく痛むらしいと聞いていた私は、そこまでの覚悟や根性がありませんでした。 

久しぶりにクモバチ(狩蜂)と出会えてとても嬉しかったのですが、あまりにも久々すぎて観察のコツを忘れてしまい、どっちつかずの撮影になってしまいました。 
先を急ぐ他の用事があった私は、逃げた蜂が戻ってくるまで待てませんでした。 

2025/01/08

ホンドタヌキの越冬用営巣地で野ネズミを狩ろうとする雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬

シーン1:1/22・午後14:17・くもり・気温21℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
根雪の積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 
巣穴の入口は少なくとも3つあり、そこからタヌキの足跡が雪面に残されています。 
今季は異常な暖冬で積雪量が少なく、雪が溶けて地面が一部露出しています。 

ホンドギツネVulpes vulpes japonica)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/24・午後18:12・降雪・気温-3℃(@0:03〜) 
2日後の雪が激しく降る晩に、キツネが新雪の雪原を右から左へ横切りました。 
画面の左端で立ち止まると、タヌキの営巣地を振り返りました。 
巣穴から漂う臭いや物音に気づいたのかな? 
雪が激しく降る日のタヌキは、日没後も巣穴Lから遠出しないですぐに帰巣したことが、雪面に残る足跡から読み取れます。 
キツネはタヌキの巣穴Lへ忍び寄り、雪面の足跡の匂いをじっくり嗅いでいます。 
巣口Lに顔を突っ込んで覗き込んだものの、中に無理やり押し入ることはありませんでした。 


シーン2:1/28・午前4:31・気温-1℃(@1:03〜) 
4日後の未明に、キツネが左からやって来ました。 
新雪の雪面には、約7時間前に通ったタヌキの足跡が、雪に埋もれかけています。 
キツネはタヌキの足跡に気づくと立ち止まり、匂いを嗅ぎました。 
うっかり「足跡を見つける」と書きそうになりましましたが、暗闇でキツネがどのぐらい見えているのか疑問です。
キツネは目のタペータムが発達していますから、雪明りだけでも夜目が効くのかもしれません。

キツネは雪原をショートカットしてタヌキの巣口Mに近づいたものの、横を素通りしました。 
巣口Mを通り過ぎたことに気づいたのか、雪面の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり引き返してきました。 

最後にキツネは何か獲物の気配を雪の下に感じ取ったらしく、後足の筋力で高く飛び上がり、揃えた前足で獲物に襲いかかろうとしました。 
しかし、その結末(狩りの成否)を見届けることなく、無情にも1分間の録画が打ち切られてしまいました。
うーむ、残念無念…。 
監視カメラの録画時間を1分間から2分間に延長すべきかもしれません。 
まるでアクションの一番良い瞬間で静止画にして余韻を残したまま劇的に終わらせる「フリーズフレーム」(またはフリーズショット)という映画の手法のようです。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:07〜)、意外にもキツネは後足を先に着地していました。 
着地の振動に驚いた野ネズミが雪の下から外に飛び出してくるのを期待して、次に前足と口で獲物を狩ろうとする作戦なのかもしれません。 



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ホンドギツネはおそらく、ホンドタヌキの越冬用巣穴に居候する野ネズミの気配を雪の下に察知して、狩ろうとしたのでしょう。 
この休耕地にも野ネズミが出没することが既に分かっています。 

これまで私は山中または森の中にトレイルカメラを設置することが多く、写った野ネズミ(ノネズミ)アカネズミApodemus speciosus)またはヒメネズミApodemus argenteus)だろうとみなしてきました。 
しかし、この撮影地点は田畑に隣接する原っぱ(休耕地)なので、ハタネズミMicrotus montebelli)の可能性もありそうです。 
キツネの狩りの成功確率はわずか2~3割らしいので、成功シーンを撮影するには辛抱強く観察を続けるしかありません。

あるいは、巣内に籠もったタヌキの動きを察知したキツネが、獲物と誤認して反応してしまったのだとしたら、それはそれで面白い話です。 
「タヌキの奴らを驚かしてやろう」というキツネの悪戯心だったりして…。




つづく→

雪山のスギ林でニホンイノシシが掘り返した採食痕を見つけた!【フィールドサイン】

 

2024年1月下旬・午後13:10頃〜14:30頃・晴れ 

スノーシュー(西洋かんじき)を履いて雪山を探索していた私が下山中に、前方のスギ植林地の林縁から1頭のニホンイノシシSus scrofa leucomystax)が慌てて逃げ去りました。 
あっという間の出来事で、残念ながらその姿を証拠動画に残すことはできませんでした。 
GoProなどのアクションカメラを体に装着してドライブレコーダーのように山中で常時撮影していれば、一人称目線の証拠動画が撮れたはずなので、私も1台欲しくなります。



遅ればせながら動画を回し、イノシシが居た地点を現場検証してみましょう。 
雪で埋もれた林道の横に育ったスギの根元の雪や土が盛大に掘り返されていました。 
どうやら私が来るまでイノシシは採食行動をしていたようです。 
冬でも地中のミミズや虫を捕食したり、植物の根っこを食べたりして飢えを凌いでいるのでしょう。 
林床ならどこでも良いのではなく、スギの根元を重点的に掘り返していました。
雪かき穴掘りの重労働に対して摂取カロリーの収支が見合わない(コスパが悪い、エネルギー収支が赤字)気がするのですけど、秋に溜め込んだ脂肪で春まで乗り切れるかという問題になります。
あるいはもしかすると、寝るためのねぐらを作ろうと常緑樹の下で雪を掘っていたのかもしれません。 
イノシシの足跡を辿って周囲を調べて回ると、計3本のスギの根元が次々に掘り返されて土が露出していました。
これまでにも私は山中で同様のフィールドサイン(掘り返し跡)を見かけていましたが、今回はイノシシの仕業であるという確証があります。 
現場から逃げたイノシシは1頭しか見ていませんが、親子が行動を共にしていた可能性もあります。 



次は、逃げたニホンイノシシが雪面に残した足跡を辿ってみましょう。(アニマルトラッキング) 
穴掘りをした直後なので、雪面に残った蹄跡の一部が土で汚れています。 
しばらくは、歩きやすい林道を辿って麓へと向かっていました。 
林道の中央だけ雪が溶けて地面の落ち葉が露出していました。
イノシシがそこを歩くと足跡が残りません。
やがてイノシシの蹄跡は林道を外れて、雪の積もった急斜面を下っていました。 
さらにしつこく足跡を追跡しようか迷ったのですが、逃げたイノシシを下手に追い回すと二度と戻って来なくなってしまうだろうと判断して、追跡を打ち切りました。 



同一個体のイノシシが戻ってきてくれることを期待して、遭遇地点にトレイルカメラを設置することにしました。 
山中の別の地点(ニホンカモシカのねぐら)に設置してあるトレイルカメラを撤去して、急遽こちらに移しました。 
3箇所ある採食痕のうち、最大の穴を監視することにしました。 
イノシシの雪山での採食行動やねぐら入りの行動が撮れたら嬉しいです。 




山形県で一時期イノシシは絶滅していたのですが、再び戻ってきたようです。
多雪地帯でイノシシは冬を越せないだろうと言われていたのですけど、積雪がそれほど多くなければ、雪山でも自力で掘り返して採餌できることを確信しました。
今季は異常な暖冬で、積雪量が少ないです。
山形県では冬の豪雪がイノシシやシカの進出を阻んできたのに、このまま地球温暖化が進行すれば、イノシシの分布域はさらに北上し、当地でも越冬するイノシシの個体数が増えるはずです。
そうなれば、他の地域(暖地)と同様に農作物の食害が深刻になる、と予想できます。
このまま手をこまねいて温暖化を食い止めなければ、将来は獣害対策という形でも莫大なコストを払う羽目になりそうです。(しっぺ返し)



【アフィリエイト】 

ランダムに記事を読む