2023/09/28

早春の刈田で採食するキジ♀の群れの上空をトビが飛ぶと…(野鳥)

 

前回の記事(1.5ヶ月前の撮影):▶ 白銀の雪原を歩くキジ♀3羽の群れ(冬の野鳥)


2023年3月下旬・午前8:40頃・晴れ 

残雪が完全に消えた刈田をキジ♀(Phasianus versicolor)の群れが歩き回っていました。 
地味な羽根色は見事な保護色で、枯野で立ち止まると見失いそうになります。 
私に対する警戒を解くと、刈田を歩きながら地面を啄んで採食し始めました。 
落ち穂拾いをしているのでしょうか?


しばらくすると、キジ♀は刈田に隣接する土手を慎重に登り、用水路のコンクリート護岸の縁まで出て来ました。 
そして次々に飛び立つと、幅3m弱の用水路を飛び越えて隣の刈田に移動しました。 
群れの規模が分からなかったのですが、少なくとも5羽のキジ♀が飛んで横切りました。 
飛んだ行き先を見失ってしまいました。 

キジ♀が飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:09〜) 
足を深く屈めてジャンプしながら力強く羽ばたいて飛び立ちます。 
最後の個体はコンクリート護岸を助走しながら飛び立ちました。 
離陸後は足を体に引き付けて空気抵抗を減らしています。 

もしかすると、しつこくカメラを向けて撮影する私を警戒して逃げたのかと思ったのですが、田園地帯の上空を見上げるとトビMilvus migrans)が黙って(鳴かずに)帆翔していました。 

※ トビの飛翔シーンでは、翼の下面の斑紋が見分けられるように逆光補正を施しました。 

トビの食性は主に死肉食(スカベンジャー)とされていますから、キジ♀がトビに襲われる心配はないはずです。 
それでもキジ♀は上空に飛来した猛禽を警戒して、開けた刈田から物陰に逃げ込んだ可能性もありそうです。 
田畑の農作物を鳥の食害から守るための防鳥グッズの一つとして、最近タカに擬態した凧が市販されています。


関連記事(4、5年前の撮影)▶ 


これが宣伝通りの防鳥効果があるのであれば、今回のキジ♀も上空を飛ぶトビの姿を見て逃げ出しても不思議ではありません。
しかし映像を見る限り、キジは上空を見上げず、警戒声も発しませんでした。 
「キジも鳴かずば打たれまい。」 

 一方、キジ♂は♀と行動を共にせず、刈田のどこかでケンケーン♪と鳴く声だけ聞こえました。 
午前中からよく晴れて、地面から陽炎が立ち昇っています。 

※ 用水路の幅を測定すること。 


【追記】
鳥の音声言語を研究している鈴木俊貴氏によると、シジュウカラは天敵のタカが飛来すると「鷹だ警戒しろ!」と警戒声を発するのに、トビが飛来しても平気なのだそうです。
つまり被捕食者の小鳥は猛禽類の中でも種を見分けて適切に反応しているらしい。
キジの場合はどうなんでしょう?


↑参考動画:【タカは怖いがトンビは平気】動物言語学者あるあるが狭すぎるwww by ゆる言語学ラジオ

トビ(野鳥)@帆翔(逆光補正)

2023/09/27

雪山でニホンカモシカの溜め糞場を発見!

 

2023年3月下旬・午後12:25頃・晴れ 

この冬の目標は、ニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場を見つけることです。 
雪山に登る度に足跡を辿ってみたのですが、一度限りの脱糞跡しか見つかりませんでした。 




里はもう雪がほとんど溶けて早春ですが、入山すると未だ残雪が深いです。 
雪崩に埋もれた渓谷を監視するトレイルカメラの様子を見に来たら、隣接するスギの植林地で大量のカモシカの糞を雪面に見つけました。 
これまで気づかなかったということは、溶けた雪の下からカモシカの古い糞が現れたのでしょうか? 

ザラメ状の雪面にはスギの落葉落枝が散乱しています。 
カモシカの足跡は不明瞭でした。 
スギの木の下で少しずつ位置をずらしながら、カモシカは少なくとも3〜4回は排便していました。
冬は糞虫やハエなどの分解者が全く活動しないので、野生動物が排泄した糞は溜まる一方です。
ニホンカモシカの新鮮な糞粒はつやつやした真っ黒ではなく、緑色がかっています。 
ユキツバキやエゾユズリハなど何か常緑樹の灌木の葉を食べた後なのでしょう。 
古い糞粒は褐色(茶色)になります。 
採寸代わりに、熊よけスプレー(長さ20cm)をそれぞれの溜め糞の横に並べて置きました。 

カモシカが本当に排便しに通ってくるかどうか確認するために、早速ここにトレイルカメラを設置してみましょう。
ニホンカモシカは基本的に群れを作らず単独で暮らしています。
タヌキのように複数個体が溜め糞場srを共有しているのか、それとも同一個体が繰り返し使っているのか、という点にとりわけ興味があります。 
雪崩谷が危険で渡れなくなったので、立ち往生したカモシカが縄張りの境界に排便するようになったのかもしれません。


関連記事(1、2ヶ月前の撮影)▶ 


もしかすると、カモシカはここで寝ている(ねぐら)かもしれない、という可能性も考えられます。  
カモシカの排泄行動は、小便する様子を実際に観察したことがあります。 
排便シーンが未見なので、なんとか自動センサーカメラで撮影してみたいものです。 



雪解け水の池でヤマアカガエルの卵塊の傍を泳ぐミズカマキリ♀

 

2023年3月下旬・午後14:00頃・晴れ 

里山の雪解け水が貯まった池でヤマアカガエルRana ornativentris)の卵塊を調べていたら、池の水中を泳ぐミズカマキリRanatra chinensis)を見つけました。 
越冬明けの個体が飛来したのかな? 
『フィールド版ため池と水田の生き物図鑑:動物編』でミズカマキリについて調べると、
越冬は水中で、ミズカマキリは集団で越冬すると言われているが実際に観察されることはまれである。(p88より引用)
水生昆虫に疎い私は、生きたミズカマキリをフィールドで見つけたのはこれが生まれて初めてで、歓喜しました。 
池畔は残雪で囲まれ、水面には太陽が反射して眩しいです。 
雪解け水の貯まった池の水温は低いはずです。


この池でヤマアカガエル♀♂の繁殖行動をタイムラプス撮影するプロジェクトは、いまいち納得の行く結果を得られませんでした。
がっかりしたものの、この日はミズカマキリと出会えた喜びで帳消しになりました。

初めミズカマキリは私を警戒して身を隠そうとしているのか、ヤマアカガエルの卵塊の下に潜り込もうとして、もがくように泳いでいました。 
手足にオール状の構造がないため、泳ぎはあまり得意ではなく、水中で手足をゆっくり動かすだけです。 
中脚と後脚は長毛を有し、中脚と後脚で器用に水を掻いて潜水し、水中を遊泳する。(同書p88より引用)
潜水中は腹端から伸びた呼吸管の先端を水面に出して、ときどき息継ぎしています。 
これぞまさに忍法「水遁の術」。 
呼吸管を根元から曲げることができます。 

ゼラチン質の卵塊の下からなかなか浮上できず溺れそうになっているのか?と心配になったものの、ようやくミズカマキリはヤマアカガエル卵塊の上に脱け出しました。 
水面で卵塊に乗って静止し、獲物を待ち伏せするのかな?(日光浴?) 
岸辺は枯れた草の茎が水中に沈んでいるため、細長い体型で黄土色(枯草色)のミズカマキリがじっと静止すると見事なカモフラージュになっています。 

ミズカマキリが再び動き回っても、近くで背泳するマツモムシは無反応でした。 
互いに狩り(捕食)の対象ではないようです。
ミズカマキリは前脚の鎌でマツモムシを狩ることはなく、蹴散らすようにして水中を進みます。 
水中ではミズカマキリの右前脚の鎌が途中から欠損しているように見えたのですけど、ただ折り畳んでいるだけでした。 

少し離れたところにヤマアカガエルの♂成体がいました。 
岸の方を頭を向けて水面に浮かび、産卵に来る♀を待ち構えています。 
ヤマアカガエルがミズカマキリに跳びついて捕食するかと期待したのですが、繁殖期のヤマアカガエル♂は「食い気より色気」なのでしょう。 

日当たりの良い岸辺にヤマアカガエル♀が最近産み付けた個々の卵内では黒い胚が発生しつつあります。 
ミズカマキリが岸辺のヤマアカガエル卵塊に執着しているように見えたのはたまたまでしょうか?
個々の卵内で育つ黒い胚または孵化した幼生(オタマジャクシ)を狩って体液を吸汁するつもりなのかもしれません。
ところが、しばらく粘って観察しても、捕食の確証を得られませんでした。 
タピオカドリンクのような卵塊を散々吸汁した後で満腹なのかな? 
動きのない胚は獲物と認識できないのでしょうか。 
実はこの池の岸辺に沿ってヤマアカガエルの卵塊がいくつも産み付けられていて、既に幼生が孵化した卵塊もありました。 
ミズカマキリがオタマジャクシを捕食したいのなら、そちらに向かうはずです。 

眼は上を向いており、アメンボ類のような水面上の小動物を待ち伏せて捕食する。(同書p88より引用)




1枚目は水中の潜水シーン
2〜4枚目は水面に浮かぶミズカマキリ
潜水中に呼吸管で息継ぎ

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