2023/06/15

ベッコウバエ♂の配偶者ガード:横恋慕するあぶれ♂を足蹴にして撃退

 



2022年11月上旬・午前11:55頃・くもり 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場dで繰り広げられる ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)の配偶行動が面白くて観察しています。 

糞塊の横でイタヤカエデの黄色い落ち葉に「あぶれ♂」が乗っていて、交尾相手の♀が溜め糞に飛来するのを待ち伏せしています。 
そのあぶれ♂が翅を半開きにピクピク動かすようになり、目の前で交尾していた♀♂ペアに跳びつきました。 
あぶれ♂は目の前で動くものに対しては、とにかく何にでも飛びついてみるようです。(誤認求愛) 

実は、このイタヤカエデの落ち葉に乗っていた個体は腹背が黒っぽかったので、てっきり♀だと初めは思い込んでいました。 
ところが、横から見ると黄色がかっていて、黄色の毛があまり密生していない♀♂中間型の個体でした。 
その後の行動を見る限り、♂で間違いなさそうです。 
♂なのに♀のふりをして油断させつつ交尾のチャンスを狙うスニーカー戦略の♂だとしたら面白いのですが、どうでしょうか? 

溜め糞に居る交尾ペア♀♂aをよく見ると、実際には交尾器を結合していない状態でマウントを続けており、配偶者♀をライバル♂bから守っている(交尾後ガード)、と表現するのが正しいです。 
♂が自分の遺伝子を確実に次世代に残すためには、交尾した♀が産卵するまで他の♂と浮気しないようしっかりガードする必要があるのです。
実際に、♂aは♀にマウントしながら中脚を伸ばしてあぶれ♂bが配偶者♀に近寄らないよう牽制し、強引に飛びかかってきたら蹴って撃退しました。 

足蹴にされたあぶれ♂bはあっさり諦めて、横のイタヤカエデ落ち葉にすごすごと戻りました。 
交尾中のペアに割り込んで♀を強奪することはありません。 
体格を比べると、今回は交尾後ガードをしている♂aがあぶれ♂bに勝っていました。 
もしもあぶれ♂の方が体格が大きければ、♀を奪い取って交尾できるのでしょうか? 
(私は♀の強奪シーンを未だ一度も見たことがありません。)

つづく→

2023/06/14

秋のスギ林道でトレイルカメラに興味津々のホンドギツネ【暗視映像】

 

前回の記事(10ヶ月前の撮影)▶ 雪山の杉林を歩くホンドギツネ【トレイルカメラ】 


2022年11月中旬・午前4:45および午後18:45 

里山のスギ林道に設置した自走撮影カメラにホンドギツネVulpes vulpes japonica)が久しぶりに写りました。 
カメラの真下で立ち止まり、興味津々で見上げたり、頻りに風の匂いを嗅いだりしています。 
常連のタヌキと比べてキツネはかなり痩せて見えます。 
耳の先が三角形に尖っていて、尻尾は長く先端部は黒っぽい。 
タヌキの溜め糞場sには興味を示さず、そのまま左に立ち去りました。 

14時間後にも同一個体と思しきキツネが逆から再登場。 
通りすがりに溜め糞sの匂いをちょっと嗅いだだけで、林道を左から右へ早足に通り過ぎました。 



イタヤカエデの葉は自励振動しやすい?

 

2022年10月上旬および11月上旬

野外でときどき、植物の葉がずっと揺れ続けているのを見かけることがあります。 
風が吹いて植物の群落全体がザワザワと揺れるのは珍しくありませんが、枝葉の中で1枚だけ(あるいはごく小数)揺れるのが気になります。 
幼少時はこれを見て不気味に思ったり怖かったりしたのですが、この現象は自励振動と呼ばれます。 
葉柄に弾性があるために、力が加わると振動するのですが、ある角度で一定の微風を与えると振動が減衰しなくなります。
一定のリズムで強弱をつけた風が吹いている訳ではないという点がポイントです(非振動入力が振動に変換される)。
理屈が分かれば何も怖くありません。

自励振動の動画を撮り溜めたら面白そうと思い、野外で見かけたら撮るようにし始めました。 
まだサンプル数が少ないので偶然かもしれませんが、イタヤカエデの葉がよく自励振動するようです。 


シーン1:10月上旬 
峠道の横に自生するイタヤカエデの木で、枝先についた緑の葉の1枚だけが規則正しく左右に振動しています。 
この1枚だけ、受風面の角度が自励振動の発生条件に合致しているのでしょう。 
その葉には、虫食い穴(食痕)がありました。 


シーン2:11月上旬 
1ヶ月後、山中で(スギ林の林縁で)黄葉したイタヤカエデが秋風に吹かれて自励振動していました。 
枝についたままの黄葉の中で、特定の数枚だけ規則的に揺れ続けています。 

イタヤカエデの葉は特に自励振動しやすい形状なのでしょうか? 
おそらくそうではなくて、色々な向きに葉が付いているために、どれかは風の向きに同期してしまうのでしょう。 
他の植物でも自励振動する例を今後も動画で記録してみるつもりです。 

子供の頃に昔話や民話を読んでいたら、葉っぱの自励振動現象を引き起こす妖怪が登場したと記憶しています。 
今となってはその妖怪の名前を思い出せず、ネット検索しても出てきません。 
何かご存知の方(民俗学者?)がいらっしゃいましたら、教えてください。 
科学が未発達な時代でも、不思議なことがあったら何らかの説明をしないと納得できず不安になります。
民俗学的あるいは宗教学的な説明というのは、不安解消のために必要だったのでしょう。
例えば、皮膚がいつの間にか切れているのに血も出ないという謎の怪奇現象を説明するのに、「かまいたち(鎌鼬)」という想像上の妖怪を作り出したのは秀逸だと思います。


 

▲解説動画 
【身近な科学】地縛霊のせい?勝手に揺れる葉っぱの秘密を解説!【自励振動】 / 米村でんじろう[公式]/science experiments

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