チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)幼虫(ミールワーム)の餌を発泡スチロールのみに切り替えてから80日目。
ミールワームの一部は未だ生きています。
生存者の食事シーンをマクロレンズで接写してみると、発泡スチロールではなくて、仲間の死骸を食べていることが明らかになりました。
ミールワームは手足が未発達なので、食べている死骸がうまく押さえられずに動いてしまいます。
耳を澄ますと、カリカリ♪と咀嚼音を立てたりパチン♪と噛み切る音がかすかに聞こえます。
栄養失調を死骸で補っているのでしょう。
成虫に育つどころか、いつまで経っても蛹も出てこないのは、すぐに共食いされてしまうからなのかもしれません。
通常は「ふすま」を給餌するだけでミールワームを簡単に継代飼育できます。
しかし発泡スチロールではミールワームを継代飼育できない、というのが私の結論です。
発泡スチロールに虫食い穴も期待した程は出来ていませんでした。
以前、唐揚げを食べた後の骨を与えたときのミールワームの食いつきの良さとは大違いです。
関連記事(12年前の撮影)▶ ミールワームによる骨のクリーニング実験
素人実験をしてみた結果、ミールワームが発泡スチロールを食べるという話に対して私は懐疑的のままです。
実験失敗(期待外れ)の原因を検討してみましょう。
原著論文をもう一度斜め読みすると、ミールワーム幼虫が死んだら直ちに飼育容器から取り除くべきでした。
飼育した室温が低くて腸内細菌がポリスチレンをうまく分解できなかったのかもしれません。
あるいは、私がペットショップで購入したミールワームの継代株には、たまたまポリスチレンを分解できる腸内細菌がほとんど居なかった可能性も考えられます。
近親交配を繰り返していますから、 系統によって形質が微妙に変わっていることはあり得ます。(近交弱勢)
ミールワームのブリーダーが良かれと思ってミールワームの餌(ふすま)に抗生物質を混ぜたりしていたら台無し(腸内細菌は全滅)です。
この実験を追試するならば、あちこちの店で別系統のミールワームを買い揃えるべきでした。
お子様の夏休み自由研究のテーマに、いかがでしょうか?
ミールワーム幼虫は他の肉食性小動物の生き餌として使われます。
昆虫食ブームの昨今では、ヒトの食用にも供されるようです。
ミールワームの餌代をケチって発泡スチロールだけを与えて育てたミールワームを他の小動物の餌にしては駄目でしょう。
未消化のポリスチレンを一緒に食べてしまうことになるからです。
この研究は眉唾(フェイクニュース?)だと私は勝手に決めつけて、動画もお蔵入りにしていたのですが、最近になって研究が進展したとネットニュースで知りました(続報)。
この分野の研究者たちはしつこく追求していたのでしょう。
関連サイト@ナゾロジー:発泡スチロールを食べられるスーパーワームを発見!ミールワーム(Tenebrio molito)とは別種のスーパーワーム(Zophobas morio)も同様に発泡スチロールを食べて分解できると分かったそうです。
今後の研究の流れとしては、ミールワームよりもその腸内細菌が持つ分解酵素の研究になるでしょう。
活性の高いポリスチレン分解酵素が単離できれば、大量廃棄された発泡スチロールをゴミ処理場で分解できるようになると期待されます。
そもそも、ミールワームが発泡スチロールを食べるという奇想天外な発見はどのように生まれたのでしょう?
ペニシリンの発見のようなセレンディピティかな?と私は秘かに予想しています。
動物虐待の残酷な実験だとか飼育放棄(ネグレクト)、多頭飼育崩壊などと安易に非難されるのを恐れてか、論文には詳しく書いてませんでした。
実用化まで漕ぎ着けたら、誰も文句を言わなくなるでしょう。