2021年10月下旬・午後12:30頃・くもり
里山の尾根道に残されたホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞cで久しぶりに新鮮な糞が追加されていました(標高約520m地点)。
関連記事(52日前の撮影)▶ 山道の溜め糞を匂っただけで通り過ぎるホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】
未消化の種子が多数含まれています。
個々の溜め糞を長期間定点観察してみると、季節消長というか栄枯盛衰があり、使われなくなる時期があったり復活したりすると分かりました。
おそらく当地のタヌキは生息密度が低く、利用できる餌資源の季節消長に応じてタヌキの活動域が変化するのだろう、と推測しています。
この日は常連客のベッコウバエの他に、意外な珍客も溜め糞に来ていました。
糞食性のコオロギがいるとは知らなかったので、驚きました。
まず、産卵管が無いので♂と分かります。
胸背や前翅が白っぽく、左右の複眼を結ぶ頭頂部の白線が目立ちます。
図鑑で調べてみるとモリオカメコオロギ♂(Loxoblemmus sylvestris)と判明。
左の触角が根元から欠損した個体でした。
【参考サイト】
モリオカメコオロギとハラオカメコオロギの同定用比較写真
糞の中にゴロゴロと含まれる未消化の種子よりもコオロギの頭部は小さいので、種子をかじってもツルツル滑って歯が立ちません。
種子食と呼ぶのは不正確かもしれません。
種子の表面に付着した糞を舐めていると言うべき?
あるいは小さな種子を食べているのでしょうか?
近縁種ハラオカメコオロギで食性を調べると、
昼間、草の根際に潜み、夜になると出歩いて餌を探す。雑食性で、植物の実や葉、小動物の死骸などを食べる。(wikipedia:ハラオカメコオロギより引用)
飼育下でモリオカメコオロギ♂の鳴き声を聞いたり糞食性を調べるために、採集して持ち帰りたかったのですが、この日はあいにく採集容器や袋を何も持ち合わせていませんでした。
▼関連記事(9年前の撮影:飼育個体)
ハラオカメコオロギ♂:鳴き声♪の声紋解析コオロギの他には白いウジ虫(ハエの幼虫)や小型のハネカクシ類、アカアリ(種名不詳)が溜め糞の上を徘徊していました。
雑食性のタヌキは果物(液果)を食べた後に移動し、縄張り内の溜め糞に排泄することによって植物の種子散布に協力しています。
そんな教科書的な話には続きがあって、未消化の種子を食べようと様々な生き物がタヌキの溜め糞にやって来るというのは面白いですね。
この場合、モリオカメコオロギ♂は植物にとって種子捕食者になります。
溜め糞をめぐる生態系の奥深さをまた1つ実感しました。
タヌキの糞には色とりどりの種子が消化されないまま含まれているので、これを本格的に調べてみるのも楽しそうです。(溜め糞調査の王道)
この尾根道沿いにはあちこちでコブシが赤い実をつけていて、落果も見つけました。
タヌキが通りすがりにコブシの果実(落果)を食べていても不思議ではありませんが、独特の形状をしたコブシの種子は糞に含まれていないようです。(パッと見の印象)
あるいはホオノキの種子かも?
黒くて小さい種子はアケビかな?と想像するものの、ちゃんと調べていません。