2015年9月下旬
トリノフンダマシ♀の定点観察#14
卵嚢から脱出したトリノフンダマシ(Cyrtarachne bufo)幼体は各自が糸を引きながら分散し、後続の個体は綱渡りしています。
出嚢したばかりの幼体は、色形ともに成体とは似ても似つかぬ状態です。
脱出した幼体を接写すると、腹部はオレンジ色がかった褐色系で頭胸部は灰色、腹部腹面は黒っぽいです。
単眼付近は橙色っぽいです。
翌日になっても飼育容器内で幼体は集合せず
長時間の微速度撮影してみれば分散の挙動がよく分かったかもしれません。
容器に閉じ込められても共食いしている様子はありませんでした。(私が気づいていないだけ?)
野外の自然状態では直ちにバルーニングで分散するのですかね?(蜘蛛の子を散らす)
何匹の幼体が出嚢したのかカウントすべきなのですが、面倒でやっていません。
※ 冒頭の出嚢シーン(@〜00:30)のみ動画編集時に自動色調補正を施しています。
さて、採集した3つの卵嚢でちょっとした実験をしています。
近縁種オオトリノフンダマシの場合、卵嚢内の幼体は重力に逆らって上に向かい、卵嚢が置かれた向きに応じて上部に脱出口を開けるのだそうです。
今回私も真似をして、採集時の自然状態の向きに対して正立、倒立、横向きと3つの条件でトリノフンダマシの卵嚢を容器内に固定しました。
意外なことに、この記事を書いている現在(12月下旬)も、残る2個の卵嚢から幼体は孵化していません。
このまま室内で越冬するのでしょうか?※
それともオオトリノフンダマシの卵嚢とは異なり、トリノフンダマシでは正立条件以外(倒立、横倒し)では卵嚢内の幼体が脱出できなくなり死んでしまったのでしょうか?
トリノフンダマシとオオトリノフンダマシでは卵嚢の形状が違いますから、実験結果が違っても不思議ではありません。
春まで様子を見守ることにします。
※『クモ生理生態事典 2011』サイトでトリノフンダマシの項を参照すると、
関東では9月に成体,中旬に産卵,産卵後3週間をして出のう,2令幼体で越冬(椿の葉裏など).(中略)10月24日に出のうした幼体雄は翌年4月18日,5月20日に脱皮.
つづく?
【追記】
本種の幼体を飼育したことは未だありませんが、造網せずに捕虫するらしい。
『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化のなぞを探る』第3話 池田博明「似てない親子」p21によると、
親になると網を持つという例があります。コガネグモ科のトリノフンダマシの仲間がそうです。この仲間は夏の夜に独特な網を張りますが、幼体や♂の網は知られていませんでした。(中略) 幼体は夕方暗くなるころから活動を開始し、ユズの葉のへりに移動してきます。そこで第4脚で葉のへりを、第3脚で葉の表面をおさえ、第1・第2脚を大きく広げて、飛んでくる羽虫を抱き込むようにつかまえるのです。♀の亜成体や♂も同じようにして捕虫します。(中略)コガネグモ科では幼体の時期に網を持たないで捕虫するクモが何種類か知られています。
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