2011年9月下旬・気温18℃→14℃
日当たりの良い南に面したコンクリート壁面に身重のオオカマキリ♀(Tenodera aridifolia)が午後の間中じっと止まっていました。
いかにも産卵しそうな予感がしたので気を付けて様子を見ていると案の定、夕方から下向きで白い卵鞘を泡立て始めました。
産卵地点は地上〜80cmですぐ上には庇があり雨が降っても濡れない位置にあります。
虫にとってよほど産卵に適した条件を備えているのか、すぐ隣にはナガコガネグモ♀の産み付けた褐色の卵嚢がぶら下がっています。
5年前に飼育下でオオカマキリが卵鞘を作る様子を動画に撮りました。
フィールドで一部始終を観察する機会に恵まれたのは初めてです。
いよいよ最近習得したインターバル撮影の出番です。
カメラを三脚に固定し、3秒間隔で連続写真を撮り始めました。
今回は産卵基質が堅牢なコンクリートなので、風がいくら吹いても揺れる心配が全く無く、助かりました。
日が暮れて暗くなってきたら懐中電灯で照らしながら撮影を続けました。
ライトを固定する用意がなかったので、手持ちで長時間照らし続けました。
しっかり固定しないと、動画では照明がちらちら動いて少し見苦しいですね。
映像では見切れていますが、終盤に辺りを徘徊していた一匹のアリが卵鞘作りで忙しいオオカマキリ♀の頭部にまで上がってきました。
複眼の辺りを這い回っても♀はしばらく反応しませんでした。
産卵中は無我の境地なのかと感心していたら、さすがに最後は鎌で払いのけました。
卵鞘が完成し18時過ぎに撮影を打ち切った頃にはすっかり冷え込みました。
大量の連番写真を素材に20fpsで編集ソフトVirtualDubに取り込み、約2時間半の産卵行動を60倍速の映像に仕上げました。
【追記】
卵鞘は一般的に卵の収まっている房室部と空気を取り入れる薄膜とがあり、上方末端に孵化時の脱出口となる部分がある。(『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p94より)
さて、雪国の伝承を実証した「カマキリの積雪予想」が越冬戦略として話題になったことがあります。
オオカマキリ♀は来る冬の積雪量を予想して、雪に埋もれない高さに卵鞘を産み付けるというのです。
著者のフィールドワークと情熱に敬意を表すものの、私は個人的にこの説に懐疑的です。
今回の卵鞘が一つの反例になりそうだと考えています。
- オオカマキリ♀が人工物を産卵基質とするケースが結構多いことを著者の説では説明できません。この日も木造家屋の高い軒下に別なオオカマキリの卵鞘を見つけました。
- 当地は豪雪地帯なので、今回の卵鞘@コンクリート壁面も地上80cmの高さでは根雪で埋もれるだろうと予想されます。実際にそれを確認し、それでも春に無事オオカマキリ幼虫が孵化することを見届ければ反例になるでしょう。
今後の定点観察が楽しみです。
【追記】
残念ながら、この卵鞘は初冬までにその一部を天敵に食害されました。
カツオブシムシ(カマキリタマゴカツオブシムシ)の仕業と思われます。
すっかり雪に埋もれて冬を越し、春になるとコンクリート壁面から剥落して地面に落ちているのが見つかりました。
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