2012年5月下旬・気温16℃
里山の小さな湿地(沼)で、岸辺に生えたマユミの枝に毎年モリアオガエルの泡巣が鈴なりに作られます。
積年の宿題だった抱接と集団産卵をようやく観察することができて感無量です。
山形県では準絶滅危惧種に指定されているらしい。
山渓ハンディ図鑑9『日本のカエル』p130によると、
(モリアオガエルの)♀は産卵しながら、卵塊を膀胱に貯めておいた水といっしょに後脚でこねながら卵を乾燥から防ぐ泡巣を作る。
ここの個体群は体色にバリエーションはあるものの、ほぼ全身が緑色で斑点模様が目立ちません。
集団の中央に見える大型の個体が♀と思われます。
一つの泡巣で産卵に参加している♀は一匹なのか複数なのか、知りたいところです。
wikipediaによれば、
繁殖期になると、まずオスが産卵場所に集まり、鳴きながらメスを待つ。メスが産卵場所にやってくるとオスが背中にしがみつき、産卵行動が始まるが、卵塊の形成が進むに連れて1匹のメスに数匹のオスが群がる場合が多い。
泡巣作りに集まったモリアオガエルは間欠的に鳴きながら、後脚を動かして泡立てます。
鳴くときは喉が膨らみます。
観察していると、集団で鳴くリズムは各個体がバラバラです。
揃えて斉唱することはないようです。
鳴き終わりと同時に泡立て運動も止まり、しばらく休みます。
ヒキガエルの蛙合戦とは異なり、♂の鳴き声にリリースコールの意味は無いようです。仲間の鳴き声に誘われて辺りから馳せ参じるのでしょう。
しかし♂は互いにライバルのはずなのに、一体なぜ鳴いてわざわざライバルを呼び寄せるのか不思議に思いました。
泡の中で激烈な精子競争が繰り広げられているはずですから、ライバルが少ないうちに黙ってこっそり♀と抱接し受精させた方が得策な気がします。
何匹か集まって協力しないと大きな泡巣が作れないのだろうか?
鳴き声に惹かれて次の♀が来てくれることを期待している、というのが最も合理的な説明でしょうか。
抱接するカップルを中心に、あぶれ♂が周りでスクラムを組み、おしくらまんじゅうをしています。
体は粘液でヌルヌルしているはずなのに互いに滑り落ちないのは指先の吸盤のおかげでしょう。
集まった♂同士の争いがほとんど見られないのが非常に印象的でした。
ライバルの♂を蹴飛ばし合うヒキガエルの蛙合戦と比べれば、平和そのものです。
それでもよく見ていると、周辺部の♂は互いに位置取りを変えています(陣取り合戦)。
体外受精に有利なように、少しでも中心の♀に近づこうとしているのでしょう。
泡巣作りと集団産卵から離脱して枝を登って行く個体が時々います。
あぶれ♂が周辺部のおしくらまんじゅうに疲れ諦めたのかな?
産卵を終えた♀が離脱したのかと初めは思いました。
ところが、鳴きながらの泡立て行動が活発になると再び戻って来て「飛び入り参加」したので、やはり未練がましいあぶれ♂なのでしょう。
時間経過と共に、泡巣の下部が褐色に変化してきました。
ストロボを焚くと夜のような雰囲気に |
モリアオガエルの目の虹彩は赤褐色。 |
ヤブ蚊に食われながら夢中で動画を長々と撮ってはみたものの、どのように編集すべきか困りました。
結局、素材をそのまま繋いだだけで公開します。
長いので前編、後編に分けました。さすがに全編通して見てくれる人も少ないと思いますが、環境ビデオ(BGV)として眠れない夜にお酒でも飲みながらボーッと眺めるのも悪くないと思います。
次回は三脚を立てて微速度撮影にも挑戦してみたいと思います。
モリアオガエル泡立て行動の鳴き声を声紋解析したかったのですが、バックグランドのピンクノイズ(他の生物が立てる声)が多過ぎて訳が分からなくなりそうで止めました。この沼ではトノサマガエルなど別種のカエルも盛んに鳴いている他、野鳥の鳴き声もひっきりなしに聞こえます。
静かな飼育下で録音するしか方法が無いのかなー?
(つづく→オタマジャクシの孵化)
森哲『シマヘビのあの手この手の餌捕り法』によると、
昼間(スダジイの)樹冠で休んでいたモリアオガエルは、夕方になると枝伝いに跳ね降りながら人工池へ向かう。夜明けが近づくと、幹や枝を登って樹冠へ戻る。 (ポピュラーサイエンス『動物たちの気になる行動(1)食う・住む・生きる篇』p109より)
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