2025/01/26

根返りスギで年末年始に餌を探す雪国の小鳥たち:シジュウカラ、コガラ、ヤマガラなど【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 



2023年12月下旬〜2024年1月上旬 

シーン0:12/27・午後14:21・晴れ(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
平地のスギ防風林で風倒木が何本も長年放置されています。 
画面の右下手前から奥に向かって根こそぎ倒れた(根返り)スギの根際に掘られた巣穴bを自動撮影カメラで見張っています。 
そこにはニホンイタチMustela itatsi)が越冬していたのですが、最近ではなぜか姿を見かけなくなりました。 

今季は記録的な暖冬で、積雪が例年よりもはるかに少ないです。 
水平の細い別な倒木が朽ちて樹皮がどんどん剥がれ落ち、雪面に散乱しています。 

昼間に集まる小鳥たちの採食行動をまとめてみました。 
主にシジュウカラですが、少数のコガラやヤマガラなどを含むカラ混群のようです。 


シーン1:12/28(@0:03〜) 
シジュウカラ♀♂(Parus minor minor)の群れが根返りスギの土付き根っこをしきりに啄んでいます。 
そこで休眠越冬する昆虫を捕食しているのでしょう。 
チッチッ♪と鳴き交わす声もかすかに聞こえます。 


シーン2:12/29(@1:56〜) 
シジュウカラの群れ。 
ヒヨドリの鳴き声も聞こえましたが、姿は写っていません。 

 突然、監視カメラのレンズを覗き込んだ小鳥がいたのですが、あまりにも近過ぎて種類を見分けられませんでした。(@3:32〜) 


シーン3:12/30(@3:43〜) 
常連のシジュウカラの他に、コガラPoecile montanus)やヤマガラSittiparus varius)も来ているようです。 

根返りスギの土付き根っこを嘴でつつくシジュウカラたちの様子を、動画編集でゆっくりズームインしてみました。 
(最終的に1.5倍まで拡大)


シーン4:12/31(@8:09〜) 
珍しく、奥の残雪の上で餌を探すシジュウカラの個体がいます。 


シーン5:1/1(@9:34〜) 
翌日の元日には、雪解けが進んでいました。 


シーン6:1/2(@9:38〜) 
ヤマガラが来ています。 
珍しくフルカラーで録画されていました。 
トレイルカメラ旧機種の不安定な挙動に悩まされます。 


シーン7:1/5(@10:10〜) 
林床の積雪はほとんど溶け切っていました。 


シーン8:1/6・午前後(@10:11〜) 
これ以降は、監視カメラの電池が切れて、わずか1秒間しか録画してくれなくなりました。 
それでも健気に記録し続けるので、小鳥が来た記録にはなります。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


つづく→

2025/01/25

ホンドタヌキが越冬する営巣地の端で雪面や地面を転げ回って匂い付けするホンドギツネの謎【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月下旬〜3月上旬

シーン0:2/20・午後13:10・くもり・気温23℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する巣穴を自動センサーカメラで見張っています。 異常な暖冬で積雪量が少なく、あちこちで地面が露出しています。 少なくとも3つの巣口(左から順にL、M、R)が点在しています。 


シーン1:2/24・午後23:40・気温-4℃(@0:04〜) 
深夜に監視カメラが誤作動したようです。 
晴れて静かな夜でした。 
新雪が積もり、雪原を往来するタヌキなど野生動物の足跡が残されています。 


シーン2:2/25・午前4:01・気温-7℃(@0:07〜) 

シーン3:2/27・午前5:57(@0:11〜)日の出時刻は午前6:12。 
夜明け前にホンドギツネVulpes vulpes japonica)がまた左から現れました。 
フサフサした尻尾を水平にピンと伸ばして歩きます。 
雪面は固く凍結しているようで、キツネが歩いても足跡が残りません。 
タヌキの巣穴がある左をちらっと見ました。 

画面の右端で、落葉したオニグルミ樹上から垂れ下がったクズの蔓の下をくぐろうとしたキツネが、後足を滑らせたように見えました(スリップ?)。 
死角で見えないのですが、足で雪を後方に掻いたようです。 
凍った雪面で転んだのかと思ったのですが、どうやら雪面に体を投げ出して転げ回っているようです。 
右の死角から雪を後方に掻いたようです。
しばらくすると、キツネが右から戻ってきました。 
再び監視カメラの死角で雪面に寝転がったようです。 
立ち上がって、タヌキの巣穴を見ています。


シーン4:2/27・午前5:58(@0:50〜) 
約20秒後に同一個体のキツネが右から来て、手前をぐるっと回り込んでタヌキの巣口Lの横を通り過ぎました。 
次は巣口Mを覗き込んで匂いを嗅いでいます。 
再び巣口Lに戻ると、鼻面を浅く突っ込みました。 
驚いたことに、巣口Lの手前でキツネは腹這いになり、雪面に体を投げ出しました。 
おそらく匂い付けの行動なのでしょう。 
それとも、わざと物音を立てて巣内に潜むタヌキの動向を伺っているのかな? 
続けて雪原を右へ回り込み、巣口Rに向かいかけたところで、1分間の録画が打ち切られました。 


シーン5:2/27・午前6:00(@1:50〜) 
約25秒後に監視カメラが再起動すると、キツネは画面の右端で再び雪原に腹這いになっていました。 
立ち上がると、タヌキの巣穴の方を見て反応を伺っています。 
巣口Mに忍び寄り、中を覗き込みました。 
右奥の巣口Rに立ち寄りかけたところで、録画が打ち切られました。 

この間、巣内の主であるタヌキは一度も外に出て来ませんでした。
専守防衛の籠城作戦なのか、それとも留守にしているのかな?


シーン6:2/27・午後17:45・気温3℃(@2:50〜)日の入り時刻は午後17:32。 
同じ日の日没直後の様子です。 
昼間はよく晴れて雪解けが急速に進みました。 
林縁に近い手前の地面が完全に露出しています。 


シーン7:2/29・午前2:45・気温-1℃(@2:54〜) 
2日後の深夜に右からキツネが登場しました。 
画面の右端で、枯草に覆われた地面に転がって匂い付けをしています。 
この個体は前回とは違い、疥癬に感染して尻尾の毛がひどく抜け落ちて細く見える個体(細尾)でした。
細尾のキツネは立ち上がると、タヌキの巣口Mを点検してから巣口Lの匂いも嗅ぎ、最後は巣口Rの窪みに飛び込みました。 
驚いた野ネズミ(ハタネズミMicrotus montebelli)?)が巣口Rから飛び出してきたのか、枯野を走って逃げ回る獲物をキツネが追い回しています。(@3:25〜) 
この時期は気温がまだ氷点下なので、休眠越冬中の昆虫が逃げ出したという可能性は除外できそうです。 
監視カメラの赤外線があまり届かないぐらい遠くて暗いです。 
動画を自動色調補正して拡大しても、逃げ回る獲物の正体が見えずに残念でした。 
狩りの成否は不明です。 
細尾キツネは、身震いしてから右に立ち去りました。 


シーン8:2/29・午前4:10・気温-1℃(@3:47〜) 
約1時間半後に、細尾のキツネがタヌキの営巣地に戻ってきました。 
画面の右端で地面を何度も転げ回っています。 
立ち上がると身震いしてから画面手前を通って左へ立ち去りました。 


シーン9:3/2・午前1:41・気温-3℃(@4:05〜) 
2日後の吹雪が降き荒れる深夜に、キツネがまた現れました。 
新雪が積もった雪面に新しい足跡が残っているのに、そのシーンが監視カメラに写っていません。 
どうやら奥から右下手前へ来たばかりのキツネの足跡のようです。 
やはり熱源が画面の前後方向に動くと、トレイルカメラのセンサーは反応しにくいようです。 

画面の右下隅の雪原でキツネが転げ回っていました。 
立ち上がったキツネは、尻尾がふさふさの健常個体でした。 
身震いしてから左へ立ち去りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
キツネが地面で何度も転げ回る行動は初めて見ました。 
キツネ関連の書籍でも読んだことがありません。 
しかし、飼い犬が散歩中に気に入った匂いが付いた地面で興奮したように転げ回る行動はよく見られます。 
イヌ科の動物で見られるこのような行動は、英語でscent-rollingまたはperfume-rollingと呼ばれているのだそうです。(確立された訳語なし)

おそらく、雪面や地面の気に入った匂いをキツネが自分の身にまとうための匂い付けの行動と思われます。 
逆にキツネが自分の匂いを残して縄張り宣言をしたいのであれば、小便を排泄していたはずです(排尿マーキング)。 
体外寄生虫対策の砂浴びだとしたら、どこでやっても良いはずなのに、わざわざ特定の地点で繰り返す理由が説明できません。
監視カメラをもう少しだけ右に向けて設置し直し、この地点を重点的に監視すべきですね。 

後に私が現場検証しても分からなかったのですが、もしかするとこの地点にタヌキが大小便を排泄していたのかもしれません。 (営巣地の端の溜め糞場)
雪面や地面に残るタヌキの小便跡の上でキツネが転げ回り、体臭を偽装しようとしていた可能性があります。 

キツネがタヌキの巣穴を乗っ取ろうと企んでいるとしたら、寄主の巣穴に侵入する前に体表を化学擬態する社会寄生性の女王蜂や女王アリを連想しました。 
暗闇の巣内では、匂いさえ同化していれば侵入しても反撃されにくいはずです。 
近くのスギ防風林の中にあるタヌキの溜め糞場wbcでもキツネが転げ回って匂い付けしているかどうか、確かめたいところですが、撮影機材が足りません。

キツネの目当てはタヌキの巣穴という不動産物件ではなく、そこに居候している野ネズミなのかもしれません。
獲物に気づかれないよう、巣口に近づく前に自分の体臭を消してタヌキの体臭を身にまとったのかもしれません。

ホンドギツネの健常個体と疥癬個体が代わる代わる同一地点で転げ回り、匂い付けしたことは、大問題です。 
疥癬の原因となる体外寄生虫のヒゼンダニが健常個体にも移った可能性があるからです。
つまり、匂い転がりをする地点がヒゼンダニの温床になってしまいます。
雪国の冬なら宿主から離れたヒゼンダニは低温で死滅してしまうかな? (低温耐性が問題になります。)
キツネにとって疥癬という皮膚病は予後が悪く死に至る病なので、事態は深刻です。 
さらには、この営巣地で暮らすタヌキの家族にも疥癬が拡大しかねません。 
困ったことになりました。 

登場した2頭のホンドギツネは行動圏が重なっていますから、もしかすると♀♂つがいなのかもしれません。
この地点で興味深い匂いを先に見つけた健常個体が転がり行動をして匂いを持ち帰り、パートナーの疥癬個体(細尾)に情報伝達した可能性も考えられます。
キツネの家族が寝床を共有したり交尾するなどの濃厚接触でもヒゼンダニは感染を広げてしまいます。




【追記】
キツネが反応したのは、タヌキの小便跡とは限りませんね。
野ネズミも自分の営巣地の周辺の決まった場所に糞尿でマーキングすることが知られているらしい。
肉眼で現場検証しても分からなかったのですが、ブラックライトで紫外線を照射すると野生動物の尿は発光するそうです。
ビタミンB2(リボフラビン)という蛍光物質が含まれているためで、紫外線照射で発光するのは野ネズミの尿に限りません。

野外にトレイルカメラを設置すると野ネズミがよく写るのですが、私はこれまでマーキング行動(排泄)を観察したことがありません。
私がただ見過ごしているだけかもしれません。
野ネズミの排泄やマーキング行動時には、以下のような特徴的な姿勢が見られる可能性があります:
  1. 後ろ足で立ち上がる姿勢
  2. 尾を少し持ち上げる
  3. 体を少し前傾させる
  4. 短時間静止する
これらの姿勢は、尿や糞を正確に配置するために必要な体勢です。
以上、Perplexity AIと相談しながら追記しました。
次回からは、ブラックライトを持参してフィールドサインを探してみようと思います。(明るい昼間でも蛍光が見えるのかな?)

アナグマの溜め糞に集まり求愛と交尾拒否を繰り広げるベッコウバエ♀♂

 

2023年10月下旬・午後13:45頃・くもり 

平地のスギ防風林に残されたニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpを定点観察しています。 
秋になると、ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)が下痢便(軟便)状の糞塊に群がるようになりました。 
ベッコウバエの求愛・交尾拒否については、タヌキの溜め糞場でこれまで何度も(毎年のように)観察していますが、アナグマの溜め糞では初見です。 

ベッコウバエの性別を見分けるのは簡単で、配偶行動を観察するのに適しています。 
体長は♀<♂で、♀の腹部は黒いのに対して、♂の腹部は黄金色の剛毛で覆われています。 

泥状の糞塊の中を夥しい数のウジ虫が徘徊していました。 
ベッコウバエの幼虫も含まれているはずですが、キンバエやニクバエなど他種の幼虫も混じっているはずです。 
(私には幼虫の種類を見分けられません。)

溜め糞に居座る大型のベッコウバエ♂に注目して、その行動を動画撮影してみました。 
まるで「お山の大将」ですけど、実際には交尾できていない「あぶれ♂」です。 
交尾相手の♀を虎視眈々と待ち伏せしているのです。 
あぶれ♂は探雌求愛行動に忙しくて、獣糞を吸汁する暇がありません。 
溜め糞上でせかせかと歩き回り、ときどき立ち止まって身繕いします。 

ひっきりなしに翅を素早く開閉して斑点の斑紋を見せつけているのは、♀を誘引・誘惑するための求愛ディスプレイ(誇示行動)ではないかと思います。 
♂の翅を除去したり翅の斑紋(水玉模様)を改変したら、交尾の成功率が落ちるかどうか、実験したら面白そうです。

あぶれ♂は、近くに来る同種の個体に次々と飛びかかるものの、振られてばかりです。 
飛びつく相手の性別は問わず、とにかく誰にでも挑みかかります。 
ベッコウバエ♀♂の交尾は、早い者勝ち(スピード勝負)なのでしょう。 

♀の多くは既に交尾済みらしく、♂に求愛されても交尾を拒否し、振られた♂はあっさり諦めて離れます。 
一旦離れてから同一個体♀にすぐ再アタックすることもあり、また玉砕しました。 
近くで動くベッコウバエを見つけたら、♂はとにかく反射的に飛びついてしまうようです。 

ベッコウバエ♀による交尾拒否の意思表示が具体的に何なのか、私の知る限りでは解明されていません。 
おそらく胸部の飛翔筋を振動させるのではないかと、勝手に想像しています。 

ベッコウバエの♀は色気よりも食い気で、溜め糞上で吸汁や産卵に専念しています。 
ただし、ベッコウバエ♀の産卵行動を私はまだ実際に観察できていません。 
今回は時期が遅いのか、特徴的な形(扁平)をしたベッコウバエの卵は、アナグマの溜め糞上に見当たりませんでした。 
15日前に同所で定点観察した際には、ベッコウバエ♀が産み付けた大量の卵がニホンアナグマの糞の表面にまぶされてしました。(映像公開予定)

独身♂が他のあぶれ♂にも飛びついているのは、同性愛的な誤認求愛のように見えて、実はライバル♂を一番良い餌場から追い払っているのかもしれません。(闘争による占有行動) 

首尾よく交尾に成功した♂は、交尾後も♀にマウントしたまま配偶者ガードを続けて、ライバルのあぶれ♂から♀を奪われないように守っています。 
交尾中(あるいは交尾後ガード中)の♀♂ペアに対しても、あぶれ♂は構わず飛びかかります。 
しかし横恋慕しても♀の強奪に成功して交尾に至った例を私は見たことがありません。 

体格の小さなベッコウバエ♂は、♀を巡る♂同士の争いで不利なはずですから、サテライト戦略やスニーカー戦略を発達させても不思議ではありません。 
次回は小柄なベッコウバエ♂に注目して、その繁殖戦略をじっくり観察するのも面白そうです。


余談ですが、今回の記事を書くために調べ物をしているときに、ベッコウバエの学名がNeuroctena formosaではなく正しくはDryomyza formosaだとPerplexity AIから教えてもらい、訂正しました。
Neuroctenaという属名自体が後発異名で無効らしい。

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