2023/08/05

雪上のタヌキ溜め糞に群がるフユユスリカ?の謎

 

2022年12月下旬・午後14:00頃・晴れ

スノーシューを履いて山麓近く(標高〜320m地点)のスギ植林地を探索していたら、ザラメ雪の上にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場opを新たに見つけました。 
周囲の雪面にはスギの落枝や落ち葉が散乱していて、タヌキの足跡も多数残っていました。
新鮮な糞の中に植物の種子が少し混じっています。 
糞の下の雪が少し溶けて、雪を茶色に染めています。 
スギ林床には日がほとんど射さないので、太陽熱ではなく排泄直後の糞の体温のせいで雪が少し溶けたのだと思われます。 

この日は他の地点の溜め糞場も見て回ったのですが、根雪が積もった後なので、糞虫類はおろかハエ類も全く来ていませんでした。 
ところが、ここではタヌキの糞塊にユスリカの仲間が数匹集まっていたので、非常に驚きました。 

このユスリカは、獣糞の表面から吸汁しているのでしょうか? 
口元をマクロレンズで接写すべきでしたね。 
平凡社『日本動物大百科9昆虫II』を紐解いてユスリカ類について調べると、
成虫は摂食をしないものと考えられていたが、花の蜜の吸汁、飼育下で蜂蜜溶液などをなめるという事実の観察から、この考えは訂正された。実際、成虫の口器の形態は、液状の物質を摂取していることを明確に裏づけている。(p126より引用)
動画を注意深く見直すと、糞上を歩き回るユスリカが先の尖った腹端をチョンチョンと糞に付けていました。 
ユスリカ♂の触角はブラシ状に発達しているはずですから、♀が産卵しているのだと謎が解けました。 
孵化した幼虫が冬の間にタヌキの糞を食べてゆっくり育つのでしょう。

溜め糞の周囲の雪面を徘徊する個体もいますが、雪上は気温が低くて風もやや強いので、飛べないようです。 
現場で気温を測るべきでしたね…。 
厳冬期の雪上生活に適応するために翅を退化させた昆虫もいますけど、今回見つけたユスリカには翅があるので、晴れて暖かい日には普通に飛び回るのでしょう。

ネット検索で調べてみると、フユユスリカ属という名前からして魅力的なグループがいるそうです。

参考サイト:
フユユスリカは、フユユスリカ属に分類される体長4~5mmほどの小さなユスリカの仲間で、名前のとおり、冬になると川から羽化して成虫となります。

近藤繁生「深泥池のビワフユユスリカ(新称) Hydrobaenus biwaquartus について」ため池の自然 No. 37(2003) によると、
フユユスリカは、エリユスリカ亜科フユユスリカ属Hydrobaenus に含まれるユスリカで、わが国では、現在およそ30種の成虫が記録されている(佐々, 1998) が、幼虫については 4 種が知られているにすぎない(山本, 2001)。本属の幼虫は一般的に貧栄養の湖や河川の沿岸帯に生息し、休眠のため 2 令で繭を形成することが知られている。

 

ただし、今回はユスリカを採集してないので、しっかり同定した訳ではありません。
雪国の冬季(積雪期)に見かけたからと言って、フユユスリカの一種とは限らない? 
他の季節にタヌキの溜め糞場でユスリカを見かけないのは、一体なぜでしょう? 
ハエ類など優占種に追い払われてしまうのかな? 
フユユスリカが特に耐寒性を獲得した秘密も不思議です。 
捕食者(捕食性昆虫)の居ない冬季は生存に有利なのでしょう。 

ここ数年、タヌキの溜め糞場に集まる虫たちを重点的に観察してきたので、当地で見れる登場メンバー(「うんちレストラン」の常連客)はほぼ見尽くしただろうという自負がありました。 
それでもなお、観察する時期や時間帯を変えれば驚くような発見が未だ残っていて、自然観察は奥が深いとつくづく痛感しました。 

後日、この地点にトレイルカメラを設置して、本当にタヌキが排便に通ってきていることを確かめました。 









【追記】
どうやらタヌキ以外の動物の糞にも集まるようです。


2023/08/04

堅果給餌場の近くに野ネズミの巣穴を見つけた!

 



2022年12月中旬・午前11:30頃・晴れ 

これまで山林の斜面に立つカラマツの根元に様々な堅果(ミズナラのどんぐり、オニグルミ、クリ)を給餌して、野ネズミ(ノネズミ)が貯食のために持ち去る様子をトレイルカメラで記録してきました。 
餌場から堅果を運んで行った野ネズミがときどき左斜面のシシガシラ群落の下に隠れて長居してました。 
どうやら巣穴(または隠れ家)がありそうなので、その辺りを探してみることにしました。 

シシガシラ(常緑のシダ植物)を掻き分けながら斜面を探すと、野ネズミが食べ残したミズナラ堅果が転がっていました。 
コナラシギゾウムシ幼虫による虫食い穴(脱出痕)のあるドングリで、野ネズミが殻を割って中身を食べた後の半分だけが残されていました。 
これは以前、私が給餌場に置いたドングリのひとつでしょう。 (カラーペイントで目印をつけておけば良かったですね。)

さらに地面の落ち葉をめくると、すぐ近くに野ネズミの巣口を発見できました。 
指を差し込んで探っても、坑道(トンネル)は深そうです。 
奥に野ネズミが貯め込んだ堅果類や巣材(断熱材)の落ち葉が詰め込まれているかどうか、巣穴の発掘調査をしたいところです。 
迷った挙句、結局諦めました。 
私は独学で野ネズミを調べているので、巣穴を掘るのも全く初めてです。
発掘作業のノウハウを知りません。 
諦めた理由のひとつは、 掘る道具(移植ゴテ)を何も持ってこなかったからです。 
コロナ禍が収まっていないので、野生動物からヒトへの万一の病原体感染(スピルオーバー)を予防するために、ゴム手袋やマスク、ゴーグルなどを着用すべきかも?と土壇場で躊躇してしまいました。 
巣穴を暴いてしまうと野ネズミが引っ越してしまい、トレイルカメラに写らなくなってしまうはずです。
 
それでも今思うと、やはり思い切って棒で掘り返してみるべきでしたね…。 
ファイバースコープがあれば、巣穴の中の様子を非侵襲的に撮影することも可能かもしれません。 
根雪が積もる前の最後の観察となりました。

オオハンゴンソウの花で採餌するセイヨウミツバチ♀

 

2022年8月上旬・午前10:55頃・くもり 

山麓の農村部の農道沿いに繁茂するオオハンゴンソウの大群落でセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。 
吸蜜する蜂をよく見ると、後脚の花粉籠に橙色の花粉団子を満載しています。 
風揺れが激しくて、虫撮りには悪条件でした。 


関連記事(6年前の撮影:花粉籠は空荷)▶ オオハンゴンソウの花蜜を吸うセイヨウミツバチ♀ 


オオハンゴンソウは迷惑な特定外来植物です。 
帰化&外来植物 見分け方マニュアル950種』によると、
・本種は無融合性生殖を行う。つまり花粉を受粉しなくとも(花粉を出す前からすでに)子房が膨らみ、種子の形成を始める。細胞分裂の気軽さで増殖できるのだ。 
・地下に栄養貯蔵器官をもつため、根こそぎ除かないと再生する。 (p728、p730より引用)

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