2022/12/26

夜のスギ林道で採食する子連れのニホンイノシシ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬・午後18:35頃・気温24℃(日の入り時刻は午後18:27) 

日没直後のスギ林道に子連れのニホンイノシシ♀(Sus scrofa leucomystax)が登場しました。 
現場は里山の東斜面なので、公式の日の入り時刻よりもずっと早く太陽が稜線に隠れて暗くなります。 
つまり、この時刻には真っ暗です。
林道を挟んで互いに逆から狙う2台のトレイルカメラで連続撮影に成功しました。 

まず現れたのは母親のイノシシ♀です。 
下腹に乳房と乳首が見えるので、♀と分かります。 
牙が短いのも♀の特徴です。 
林床に生い茂る下草や落葉を鼻で掻き分けて探餌採食しています。 

尻尾を絶えず左右に振っているのは、つきまとう吸血性のアブや蚊を追い払っているのでしょうか。
しかし、動画には夜行性の吸血昆虫は写っていません。

母親の後から縞瓜に似た縦縞模様の幼獣(通称「ウリ坊」)が2頭続けてやって来ました。 
既に乳離れしているようで、母親の周囲をうろちょろと自力で採食しています。 
幼獣が母親の腹の下をくぐり抜けたときも授乳しませんでした。 

音量を上げると、イノシシが低音でブーブー♪鳴く声が聞こえます。 
鳴き交わしているというよりも、母親が一方的に鳴いて幼獣に居場所を伝えているコンタクトコールなのかな?

※ イノシシの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


トレイルカメラを設置したスギの根元にイノシシの母親が採食しながら近づきました。 
するとカメラのセンサーが感知して、赤外線LEDが点灯しました。(@1:26〜) 
イノシシの母子家族は上から照射する赤外線が見えてないようで、全く無反応・無関心で採食を続けています。 
カメラの真下で結構長時間、採食してくれました。 

続けて別カメラからの映像をご覧ください。(@1:54〜) 
緩やかな坂道となった林道をイノシシの家族群が左から降りてきました。 
まず登場したのは縞模様のウリ坊です。 
カメラの真下の死角で採食しているようです。 
続けて成獣♀(母親)も画面下の死角から現れました。 
地面に積もったスギの落葉を鼻で掻き分けながら餌を探しています。 
後からもう1頭の幼獣が追いつきました。 
イノシシの家族群は、母親を先頭に林道を右に立ち去りました。 
こちらのトレイルカメラ@スギではなぜかイノシシの鳴き声が録音されていませんでした。 
カメラに内蔵されたマイクの性能に差があるのかもしれません。

ニホンイノシシの母子は、林道の中央にあるタヌキとアナグマの溜め糞場sを迂回して通り過ぎました。 
好奇心が旺盛なはずの幼獣も溜め糞には近寄りませんでした。
嗅覚に優れるイノシシにとっては、臭い汚物という認識なのでしょう。 

私にとって、イノシシの採食シーンが初見というだけでなく、母親に引率された幼獣も初見です。 
この雪国の山域でニホンイノシシが繁殖しているという決定的な証拠映像が撮れました。 

通常4月から5月頃に年1回、平均4.5頭ほどの子を出産する。秋にも出産することがあるが、春の繁殖に失敗した個体によるものが多い。妊娠期間は約4か月。雄は単独で行動するが雌はひと腹の子と共に暮らし、定住性が高い。子を持たない数頭の雌がグループを形成することもある。
最近読んだ本:高橋春成『泳ぐイノシシの時代』によれば、
イノシシの子のウリ模様は、生後4か月ほどまでみられる。(p85より引用)
とのこと。







アナグマの溜め糞で吸汁するクロヒカゲ♂と肉食性ハネカクシの攻防

 

2022年8月中旬・午前10:25頃・晴れ・気温25℃
▼関連記事(前夜および前前夜の撮影) 
夜の溜め糞場に通い、排便およびスクワットマーキングするニホンアナグマ♂【トレイルカメラ:暗視映像】
ニホンアナグマMeles anakuma)が里山のスギ林道に残した溜め糞sを観察していると、クロヒカゲ♂(Lethe diana)が飛び回っていました。 
飛来シーンをまずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
直後に等倍速でリプレイ。 

左のやや軟便の小糞塊に着陸すると、クロヒカゲ♂は翅をしっかり閉じたまま、すぐに口吻を伸ばして一心不乱に吸汁し始めました。 
クロヒカゲが土を舐めてミネラル摂取するシーンは過去に何度も見ていますが、獣糞に来たのは初見です。
関連記事(1、2年前の撮影)▶  
土を舐めてミネラル摂取するヒカゲチョウの群れ【HD動画&ハイスピード動画】 
砂利道の土を舐めるクロヒカゲ♂

蝶が飛来したら、先客のキンバエは飛び去ってしまいました。 

やがて、溜め糞の右奥のスギ落ち葉の下から肉食性のアカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)が忍び寄りました。(@1:17〜) 
ハネカクシに襲われそうになった寸前に、クロヒカゲは翅を素早く開閉して撃退しました。(@1:38〜) 
1/5倍速のスローモーションでまずはご覧ください。 
一瞬だけ全開したクロヒカゲの翅表を見ると、前翅の白帯が不明瞭なので♂と判明。

右隣の糞塊(しっかりした一本糞×3)にカメラをパンすると、別個体のアカバトガリオオズハネカクシに襲われかけたキンバエの一種が逃げていました。 

しばらくすると、クロヒカゲ♂は右の大きなアナグマ糞塊に移動して、吸汁を続けています。 
溜め糞で待ち伏せしていたサビハネカクシOntholestes gracilis)がクロヒカゲ♂に襲いかかろうとすると、蝶は素早く飛び退きました。(@3:16〜) 
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
直後に等倍速でリプレイ。 
狩りに失敗したサビハネカクシはすごすごと右へ立ち去りました。 

私は未だ肉食性ハネカクシの狩りが成功したシーンを見たことがありません。 
周囲の山林ではエゾゼミ♂とミンミンゼミ♂がやかましく鳴いています。 

クロヒカゲ♂は充分に吸汁して満足したらしく、私が他の昆虫を撮影している間にいつの間にかアナグマの溜め糞から飛び去り、二度と戻って来ませんでした。
糞塊の右下にサビハネカクシ
アナグマ溜め糞の全景

2022/12/25

山の泉で育つトウホクサンショウウオ幼生をすくって見る

 

2022年8月下旬・午後12:35頃・晴れ 

夏でも冷たい湧き水(地下水)が流れ込む山中の泉で、珍しい水生動物を見つけました。 
これまでアズマヒキガエル幼生(オタマジャクシ)の大群を定点観察していたのですが、変態が完了して池から全て居なくなるまでサンショウウオ幼生の存在に気づきませんでした。 
岸辺の浅いところに居たのを咄嗟に素手で掴み取りました。 
小魚のように逃げるかと思いきや、その動きは鈍かったです。 
透明プラスチックのお魚観察ケース(13.5×3.5×7.0cm)に移してから、じっくり観察してみましょう。 
(映像はここから) 

後で図鑑などで調べると、トウホクサンショウウオHynobius lichenatus)の幼生でした。
生まれて初めての出会いです。 
山中を流れる沢の源流となる、こんな池に居るとは知りませんでした。
尻尾に黒い斑点模様があります。 
四肢が伸びていて、胸部の横に外鰓が張り出しています。 

山渓ハンディ図鑑9『日本のカエル+サンショウウオ類』でトウホクサンショウウオを調べると、
幼生は、秋までに変態して上陸する。(p167より引用)
wikipedia:トウホクサンショウウオによれば、
幼生ははじめは12-14mm程度の大きさで、動物性プランクトンや川エビ、水棲昆虫などを捕食する[4][5][2][3]。共食いをすることもある[2]。 多くの個体は生まれた年の秋までに40mmほどになって成体へ変態するが、なかには越冬して翌春まで幼体のものもいる[4][5]。

容器の底でじっと静止していて、容器を揺らしても無反応。
私が指を水中に突っ込んでしつこく触れると、ようやく泳いで逃げました。 
尻尾を左右にくねらせて小魚のように泳ぎます。 

容器の側面には定規の目盛が刻んであるので、容器越しに採寸することができます。 
真夏でも湧き水の水温が低いために、プラスチック容器の表面がすぐに曇ってしまいます。 
邪魔な結露を布で何度も拭き取りながら撮影しました。 
この日は温度計を持参せず、池の水温を測れませんでした。 

観察した後はトウホクサンショウウオ幼生を池に戻してやりました。(再放流) 
いつか飼育してみたいものです。 
安易に採集しても、真夏に生かしたまま険しい山道を下山して家まで無事に持ち帰れる気がしません。









【追記】
サンショウウオについて私は全く疎かったのですが、山形県に生息する小型サンショウウオには他にキタオウシュウサンショウウオ、バンダイハコネサンショウウオも知られているそうです。
ただし、ハコネサンショウウオ属は地下伏流水中に産卵するらしいので、今回は除外しました。
最近、サンショウウオの分類が急速に進展したそうなのですが、他の地域に比べて東北地方のサンショウウオはあまりよく調べられていないのでは?という印象を受けました。


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