2012/05/24

スズバチの泥巣に寄生したドロバチヤドリニクバエの羽化

スズバチ泥巣の飼育記録

2011年11月

山中で三角点の側面(南東面)にドーム状の立派な泥巣を見つけました。




その独特の形状から スズバチが作った泥巣と思われます。
マイナスドライバーで縁から削り取るように採集してみました。
最後は一気に全体が剥がれましたが、メリメリッと繊維質の紙粘土を千切るような感触でした。(※)
※ ドロバチが泥の巣材に植物などの繊維質を混ぜ込むという話は記憶にないので、おそらく繭の繊維が剥がれるときの感触と思われます。





母蜂は独房を3室作ってから全体を大量の泥で覆ったようです(外被)。
個々の独房は横向きに作られ、縦に増築されています。
1室(上の写真で左の独房)は寄生されており、ハエの蛹が多数詰まっていました。
泥巣を発掘した際に一部の囲蛹が溢れ落ちました。
2室(中央、右の独房)は蜂の子が繭を紡いだ後のようです。
独房の隙間に詰まっている物(少しカビが生えている)は、幼虫の餌として狩られ麻酔状態で搬入された鱗翅目幼虫の糞と思われます。
このまま持ち帰り、プラスチック容器に密閉して飼育(放置)してみました。
果たして本当にスズバチが羽化してくるのか楽しみです。
カリバチは一般に前蛹で越冬します。
冬季も特に外気に晒すことなく室温で冬越しさせました。





2012年4月下旬・室温22℃

容器内に多数転がっている寄生バエの囲蛹から一匹の成虫が羽化したようです。
気づいたときには既に翅が伸びきった状態でした。
ドロバチ類に労働寄生するドロバチヤドリニクバエ(の仲間)だと思います。
身繕いを念入りに行い、容器内を徘徊すると口吻を伸縮させて壁面を舐め始めました。
元気に飛び回って容器にぶつかるので、翅がすぐに擦り切れてしまいます。

背面

側面

【参考文献】



「スズバチ(Oreumenes decoratus Smith)の造巣活動」
茨城県自然博物館研究報告 (3), 47-51, 2000-03 (PDFファイル
羽化記録の詳細な表が載っています。




【予告】
この後も続々と泥巣から羽化してきます。


を動画で記録できましたので、そのうちに公開します。
続報をお楽しみに!

(つづく→ドロバチヤドリニクバエ翅伸展の微速度撮影




2012/05/23

繭から出したイラガ前蛹(蛾)の激しい徘徊運動【微速度撮影】




サイカチの木の棘だらけの枝先にイラガMonema flavescens)の繭があちこち作られているのを見つけました。
春になってから(4月)、害虫駆除と称して繭を大量に採集してきました。
手の届く範囲だけでも15個と豊作です。
成虫の羽化を観察するのと被寄生率を調べるのが目的です。






2本のサイカチ枝が交叉した部分という風変わりな場所に作られた繭を採集する際に、枝を無理に引き剥がそうとしたら硬い繭が割れてしまいました。



背面


側面


腹面




中身は意外にも未だイモムシ様の前蛹でした。
『イモムシ・ハンドブック』p54によると、イラガは前蛹で越冬するらしい。
なーるほど。




冬にアカゲラが嘴でイラガの繭を砕いて捕食するのを観察したことがあります。

繭から引きずり出して食べていたのはイラガの蛹ではなく前蛹ということになります。


閑話休題。
幸い体が傷ついていないようなので、前蛹を割れた繭から取り出して清潔なプラスチック容器に移してみました。
蛹化および変態の様子を観察できる絶好の機会です。
果たして剥き出し(裸)の状態でうまく育ってくれるでしょうか?



2012年5月上旬・室温24℃


それまで大人しかった前蛹がある日、容器内で激しく蠕動を始めました。
内径30mmの丸い容器内を壁に沿って前進しています。
遂には脱走しそうな勢いで壁を登り始めました。
越冬明けの前蛹にこれ程の運動性が保たれているとは知りませんでした。

特に遮光していないので、暗い所を探しているのだろうか。
剥き出しの状態では心細く、まさか繭を作り直すのかな?
もし食草を与えたら摂食するだろうか?

5秒間隔で93分間インターバル撮影した写真を元に早回し映像を製作。
蛹化の前兆かと内心では期待したものの、結局、前蛹は疲れ果てたように静止しました。
この意味不明の散歩は、単に休眠状態から目覚めただけなのかもしれません。

ひょっとして自然界でも狭くて暗い繭の中で前蛹がぐるぐると激しく寝返りを打っているのかもしれない…と想像すると楽しいですね。
レントゲンか何かでイラガ繭の中を透視できたら面白そうです。


イラガの蛹化【後日談】
明らかに居心地の悪い不自然な状況なので、蛹化前に激しい運動で消耗しないか心配でした。
そのまま前蛹の飼育を続けたところ(ただ放置するだけ)、20日後に最終脱皮を行い無事に蛹になりました(@5月下旬)。














成虫の羽化が楽しみです。
イラガの成虫出現期は6~9月とのこと。


つづく→「イラガ(蛾)の蛹が尻尾を回す運動


【追記】
余談ですが、サイカチの棘について面白い豆知識を知りました。
植物は、さまざまに工夫をして、トゲを作っている。たとえば、バラやタラノキ、サンショウなどは表皮を変化させて、トゲを作っている。サイカチのトゲは、枝を針状にしたものである。  (稲垣栄洋 『たたかう植物: 仁義なき生存戦略 』(ちくま新書) p142より引用)


2012/05/22

雪面を走るクロモンサシガメ終齢幼虫



2012年4月下旬

林道上に残った雪の上を黒光りする見慣れない虫が元気に徘徊していました。
サシガメの仲間で、翅芽が未だ短いことから幼虫のようです。
前脚の腿節が太い気がします。
おそらく越冬明けの幼虫と思われます。

和名をご存知の方は教えてください。

カメムシBBSにて問い合わせたところ、クロモンサシガメPeirates turpis)の終齢幼虫(5齢)だろうとご教示頂きました。

翅が未だ短い


採寸

側面
腹面

【追記】
『カメムシ:おもしろ生態と上手なつきあい方』p30によると、
普通に見られるクロモンサシガメは、翅の長さは個体によってさまざまで、ほとんどが短翅型でまれに長翅型が見られる。





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