2021/04/11

飛んでいるハイタカにモビングを仕掛けるハクセキレイ?(野鳥)

 

2020年11月下旬・午前11:20頃・くもり 

おそらくハイタカAccipiter nisus)と思われる小型の猛禽が郊外の農地の上空を飛び回っていました。 
ヒラヒラという羽ばたきと滑空を交互に繰り返しています。 
種類を見分ける識別点である翼の下面の斑紋が逆光でよく見えず残念でした。 

そのハイタカに対して、気の強い小鳥がチュンチュン♪と鋭く鳴きながらモビング(擬攻撃)を仕掛けていたので驚きました。 
逆に天敵の猛禽に怯えて必死に逃げ惑っていたのかもしれませんが、同一個体が繰り返し戻ってきてハイタカに挑んでいた(ように見えた)ので、モビングだと思いました。 
ただし今回の小鳥はハイタカの飛行高度よりも終始低く飛んでいたので、モビング好きなカラスが仕掛ける空中戦ほどの迫力はありませんでした。
▼関連記事(2、5年前の撮影) 
チョウゲンボウ♂をモビングするハシボソガラスの群れ(野鳥) 
チョウゲンボウ(野鳥)をモビングするハシボソガラスの空中戦
急降下による狩りが得意なハイタカに対して、小鳥が下から飛んで向っていくのはとても勇気のある行動だと思います。 
ハイタカの方は特に眼中にないというか、ほとんど相手にしていません。 
それでも飛んでいるハイタカを牽制して縄張りから追い払ったように見えました。

残念ながら背景が薄暗い曇り空のために、カメラのAFが飛んでいる被写体にすばやく合焦してくれませんでした。
おまけに、カメラを空に向けても周囲の電線が邪魔です…。 
この勇気ある小鳥は、波状に飛ぶことからセキレイ類のような気がします。 
川に近いこの辺りでは、ハクセキレイMotacilla alba lugens)が優占種です。 
動画のクオリティはいまいちですけど、個人的に珍しい出来事なので、忘れないように記録しておきます。 

※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
手ブレ補正も色調補正も今回は逆効果になるので施しませんでした。 


【追記】
私は初め、この猛禽はてっきりチョウゲンボウだろうと思ったのですが、YouTubeのコメント欄にて、The Wildlife Photographerさんから「チョウゲンボウではなくハイタカ」とご指摘いただきましたので訂正しておきます。
That's actually an accipiter nisus, its wings are too broad to be an falco tinnunculus

ハイタカAccipiter nisus)を見れたのはこれが生まれて初めてです。

まさか平地で出会えるとは思って無くて、検討する選択肢から外してました。

手元にある図鑑でハイタカを改めて調べてみました。

羽ばたきと滑翔をまじえて直線的に飛び、帆翔して旋回する。(『フィールドのための野鳥図鑑:野山の鳥』p15より引用)


ハイタカは、小鳥類を専門に獲物として狩りをするタカだ。(中略)小鳥たちが警戒の声を出し、おかしいと思ったらハイタカが姿を見せた。鳥たちの行動が急に変化したら、ワシタカ類が現れた確率が高い。(『やまがた野鳥図鑑』p19より引用) 

ということは、今回見たセキレイの行動はモビング(擬攻撃)ではなくて、捕食者の出現でパニックになっただけかもしれません。

登場したハクセキレイ(?)が複数個体という可能性もあります。

セキレイのあの飛び方が一番ハイタカに襲われにくい緊急回避法なのかな?


寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(3)10倍速映像

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#10

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(2)接写
2020年11月上旬・午後22:27〜23:40 

サムライコマユバチの一種Cotesia sp.)終齢幼虫の群れが集団で営繭する様子を今度はマクロレンズで微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
初めからこの手法で記録したかったのですが、1台しか無いカメラと三脚のやりくりが大変でした。 

各幼虫は、口から白い絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡いでいます。 
1匹の幼虫が繭塊の表面からこぼれ落ちました。 
ウジ虫様の寄生バチ幼虫は脚が退化しているので、歩行・徘徊が苦手です。 
繭塊から離れてしまうと、おそらく自力では戻れないでしょう。 
繭塊から脱落した幼虫の穴は後に他の仲間によって埋められます。 

寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫は虫の息ながらも未だ生きているようで、ときどき微かに頭部が動いています。(画面下が被寄生幼虫の頭部) 
この寄生バチは、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂に分類されます。 
しかし別種の寄生バチ♀によって繭塊に次々と産卵されて、二次寄生される可能性があります。 
▼関連記事(5年前の撮影)
それを防ぐために寄主の毛虫が死ぬまでボディーガードとして振る舞うように行動を支配(寄主の行動操作)しているかどうか、興味深いところです。 
例えば他の虫が近づいたり繭塊を這い回ったりすると、ナシケンモン幼虫は暴れて撃退するでしょうか? 
飼育下で実験のために二次寄生蜂を用意するのは無理なので、試しにアリやアブラムシなどを這い回らせてナシケンモン幼虫の反応を調べたら面白そうです。 
せめてピンセットで毛虫をつついてみて、反応性を調べるべきでしたね。 
しかし本来、被寄生ナシケンモン幼虫は最終的に丸い球状の繭塊で完全に包まれるはずなので、ボディーガードの行動は期待されていない気がします。 
被寄生ナシケンモン幼虫は筋肉組織も既に食い荒らされているでしょうし、体外も体内も寄生バチの絹糸によってがんじがらめに固定されていますから、ほとんど動けないのではないか、と私は予想しています。 

 「ナシケンモン:寄生されて蛾になれず死んでしまうエレジー」 

翌日に撮った繭塊の写真を以下に掲載しておきます。
未だ営繭を続けている幼虫が写っていました。



2021/04/10

マガモ♂の求愛誇示 その1:水はね鳴きとそり縮み(冬の野鳥)

 

2020年11月中旬・午後15:20頃・晴れ 

川面に浮かぶマガモ♀♂(Anas platyrhynchos)の群れが求愛行動を繰り広げていました。 
マガモは性別を見分けるのが簡単なので、配偶行動の観察に適しています。 
カラフルな方が♂で、♀は地味です。 
♂は全て繁殖羽で、エクリプスの♂は居ませんでした。 

昨年はオナガガモを教材に様々な求愛誇示行動を勉強しました。 
マガモの求愛もほぼ共通しているのですが、いくつか違う点があります。 
まず♂による♀の「囲み追い」行動はオナガガモだけに見られるもので、他のカモ類は行わないそうです。 
オナガガモ♂による「水はね鳴き」と「そり縮み」では、求愛対象の♀が明確に分かりました。 
オナガガモ♂は近くにいる意中の♀に対して嘴で水を横に跳ね上げ、そり縮みの直後には意中の♀の方へ向き直ります。 
ところが、マガモ♂による同じ求愛誇示行動では、どの♀にアピールしているのか私には全く分からず、困惑しました。 
オナガガモの方が求愛行動が洗練されている(進化している?)と言えるかもしれません。
オナガガモとは異なるマガモ特有のかすかなボディランゲージ(身体言語)があるのなら、それを読み解いていかなければいけません。 
複数の♂が「水はね鳴き」や「そり縮み」の競演をする様は見事です。 
「水はね鳴き」の最後に特徴的な鳴き声を発するらしいのですが、川の水音や車の騒音などで私には聞き取れませんでした。
マガモの求愛行動について詳しく解説した文献を探しています。
どなたかオススメの本や論文があれば紹介して下さい。(※追記参照)

日没が迫りどんどん薄暗くなるため、この日は求愛が成就して交尾に至るまでの一部始終を観察できませんでした。 
もしかすると繁殖期が始まったばかりで、今回は求愛が未だ充分に盛り上がらなかった(不完全燃焼に終わった)のかもしれません。 
オナガガモ♂のように意中の♀に対して個別にアタックするのではなく、マガモ♂は「集団お見合い」や「合コン」で相手を決めるのでしょうか?

♂が自分の羽根に嘴で軽く触れる「見せつけ羽繕い」行動も儀式的な求愛誇示行動の一つなのですかね? 
なんとなく、♀に近い側面の翼の羽根を整えているような気がします。 
あるいは、首を曲げて羽繕いの姿勢になることで首から頭部にかけての鮮やかな緑色を♀にアピールしているのかもしれません。

マガモ♀も気になる行動をしていました。 
(意中の?)♂に並走しながら、嘴で水面を斜めに漕ぐような仕草を繰り返しています。 
嘴を閉じたままなので、水面採食行動ではないと思います。 
自身の左右どちら側にも嘴を水面に差し込んで漕いでいます。 
♀しかやらないこの行動も一種の求愛誇示なのですかね?
「嘴漕ぎ遊泳」と勝手に造語してみました。 
もちろん実際には、水中の足の水かきで漕いで前進・遊泳しています。

 最後に2羽の♀が川面を並走した行動も興味深く思いました。 
♀が♀に向かって突進して相手の進路をわざと少し妨害するような意図を傍目には感じたからです。 
恋敵♀を目当ての(意中の)♂に近づけまいと牽制しているのでしょうか? 
合コンに参加した2羽の♀が♂の群れにアピールするためコンビプレーの誇示行動を披露したのだとしたら面白いのですけど。

後半はマガモの求愛行動を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:51〜) 

つづく→その2



※【追記】
英語版wikipediaでmallard(=マガモ)を検索すると、求愛行動について日本語版よりは多く書いてありました。
During the breeding season, both male and female mallards can become aggressive, driving off competitors to themselves or their mate by charging at them.[83] Males tend to fight more than females, and attack each other by repeatedly pecking at their rival's chest, ripping out feathers and even skin on rare occasions. Female mallards are also known to carry out 'inciting displays', which encourages other ducks in the flock to begin fighting.[84] It is possible that this behaviour allows the female to evaluate the strength of potential partners.[85]
その後はあぶれ♂が強姦のように交尾を迫ったり死姦したケースに関して詳しく書いてあったのですが、前提となる正常な求愛ディスプレイについての記述が不十分だと思います。

ネット検索で「Duck Displays」と題した文章をスタンフォード大学教育学部?のサイトで見つけました。
その中からmallard(マガモ)に関する部分を引用しておきます。
Most people's first observations of duck behavior probably are of Mallard courtship. Mallards perform in the fall and winter as well as the spring, so there is plenty of opportunity to watch their displays. They are also often rather tame, and perform in the open -- this is a good thing since, while frequent, their displays are subtle and brief. Males swimming in the presence of females may be seen shaking their heads (head-shake display) and tails (tail-shake), often doing the former with their breasts held clear of the water and their necks outstretched. They also raise their wingtips, heads and tails briefly and then swim with their necks outstretched and held close to the water (head-up-tail-up). Groups of four to five males may swim around females, arching their necks, whistling, then lowering their bills below the water surface and jerking their bills up to their breasts while spurting water toward the preferred female (water-flick or grunt-whistle). The water-flick may take only a fraction of a second to complete. The drakes in male groups give short, nasal "raeb-raeb" (two-syllable) calls, and short high-pitched whistles.

Female Mallards and other female ducks often demonstrate (inciting displays) and call to provoke males to attack other males or females. In some circumstances these displays may allow the female to observe the performance of males and to evaluate them as potential mates. To elicit displays from a group of males, a female Mallard may swim with her neck outstretched and her head just above the water (nod-swimming). When a strange male approaches a female Mallard, she often will do an inciting display, swimming after her preferred mate while producing a rapid staccato series of quacks and flicking her beak back and downward to the side. As pairs are formed, both sexes may be observed lifting a wing, spreading the feathers to expose the speculum (the patch of bright color at the trailing edge of the wing), and placing the beak behind the raised wing as if preening. Then just before copulation, the male and female typically float face-to-face and pump their heads up and down.
その中で、♀による「けしかけ(煽動)誇示」(inciting displays)が気になります。



【追記2】
山本浩伸、大畑孝二『これがカモ!カモなんでも図鑑』という本に「カモの結婚式場」と題した第17章があり、マガモの求愛行動を連続写真で紹介していました。
 マガモをよく見ていると、♂がへんなしぐさをしています。首をのばして、頭をつんとのばしたかと思うと、すぐにひっこめ、つぎはおしりをぴょんと持ち上げるのです。
 どうやらこれは、求愛のダンスのようです。1羽の♀に、数羽の♂が、さかんにダンスをおどっているようです。
 そのうち♀が気に入ったのか、2羽で仲よく泳ぐようになりました。どうやら、つがいができたようです。(中略)
 ♂、♀が仲よく泳いでいるのを見ていたら、さかんにおたがいに首をのばしたり、ちぢめたりする動作をくり返しはじめました。
 そして、♂が♀の背中に乗り、落ちないようにくちばしで、♀の頭をくわえています。これはどうやら交尾をしているようです。ほんの数秒のできごとです(中略)
 ♂は、かならず交尾後♀をひとまわりします。♀も、首を水面にのばす動作をし、最後にはばたきをしました。
 カモたちには、決まった作法があるようです。

マガモの交尾 

  1. ♂と♀がむかい合い頭を上下にふる
  2. ♂が♀に乗りはじめる
  3. ♀はかなり水面よりしずむ
  4. ♂は♀の頭をくちばしでおさえて交尾する
  5. 交尾後は♂がかならず♀をひとまわりする
  6. ♀は交尾後、水面で羽ばたきする(以上、p21より引用)
八木力『冬鳥の行動記』という本のp58にもマガモの交尾が連続写真で紹介されていました。
  1. 受け入れ体勢の♀
  2. ヘッドトッシング
  3. マウンティング
  4. (交尾終了後に)儀式的水浴びをする♀
どうやらマガモが実際に交尾するのは互いに気に入った♀♂ペアが形成されてからのことらしく、今回私が観察したのはその前段階の求愛行動だったようです。

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