2023/01/20

同じ日に溜め糞場を別々に訪れる2頭のニホンアナグマ(顔白、顔黒)【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年8月下旬 

監視カメラを設置している里山スギ林道の溜め糞場sで、同じ日に3回もニホンアナグマMeles anakuma)が現れました。 
しかも別個体が1頭ずつ登場しました。 


シーン1:8/23・午前1:45・気温22℃ 
アナグマが溜め糞場sに来たのは3日ぶりです。 
深夜の林道を右からやって来たアナグマは、自分たちの溜め糞の匂いを嗅いだだけで、排便せずに素通りしました。 
スギの根元で軽くスクワットマーキングしてから、左へ立ち去りました。 
全身が白っぽく見える(アルビノ?)いつもの個体でした。 


シーン2:午後19:43・気温25℃ (@0:11〜) 
日が沈んで晩になってから登場した個体はいつもと違い、赤外線の暗視映像でも顔の黒い過眼線がくっきり見えます。 
いかにもアナグマらしいアナグマです。 
今までの暗視映像でアナグマが白っぽく見えていたのは、赤外線投光器が強過ぎて白飛びしていたのではないか?という懸念が拭えませんでした。 
しかし、そうではないことがこれではっきりしました。 
同じ機種のトレイルカメラでも顔の黒い縦縞の有無によって、少なくとも2頭のアナグマ(顔白と顔黒)が見分けられることになります。(個体識別可能な形質) 
老齢になると毛皮の黒い毛が白髪化するのですかね? 
それとも近親交配による近交弱勢でアルビノが生まれるのかな? 
金子弥生『里山に暮らすアナグマたち』というバイブルを読むと、
 養殖場に飼育されている顔面の白黒模様がないアナグマ。アナグマの顔の白黒模様は、地理的亜種の判別に使われるほど形質が安定しているが、養殖場では無軌道な地域個体群の交雑や近親交配の影響からか、このような黒い顔のアナグマが増え、死亡率が高いという。(p166に掲載された写真のキャプションより引用)
という記述がありました。 
これは韓国のアナグマ養殖事情についての文脈で、ニホンアナグマとは別種(Meles leucurus アジアアナグマ Asian badger)らしいです。
かと思えば、同じ本でも違うことが書いています。
研究開始時に、顔の模様や胴体の特徴などの外見によって個体識別をしようと試みたことがあったが、春先の変貌ぶりにあきらめざるをえなかった。(p71より引用) 

珍しく左からやって来たアナグマ(顔黒)は、タヌキが残した溜め糞sの手前で立ち止まると、スギ落葉の匂いを嗅いでいます。 
タヌキの溜め糞を迂回しながら下草の匂いを嗅ぎました。 
一旦画面の死角に消えてから、ぐるっと回って画面の右下から再登場。 
アナグマの溜め糞の匂いを嗅いでから右へ立ち去りました。 
この個体は結局、排便もスクワットマーキングもしませんでした。 

ちなみに、画面中央やや下に黒々と写っているタヌキの溜め糞の上を黒い糞虫が活動しています。 (別の記事に改めて取り上げます。)


シーン3:午後19:47・気温29℃ (@0:52〜) 
わずか3分後、右からアナグマ(顔黒)が再登場。 
どうやら同一個体が戻って来たと思ったのですが、左後脚をヒョコヒョコと跛行しています。 
下草にスクワットマーキングするための姿勢ではなさそうです。 
暗闇の林床で何か棘のある落枝でも踏んで怪我したのでしょうか? 
嗅覚でタヌキの溜め糞に気づくと迂回し、画面左下の死角に消えました。 
今回も結局、溜め糞場sで排便もスクワットマーキングもやりませんでした。 


まとめると、この日8/23に登場したアナグマはおそらく2頭で、溜め糞場sに排便はしませんでした。 
顔白と顔黒の2頭がこの辺りを縄張りとする♀♂ペアなのかな? 
アルビノっぽい顔白が♂ですが、顔黒が♀かどうか確認できていません。
アナグマもタヌキのように♀♂ペアが一緒に行動することはないのでしょうか。
タヌキの残した溜め糞を匂いで嗅ぎつけると、アナグマは必ず迂回しました。





【追記】
日本の食肉類:生態系の頂点に立つ哺乳類』という専門書の第8章:金子弥生「ニホンアナグマ」を読むと、アナグマを個体識別する上でのヒントが得られました。
・顔の黒い縦縞には、個体差が見られる。(p176より引用)
・鼻の色は、ピンク、黒、2色の混合の3タイプが見られる。(p176より)
顔の模様のバリエーションを示した写真が図8.2として掲載されていました。(p178)
この総説を読んで私が一番感心したのは、個体識別のために腹面(後ろ足内側)に入れ墨の処置をしたという点です。(p186より)


ヘリアンサス「レモンクイーン」の花で採餌するツヤハナバチの一種♀

 

2022年8月下旬・午後16:00頃・くもり 

山麓の裏庭に咲いた園芸植物ヘリアンサス「レモンクイーン」にツヤハナバチの一種♀(Ceratina sp.)が訪花していました。 
キオビツヤハナバチまたはヤマトツヤハナバチだと思うのですが、採集して標本をじっくり精査しないと見分けられません。 

小さな蜂は吸蜜に夢中で、カメラのレンズを近づけても逃げませんでした。 
後脚の花粉籠に橙色の花粉団子を付けています。 
採餌活動の合間に身繕いして体に付着した花粉を花粉籠に移します。 
中央の筒状花から一旦レモン色の花弁に移動してから飛び去りました。

2023/01/19

ツキノワグマの大量出没? 晩夏に5日連続でスギ林道を通過【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年8月下旬〜9月上旬 

里山のスギ林道にツキノワグマUrsus thibetanus)がなんと5日連続で登場し、トレイルカメラに記録されていました。 

シーン1:8/28・午後15:09・気温20℃ 
明るい日中に林道を右から左へ足早に歩いて通り過ぎました。 
全身の黒い毛皮に緑のひっつき虫(動物散布型の種子)が大量に付着しています。 
短い登場シーンを1/4倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:07〜) 


シーン2:8/29・午後20:25・気温18℃ (@0:21〜) 
闇夜の林道を右から登場。 
初めからカメラ目線で様子を窺っています。 
タヌキとアナグマが残した溜め糞場sの匂いを嗅ぎながら左へ歩き去りました。 


シーン3:8/30・午前1:50・雨天・気温17℃ (@0:41〜) 
雨が降る深夜、対面に立っているスギ(胸高直径約60.5cm)の根元で立ち止まり、匂いを嗅いでいました。 
林道を左から右へ立ち去りました。 
短い登場シーンを1/4倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:51〜) 


シーン4:8/31・午後16:58・気温25℃ (@1:16〜) 
夕方のスギ林道を右から左へ通り過ぎました。 
開いた口の中が赤いのが気になりました。 
カラスだと口内が赤い個体は幼鳥なのですけど、クマだと何かあるのでしょうか? (それともクマ全般に共通の特徴?)
心なしか目も充血してるように見えます。 
まさか花粉症のアレルギーなのかな? 
こういう個体が苛々してヒトを襲ったりするのでしょうか。 (ただの個人的な妄想です)
短い登場シーンを1/4倍速のスローモーションでリプレイ。 

全身の毛にひっつき虫が点々と付着しています。 
この時期の山林で心当たりがあるひっつき虫は、キンミズヒキやヌスビトハギなどです。 
ひっつき虫の種類はまだ色々ありますが、これから少しずつ勉強しないといけません。 


シーン5:9/1・午後21:43・気温22℃ (@1:46〜) 
右から左へカメラの前を足早に通り過ぎました。 


ツキノワグマの個体識別ができていないので、5日間で計何頭の熊が登場したのか分かりません。 
複数個体であることは間違いありません。 
8月下旬にクマの出没頻度が急増したのは、何か理由があるのでしょうか? 
マスコミが騒ぐようにツキノワグマの「大量出没」(異常事態)なのか、それとも毎年のことなのか、これからも地道に調査を続ける必要があります。 

熊は昼間も活動していますから、山中でヒト(登山客)とのニアミス事故が無いように、各自が対策しないといけません。 
気休めの鈴を持ち歩くだけでなく、護身用の熊よけスプレーを必ず携行するようにしましょう。 
少し高価ですが、銃器よりも有効ですし、命には代えられません。 
いくら口を酸っぱくして忠告しても、どうして熊よけスプレーの費用を惜しんで(ケチって)徒手空拳で無防備に入山する人が多いのか理解できません。 
イヌを連れて歩くのも良い対策らしいのですが、飼い犬と普段から山歩きの訓練をする必要があります。



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