2021/10/18

クリ樹洞の巣口を守り迎撃に飛び立つモンスズメバチ♀門衛

 

2021年7月下旬・午前4:55頃・晴れ(日の出時刻は午前4:34) 

道端にそびえ立つクリ(栗)大木の根元付近に樹洞があり、そこに長年ニホンミツバチApis cerana japonica)が自然営巣していました。
関連記事のまとめ(3年前の撮影)▶ クリの樹洞に営巣したニホンミツバチ:2018年
1ヶ月前(6月下旬)に来たときにはクリの樹洞に出入りするミツバチの姿はなく、クロスズメバチの一種♀を見かけただけでした。 
ニホンミツバチのコロニーは冬を越せずに滅びてしまったのでしょうか?(駆除された?) 

早朝に通りかかった今回も、ニホンミツバチ♀は居ませんでした。 
ところが驚いたことに、モンスズメバチVespa crabro)のワーカー♀がスリット状(縦の裂け目)の樹洞に出入りしていました。 
モンスズメバチ創設女王がニホンミツバチの古巣(空巣)を乗っ取って、クリ樹洞内で営巣を始めたようです。 
あるいは、最近になってコロニーが引っ越してきた二次巣かもしれません。 

クリの幹にモンスズメバチの♀が早朝から止まって辺りを油断なく警戒しています。 
羽ばたいてはいないものの激しく腹式呼吸しているので、胸部の飛翔筋を激しく動かして飛び立つ前の準備運動をしているのかもしれません。 
サーモグラフィカメラで撮れば体温の上昇が分かるはずです。
そのまま動画を撮り続けると、幹から飛び立ちました。 
しばらく定位飛行してから再び営巣木の幹に着地。 
幹のほぼ同じ場所に戻ると身繕いを始めました。
その日初めて外役に出かけるワーカー♀は、出巣の直後にしばらく営巣木の方を向いてホバリングしながら扇状に飛んで、巣の周囲の風景を正確に記憶するのです。 
ところが、今回の個体は必ずしも営巣木の方を向いて扇状に飛ばなかったので、何か変だと思いました。 

樹洞入り口の横の幹から再び飛び立つと、帰巣した別個体と空中で相打ちになり、また同じ場所に舞い戻りました。 
どうやら巣口の横に居た♀個体は門衛を務めているのだと、これで分かりました。 
怪しい蜂が巣に向かって飛来するとたちまち迎撃のために飛び立ち(スクランブル発進)、同じコロニーのメンバーかどうか誰何するのです。 
モンスズメバチ門衛の過敏な防衛行動は、以前も観察しています。

外役から戻ったワーカー♀(帰巣個体)の中には門衛のスクランブルをかいくぐり、入れ違いで無事に入巣することもあります。 

後半になって帰巣したワーカー♀が赤茶色のパルプ玉を咥えて搬入しました。 (@3:14)
早朝から巣材を集めて来たようです。 
巣口(スリットの右)に着地すると、しばらくウロウロしてから歩いて入巣しました。 

門衛と帰巣ワーカー♀との攻防(軽い空中戦)を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 (@3:40〜)

今後も定点観察に通ってみることにします。 
樹洞の内部をなんとか観察してみたいのですが、スズメバチ専用の防護服とファイバースコープ(スネークカメラ)が必要になりそうで、なかなか手が出ません。


2021/10/17

カノコガ(蛾):朝の日光浴と飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年7月下旬・午前6:10頃・晴れ 

山麓にある神社の境内で、カノコガAmata fortunei fortunei)が小さな祠のコンクリート基礎部分の北面に止まって朝日を浴びていました。 

少し離れた所で別個体がアキカラマツ(別名タカトグサ) の茎にしがみついていました。 
カノコガはいつも翅を広げたまま止まります。 
アキカラマツの株を手で揺らしても飛んでくれませんでした(映像省略)。 
次は右手の人差し指でカノコガの右翅に軽く触れると、準備運動なしで慌てて飛び立ちました。 
緊急離陸の羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画で撮影。(@0:23〜)

関連記事(5、8年前の撮影)▶ 



この日は里山に入山すると、多数のカノコガ個体が林縁を低く飛び回っているのをあちこちで目撃しました。(映像なし)
♂の探雌飛翔ではないかと思うのですが、定かではありません。

アリの群れに襲われても耐え忍ぶ、ど根性アズマヒキガエル【10倍速映像】

前回の記事:▶ 切り株で獲物を待ち伏せるアズマヒキガエルがアリを捕り損ねた

2021年7月下旬・午前9:50〜10:14頃・晴れ 

アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)が虫を捕食する瞬間を動画に記録しようと、真横にそっと回り込んでから三脚を立てました。 
ところが20分近く長撮りしても、空振りに終わりました。 
切り株の断面は水平ではなく、やや斜めに傾いています。 
そこに座ったヒキガエルは目の前のミズナラ幹をじっと凝視しています。 
瞬きもせず喉をかすかにヒクヒクさせているだけです。 
たまにアリが幹を徘徊しても、ヒキガエルは無反応でした。 
この撮影アングルでは遠近感が分からないのですが、おそらくヒキガエルの顔の正面にアリが来なかったり、ヒキガエルの舌の射程範囲の外だったのでしょう。 

やがて切り株から微小のアカアリ(種名不詳)がヒキガエルの体に次々とよじ登ってくるようになりました。 
ヒキガエルは皮膚が厚くて触覚が鈍いのか、ほとんど無反応でした。  
顔に来た蟻が目や口元を這い回っても平気です。 
アリは群れの仲間を動員してヒキガエルを攻撃しているのでしょうか? 
しかしヒキガエルの体に噛み付いたり蟻酸を掛けたりしているようには見えません。 
どうやらアリは、ヒキガエルの眼球から涙を吸汁したり、湿った唇を舐めたりして、水分を摂取しているだけのようです。 
ヒキガエルの閉じた口の隙間から唾液の小さい泡が出ています。 
アリに目尻を舐められたアズマヒキガエルはさすがに目を瞑るようになりました。 
カエルの瞬膜は眼球の下から現れて上に閉じます。 
ヒキガエルは左右の目を独立に瞬きできると分かりました。 
ヒキガエルの鼻孔内にアリが侵入することはなかったものの、鼻孔をヒクヒク動かすようになりました。 
喉をヒクヒクさせる動きが激しくなったのは、ストレスや苛立ちの現れでしょうか? 
右脇腹も呼吸で波打っています。 

煩わしいアリをヒキガエルが前脚で払い落とそうとしないのは不思議で仕方がありません。
よほど面の皮が厚くて鈍いのかな?
口元のアリをパクっと食べようとしないのは何故でしょう? (※追記参照)
まるでアリ責めの拷問を受けているようですが、ヒキガエルは身震いしたりアリを手で払い除けたりする行動が全く見られず、ただひたすら耐え忍ぶだけでした。(ガマん大会?) 
脂汗(ガマの油)を流すどころか、修行僧のような佇まいで平気の平左。 

 一部の鳥には蟻浴という習性があります。
アリ塚の上にわざと居座ってアリを怒らせ、羽毛に蟻酸をかけてもらい、ダニなどの体外寄生虫を駆除することがあるそうです。 
このヒキガエルもまさか蟻浴中だったのでしょうか? 

ヒキガエルの体表には毒液(ブフォトキシン)が分泌されているはずなのに、アリ避けの効果は全くありませんでした。 
ブフォトキシンは強心配糖体という心臓毒なので、おそらく脊椎動物にしか毒性を発揮しないのでしょう。
アリは昆虫(無脊椎動物) ですから、その心臓に影響しないのも納得です。

遂に アズマヒキガエルは度重なるアリの攻撃に堪りかねて右前脚で顔のアリを拭い、少し左に体の向きを変えました。 
切り株上でノソノソと歩いて前進を始め、終いには切り株から池の岸辺に飛び降りました。 

ヒキガエルの体長を採寸できず残念でした。 
かなり大型の個体で、目測では成人の拳より大きかったです。 

撮影中の私はカメラの近くで見守っていたものの、ヒキガエルの体に集る微小な蟻に全く気づきませんでした。 
なぜヒキガエルが急に逃げたのか理由が分からなかったのです。 
横に居る私の存在が気になり、警戒したヒキガエルが逃げたのでしょうか? 
あるいは、日向に長居するとヒキガエルの皮膚が乾燥するので、水辺に戻ったのかな?と思ったりしました。 
それとも、私が体中に振りかけた虫除けスプレーの匂いがきつ過ぎたせいで、ミズナラの幹に虫が近寄らなくなってしまい、ヒキガエルが狩場を変えたのか?と思ったりしたのです。 
撮れた映像を見て初めて、アリの群れから執拗に陰湿な攻撃を受けていたと真相を知りました。
ヒキガエルが立ち退いた後で切り株を現場検証しても、アリの巣は見つかりませんでした。 


↑【おまけの動画】 同じ素材でオリジナルの等倍速映像です。


※【追記】
西田隆義『天敵なんてこわくない―虫たちの生き残り戦略』という本を読むと、トノサマガエル(捕食者)とヒシバッタ(被食者)の関係について研究結果が詳しく書いてあり、興味深く読みました。
 カエルに限らず多くの捕食者は、採餌の効率が高くなるようにさまざまな工夫をしている。その一つが、小さすぎたり、大きすぎる餌を無視するというものだ。(p133より引用)

今回の動画で微小なアリが口元に来てもヒキガエルは食べようとしなかった理由は、小さ過ぎて腹の足しにならないからと考えられます。 



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