2020/08/09

耕耘中の田んぼを飛んで逃げるキジ♂(野鳥)



2020年5月中旬・午後16:10頃・晴れ


▼前回の記事
墓地に出入りするキジ♂(野鳥)
墓地を駆け抜けるキジ♀(野鳥)

墓地から田んぼに戻ったキジ♂(Phasianus versicolor)が、田起こし(耕耘)の済んだ田んぼや農道を歩き回っています。
ときどき立ち止まると辺りを見渡すように伸び上がるので縄張り宣言の母衣打ちをするかと期待したのですが、予想は外れ再び歩き続けます。
田んぼを横断しながら地面を啄んで何かを採食しました。
畦道に登り、水入れ・代掻きが済んだ田んぼの区画の手前まで来ました。

そのとき農家の方の運転するトラクターが農道をこちらに走って来ました。
エンジン音に警戒したキジ♂が慌てて向きを変えてから飛び立ち、低空で滑空すると、田んぼの端に着陸。
最後は枯れヨシ原に逃げ込んで隠れました。
飛んで逃げる際に、鳴き声は聞こえませんでした。
キジ♂の飛翔シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、地味な羽根色のキジ♀の方が♂より先に枯れヨシ原に逃げ込んでいました。
見事な保護色のため、それまで♀が田んぼのどこに居たのか全く見つけられませんでした。



【追記】
森林総合研究所 鳥獣生態研究室に所属する川上和人氏のインタビュー記事『「飛ぶ」ってすごいぞ 鳥類学、骨が語る多様な進化』を読んでいたら、興味深い鳥ビアを知りました。
鳥の筋肉って、普通は赤いんですよ。長距離を飛ぶために酸素をたくさん使うのでミオグロビンが大量に含まれていて。でも、ニワトリをはじめとするキジ目の鳥の筋肉って、ピンクです。人間でも赤い筋肉は長距離走者に多くて、白っぽい筋肉は短距離走者に多いわけですけど、ニワトリを含むキジ目の鳥もまさに短距離型、瞬発型で、一気に筋力を使ってボンって飛んで、100メートルとか先で降りてくるわけです
確かにキジやヤマドリの飛び方はいかにも不器用で重そうですし、短距離しか飛べないことを私もフィールドで何度も観察しています。



2020/08/08

採餌経験の浅いヤマトツヤハナバチ♀はルピナス蝶形花の攻略に苦労する【NG集】



2020年5月中旬・午後14:50頃


▼前回の記事
青いルピナスの蝶形花で採餌するヤマトツヤハナバチ♀

ヤマトツヤハナバチ♀(Ceratina japonica)がノボリフジ(別名ルピナス)の群落で採餌する様子を生まれて初めて観察しました。
前回の動画では採餌の成功シーンばかりをまとめ、それを元にさも分かったかのような書き方をしました。
しかし実は、出会ったばかりの個体は採餌方法が下手糞で、何をしているのか私にはよく分からず初めは混乱しました。
今回は、そんなNG集をまとめてみました。
ヤマトツヤハナバチ♀がルピナス(マメ科)の複雑な蝶形花を攻略して中の花粉や花蜜を得るには、どうやら経験と学習が必要なようです。
つまり、羽化したばかりの成虫の生得的な本能行動ではいきなり対応できないみたいです。
ルピナスの花は、まるで敷居が高い会員制の高級店のように「一見さんお断り」にしています。
蝶形花の構造を熟知した一部の優秀なハナバチだけを送粉者として採用し、報酬として花蜜と花粉を提供しているのです。
これも長年に渡る共進化の結果です。


シーン1:午後14:53(@0:00〜0:53)


ルピナス蝶形花の左右の翼弁がぴったり閉じていて、ヤマトツヤハナバチ♀はその隙間をこじ開けられずに悪戦苦闘しています。
中にルパンのお宝(餌)が隠されているということを、蜂はおそらく匂いで認識しているのでしょう。
悔し紛れに翼弁の合わせ目を大顎で軽く噛んだりしています。
花弁を食い破って穿孔盗蜜行動を始めるか?と私は期待したものの、蜂は諦めて飛び去りました。
後脚の花粉籠 スコパ(花粉採集毛)にオレンジ色の花粉を少し運んでいるということは、ルピナスの花に対して全くの初心者ではないようです。
それでも未だ経験と学習が足りないのでしょう。
風が吹いて花穂が絶え間なく揺れるので、マクロレンズによる接写は大変でした。


シーン2:午後14:43(@0:54〜)


このときは未だ後脚の花粉籠 スコパ(花粉採集毛)が空荷でした。
(雄蜂♂である可能性は、頭楯の黄紋を見れば否定できます。)※追記参照
ルピナスの花に着陸した蜂がなぜか蝶形花の後部に回り込んでしまい、萼に生えている白っぽい剛毛にうっかり左後脚の跗節が引っかかってしまいました。
もしこの剛毛が、穿孔盗蜜を試みる蜂を排除(足止め)するためにルピナス(ルパン)が仕掛けた罠だとしたら非常に面白いのですが、おそらく私の考え過ぎ(ただの偶然)でしょう。

(あるいは、茎を下から登ってくるアリを足止めする仕組みなのかも知れません。)
しばらく暴れていたヤマトツヤハナバチ♀は、ようやく足を振りほどくと採餌もせずに飛び去りました。
望遠マクロで撮影。




※【追記】
ツヤハナバチを野外で全く見たことがない頃に、坂上昭一・前田泰生『独居から不平等へ:ツヤハナバチとその仲間の生活』という専門書を読んでも、マニアック過ぎて内容が全く頭に入りませんでした。
久しぶりに読み返すと、いろいろと勉強になりました。
(ヤマトツヤハナバチの)脚の明色(黄色)なのが♂(p93より引用)
『日本産ハナバチ図鑑』で標本の写真を見直すと確かにその通りで、キオビツヤハナバチ♂の脚も黄色でした。(p349-350)
♀の脚は黒色です。
これで頭楯の黄紋が見えないアングルでも性別が簡単に見分けられるようになりました。


【追記2】
ヤマトツヤハナバチ♀に対して後脚の「花粉籠」という用語は不適切でしたので、スコパ(花粉採集毛)と訂正します
坂上昭一・前田泰生『独居から不平等へ:ツヤハナバチとその仲間の生活』の第1章「ハナバチの生い立ち」を読み返すと、精巧なスケッチとともに比較形態解剖学的に専門用語の違いを解説していて、とても勉強になりました。
 花粉集めの道具。葯から放出され体毛に付着した花粉は、脚で掃き寄せられ、体の一定部位―――後脚か腹部下面―――に密生する花粉採集毛(スコーパ)に集められて運搬される。ツヤハナバチでは後脚にスコーパをもつ。一方ミツバチ科では、後脛節の表面が無毛、両縁線が長毛となった花粉バスケットが形成され、大量の花粉を積みこむのに適している。もう1つの型がハキリバチ科(中略)で、後脚の毛はまばらだが、腹部下面は他のハナバチと異なり、密生したスコーパをもつ。(p3〜4より引用)

スコパという用語はハキリバチ科♀の腹部下面に発達した毛を指す、という私の認識は間違いで、ツヤハナバチ♀でも使われるのだそうです。
また、引用部は少し誤解を生む書き方になっていますが、ツヤハナバチ類もミツバチ科に属するハナバチです。

ヤマトゴキブリ♀が夜の浴室から逃走



2020年5月中旬・午後21:20頃・浴室の室温23.6℃、湿度37%

夜に入浴しようとしたら、浴室の壁面角に黒光りするヤマトゴキブリ♀(Periplaneta japonica)を発見。
逃げられないように窓を閉め切ってから、急いでカメラを取りに戻りました。
換気のために浴室の窓を少し明けていたので、半野生のヤマトゴキブリが野外から外壁を伝って室内に易々と侵入したと思われます。
もしかすると、最近見つけた幼虫の同一個体が成虫に羽化したのかもしれません。


▼関連記事(9日前に撮影)
夜の浴室に侵入したヤマトゴキブリ幼虫

ビデオカメラの白色LEDを点灯してそっと接写すると、夜行性のヤマトゴキブリ♀は慌てて逃走を始め、壁の隅をどんどん下に降りて行きました。
浴室の床に達したときに一瞬、黒光りした胸背に短翅が見えたので、幼虫ではなく♀成虫と判明しました。
本種♀は成虫になっても短翅で飛ぶことが出来ません。
一方、♂成虫は長い翅を有し、飛べるのだそうです。

立ち止まった際に浴室の濡れた床で水滴を舐めているのかもしれませんが、背面から撮っても肝心の口元が見えません。
床面を逃げ回るゴキブリをしつこく追い回して撮影しました。
走行時の脚の運びを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。

最後は浴室の閉めた扉の下の隙間に潜り込みました。
おそらく隙間風を触角で感知して潜り込んだのでしょう。
そこで見失ってしまいました。
私が浴室の扉を開けてもヤマトゴキブリ♀は潰れず、無事に隣の脱衣所へ逃げ込んだと思われます。
そこから食料の多い厨房(キッチン)へ向かうのは時間の問題でしょう。

風呂上がりの湿気を換気するために窓を終日開け放しているのが仇となり、ヤマトゴキブリの侵入口になっていたことが分かりました。
本気で対策しようとすれば、浴室の窓を網戸に交換したり、脱衣所にゴキブリ・ホイホイなどのトラップを仕掛けたりしないといけないかもしれません。


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