2020/04/21

熟柿の果汁を吸いながら争い排尿するキタテハの群れ



2019年10月下旬・午後13:15頃・晴れ

農園のカキノキ果樹の枝先で熟した一つの果実に秋型のキタテハPolygonia c-aureum)4頭が群がっていました。
ほとんどの個体が翅を閉じたまま、発酵した甘い果汁を吸汁しています。


▼関連記事(9年前の撮影:落果に3頭)
キタテハが落ちた熟柿を集団吸汁

果汁の多く滲む場所は限られているようで、隣に並んだ別個体の翅裏を足でグイグイ踏んで追い出そうとしています。
しかし足蹴にされても反撃せずに平然と吸汁を続け、飛んで逃げたのはむしろ攻撃的な個体の方でした。
少し離れた黄葉に止まり直し、秋の日差しを浴びながら口吻を伸縮させています。
平和に順番待ちをすることに決めたのかな?

熟柿に残った3頭のうちの2頭が急に活動的になり、翅を開閉しながら熟柿の上を歩き回るようになりました。
左側の個体が吸汁しながら翅を広げた状態で腹端を高々と持ち上げると、透明な液体を4滴ポタポタと排泄しました。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。(@0:34)
キタテハ成虫の排尿シーン(おしっこ、小便)を見たのはこれが2回目です。


▼関連記事(3年前の撮影:やや白く濁った透明な液体を一滴排泄)
セイタカアワダチソウの花蜜を吸いながら排泄するキタテハ秋型

やがて、上の枯葉で順番待ちをしていた個体が痺れを切らしたように熟柿へ舞い戻って来ました。
今度も先客の翅裏を踏みつけて強引に割り込み、吸汁開始。

私には未だキタテハの性別を見分けられないのですが、4頭とも熟柿に夢中で配偶行動は全く見られませんでした。

引きの絵にすると、カキノキの樹上には多数の黄色い果実がなっていました。
熟した果実は少なく、ほとんどが見るからに未だ固そうです。
黄葉・紅葉も進んでおらず、大部分の葉が緑色のままでした。
数少ない熟柿から漂う発酵臭に誘引されてキタテハが集まってきたのでしょう。




桑の木で集団婚活するキボシカミキリ♀♂




2019年10月下旬・午後16:15頃

川岸に自生するヤマグワ灌木の幹に多数のキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)が群がっていました。
これほど多数のキボシカミキリムシを一度に見つけたのは初めてで、とても興奮しました。

宮沢輝夫『山形昆虫記』によれば、

(キボシカミキリを)県内でよく見られるようになったのは近年のこと。県内では1970年代に生息が確認され、数を増やしている。


夕日を浴びたクワの幹でマウントし交尾中の♀♂カップルが何組もいます。
(この行動を「交尾中」と呼ぶのは不正確で、正しくは配偶者ガードでした。詳しくは改めて別の記事にします。)

単独で桑の幹を徘徊する独身♂も何匹かいました。
交尾相手の♀を探索しているのでしょう。
桑の根際でも活動しており、近くの林床を徘徊中の個体も居ました。(画面右上@1:04)

キボシカミキリ♀♂2組@ヤマグワ幹+交尾後ガード+あぶれ♂@探雌徘徊
キボシカミキリ♀♂@ヤマグワ幹+交尾後ガード



ヤマグワの葉は虫食い穴だらけでしたが、幸い落葉前だったので、樹種を同定することが出来ました。
桑はキボシカミキリの寄主植物のひとつです。

ヤマグワ葉@キボシカミキリ産卵木


ヤマグワの材中に穿孔して潜むキボシカミキリの幼虫が排泄したと思われるフラス(糞と木屑)も見つけました。

キボシカミキリ幼虫フラス(排泄痕)@ヤマグワ幹

キボシカミキリ♀♂の配偶行動を集中的に観察できたので、これから詳しく連載します。

つづく→寄主ヤマグワに飛来したキボシカミキリ♂の探雌行動







2020/04/20

ツマグロヒョウモン♂の求愛行動と♀の交尾拒否【HD動画&ハイスピード動画】



2019年10月下旬・午後13:25頃・晴れ

郊外の道端に咲いたセイタカアワダチソウの群落で多数のツマグロヒョウモン♀♂(Argyreus hyperbius)が訪花していました。
いつもと少し違うフィールドに足を伸ばしてみたら、過去最多の目撃個体数で驚きました。
ここ雪国でツマグロヒョウモンは越冬できないはずなのに、近年の地球温暖化で北進の勢いが増しているのでしょう。
全く珍蝶では無くなり、もはや普通種です。
翅が無傷のきれいな個体ばかりなので、台風による迷蝶とは考えにくいです。
個体の密度が高ければ同種の異性が出会う確率も高まり、おかげで私も念願の求愛行動を観察することが出来ました。



ツマグロヒョウモンは前翅の斑紋が分かりやすい性的二型ですから、野外観察中でも容易に雌雄を見分けることが可能です。
前翅の表側(上面)が名前の通り「端黒つまぐろ(前翅頂の周辺が黒い)」になっているのが♀の特徴です。

♀が翅を全開にしてセイタカアワダチソウの花蜜を吸っていると、その周囲を♂が忙しなく探雌飛翔しています。
♂が♀を見つけて近づこうとすると、♀は嫌がってセイタカアワダチソウの花から離れ、横のコンクリートブロックに避難しました。
追いかけてきた♂がホバリング(停空飛翔)で求愛しても、♀は半開きの翅を小刻みに震わせながら腹端を少し持ち上げました。
これはシロチョウ科と共通の交尾拒否姿勢です。
脈なしと悟った♂は諦めて飛び去りました。

♀がセイタカアワダチソウの花穂に戻って吸蜜を再開すると、戻って来た♂が♀の背後でまたしつこく求愛を始めました。
ツマグロヒョウモン♂の前翅には他のヒョウモンチョウ類♂と同じく発香鱗と呼ばれる特殊な鱗粉があるのですかね?(手元の資料を調べても分かりませんでした。)
だとすると、♀の背後で停飛する♂は、発香鱗の性フェロモンを♀に嗅がせるために羽ばたいて風を送っているのでしょう。
ところが♀はすぐに交尾拒否姿勢になり、厄介な♂のセクハラから隠れようと逃げ回ります。
セイタカアワダチソウの花穂の下側に回り込めば、♀の特徴である翅表が上空から見えなくなるのでしょう。
♀に拒否された♂は強引に交尾することはなく、紳士的に飛び去ります。
しかしすぐにまた戻ってきて求愛を試みます。

求愛と交尾拒否が何度も繰り返されるので、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:56〜)
スローモーションで見ると一層よく分かります。

ツマグロヒョウモンに限らず、蝶の求愛が成就して交尾が成立する一連の過程を私は未だ一度も見たことがありません。
♀は羽化直後に一度しか交尾しないのかな?


ツマグロヒョウモン♀@セイタカアワダチソウ訪花吸蜜+交尾拒否姿勢
横のコンクリート壁に逃げて交尾拒否姿勢
ツマグロヒョウモン♀(左)@セイタカアワダチソウ訪花吸蜜+交尾拒否姿勢+♂(右)@求愛飛翔
♂上、♀下

同じタテハチョウ科のキタテハPolygonia c-aureum)秋型もツマグロヒョウモン♀と一緒に吸蜜していましたが、別種なので互いに無関心でした。
大きさを比べると、キタテハ<ツマグロヒョウモン。

ツマグロヒョウモン♀+キタテハ秋型@セイタカアワダチソウ訪花吸蜜


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