2014年5月下旬
最近捕獲した2匹目の♂も同じ容器で飼い始めました(♂2♀1の計3匹)。
以前、♀♂間の闘争行動(小競り合い)を観察しました。
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足蹴りで喧嘩するヤマトゴキブリ♂♀
ヤマトゴキブリ(Periplaneta japonica)長翅の成虫♂同士の喧嘩も脚で蹴り合うことが分かりました。
ゴキブリは集合フェロモンで群れる性質があるのに、「これ以上近づくな!」という牽制行動をするようです。
闘争の際に激しい噛み付き行動などは見ていません。(参考:『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p90)
その間、短翅の♀は枯れ葉の下に隠れています。
引き続き観察しても求愛・交尾行動は見られなかったので、♀を巡って♂同士が争っていたのではないと思います。
個体間で序列を付けている可能性はありますが、その解明には個体識別のマーキングが必要です。
油性ペンで標識すると、インクの匂いがゴキブリの求愛交尾行動に支障を来す恐れがある気がして止めました。
『エソロジカル・エッセイ:無名のものたちの世界III』という古本にヤマトゴキブリの近縁種であるクロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)の「間おき集合(spaced-out gregariousness)」について記した章がありました。
p136-137をかいつまんで引用すると、
・集合性昆虫といわれながら、行動を一つ一つリストアップしていくと、攻撃行動、防衛行動、牽制行動ばかりが目立ってくる。
・ある場所を占めた個体は、雌雄を問わず、明らかに占有場所の防衛を行う。・順位制があるようでもあり、ないようでもある。
・主な能動的行動は、触角を他個体のいる方向に伸長し、ドラミングに似たような探りを入れる行動(さぐり)と、より積極的に、方向転換し、相手に対面し、後脚を浮かし、前のめりのようなかっこうで探りを入れる行動(のぞき)である。これらに対し、受動側が無反応という場合は少なく、多くの場合、
(1)能動行為者をいなすような感じで、向きをかえる(回転)か、刺激の少ない方向へ少し移動する(よけ)行動、
(2)体を高く持ち上げ、体を左右にゆすったり(ゆすり)、主に後脚を用いて能動行為者をける(けり)という牽制行動、
(3)はじかれたようにとびのく(とびのき)、または一目散に逃走する行動(逃走)のいずれかが観察された。
そしてたいてはこれで終りで、再び静かな「間おき集合」が回復するのである。
2014年5月下旬
低山の山道に咲いたヤブデマリでウスバアゲハ♀(Parnassius citrinarius)が訪花していました。
腹端に交尾嚢を付けています。
複数個体を撮影。
ちなみに日本海側に分布するヤブデマリは葉裏の毛が少なく、ケナシヤブデマリと呼ばれるらしい。
2014年5月下旬
里山の林床で食事中のニホンカナヘビ(Takydromus tachydromoides)を見つけました。
尾が短い個体で、過去に天敵に襲われ緊急避難のため尾を自切したようです。
カナヘビは首を激しく振って獲物を頭から丸呑みしようとしています。
餌食となった昆虫は腹部に黒と黄色の縞模様があり、ハチの仲間に見えました。
ミューラー擬態の警告色があってもカナヘビには通用しないようで、構わず捕食しています。
カナヘビは色盲なのかな? (※追記参照)
(未だハチから痛い目に会ったことのない若いカナヘビなのかもしれません。)
捕食メニューを同定するため獲物を奪い取ろうか躊躇したのですが、捕食シーンを最後まで見届けたくて、そのまま撮影を続行。
こういうジレンマのことを「虻蜂取らず」とは良く言ったものです。
カナヘビはスギの枯葉の上で見事な保護色になっています。
@0:45 獲物を飲み込めずに嘔吐し、舌舐めずり。ハチが最期の反撃として毒針で口の中を刺したのかと思いました。ところが獲物は死んでいるようで、もう動きません。
@1:50 アリが獲物を奪って巣へ運ぼうとします。
@2:20 泥棒アリに気づいたカナヘビが獲物を盗られないよう咥え直しました。反転して再び地面に獲物を置きました。
@3:05 右手からやって来たオオゾウムシ?に反応したカナヘビが再び獲物を咥えて左手に逃げました。林床を少し走り、また地面に獲物を置きました。
@3:52 私が撮りながら横に移動してアングルを確保すると、カナヘビは警戒して再び獲物を咥えました。獲物を横に咥え、飲み込もうと咀嚼しています。カナヘビは爬虫類なので、歯が生えているはずです。
@5:08 得物を地面に置きました。
@5:30 また獲物を咥え、噛んで飲み込もうとしています。私が撮りながら再び横に移動するとカナヘビは警戒して獲物を咥えたままフリーズ。映像をよく見ると、カナヘビのすぐ左にセミの幼虫が地面から露出しています。カナヘビはこれも食べるかと思いきや、気づいていない様子。
@7:30 長撮りで疲れてきたので、背負っていたザックを下ろしました。
@8:20 カナヘビが食事再開。ひたすら獲物を噛み砕いています。
@9:50 カナヘビは移動開始。ようやく獲物をほとんど呑み込みました。顔を枯れ枝に擦り付けた際に獲物の欠片が付着。
@10:20 遂に完食したカナヘビが舌舐めずり。鼻面に食べ残しを付けています。
@11:57 画面の上から徘徊性の黒いクモ(コモリグモの一種?)が登場。
@12:12 カナヘビの目の前を通り過ぎた瞬間、クモに飛びかかりました。後ろ姿なので、狩りの成否は不明です。おそらく失敗した気がします。
@12:51 引きの絵で撮影終了。
以上、完全ノーカットでお届けしました。
いつか是非カナヘビの飼育にも挑戦してみたいものです。
ところで、背後の林で鳴いているセミは調べてみるとエゾハルゼミでした。
今季の初鳴きです。
【追記】
ミノウスバ幼虫の警告色をカナヘビで研究した常喜豊『ミノウスバの体色の意味』によると、
・(ミノウスバ)幼虫の体色は、クリーム色の地に7本の黒い縦縞という、非常によく目立つものだ。幼虫は強く押さえると、妙な匂いのする透明な液の玉を体表に分泌する。(『虫たちがいて、ぼくがいた:昆虫と甲殻類の行動』第2-4章p90より引用)
・カナヘビはミノウスバ幼虫を発見すると、近寄って舌で幼虫に触れ、その後かみつく。ところが、すぐさま幼虫を放し、人間から見ればさもまずい物を口にした、という調子で口を何度も地面にこすり付ける。(忌避反応。 p91)
・カナヘビはミノウスバの体色を、ゆっくりとではあるが警告色として学習していたのである。(p93)
ミノウスバ分泌液の忌避効果は強烈な苦味のキニーネに匹敵するらしいのですが、ヒキガエルは平気で捕食し、一気に飲み込んでしまうそうです。
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左下にセミの幼虫が地面から露出 |