2010年5月中旬
林道でミヤマセセリ(Erynnis montanus)が木の枝に止まっていました。
初めは♀が産卵しているのかと思いました。
しかし近付いてよく見るとどうやら♂で、口吻を伸ばし新芽を頻りに舐めています。
残念ながら樹種も不明ですが、蜜腺があるのだろうか。
アブラムシが分泌した甘露が付いているのだろうか。
それとも何か食草由来の成分を摂取して♀を惹きつける性フェロモンの原料とするのだろうか。(※ 追記2を参照)
普通に蜜を吸える花は他にもたくさん咲いていたので、ちょっと不思議な行動でした。
本当に甘いのか自分でもその芽を舐めてみればよかったですね。
【追記】
福田晴夫、高橋真弓『蝶の生態と観察』という専門書の第二章で「成虫の摂食行動」についてまとめられていました。
その中で今回の生態動画と関連しそうな記述がありました。
植物の新芽からの分泌物
西表島でトベラの新芽から分泌される透明な液に多数のリュウキュウヒメジャノメ(♀♂を含む)が集まるのを観察した。これは樹液に準ずるものであろう。 (p33より引用)私が観察した組み合わせとは全く異なりますが、日本の蝶類で似たような観察例がある、というだけでも心強い情報です。
※【追記2】
桑原保正『性フェロモン―オスを誘惑する物質の秘密 (講談社選書メチエ)』によれば、
昆虫の世界では、ふだんの食草にない成分を親になってから集め、化学的に修飾して防御物質や性フェロモンとして利用する現象が多く見つかるようになった。 このような現象を薬物摂食(ファーマコファギー;pharmacophagy)という。 (p191より引用)例として、北米のオオカバマダラ♂が野外でノボロギクに集まって枯れ枝についた露を飲み、そこに含まれるアルカロイドを摂取して体内で性フェロモンになるそうです。この物質は捕食者の昆虫や動物に肝臓毒として働き、オオカバマダラを防御する物質としての機能もあるらしい。