2021/10/16

顔にタカラダニを付けたオオイシアブ♀の待ち伏せ・飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年7月下旬・午前11:45頃・晴れ

里山の林道で倒木の上に大型のアブがいました。 
おそらくオオイシアブ♀(Laphria mitsukurii)ではないかと思うのですが、腹背を撮れてないので定かではありません。 
その顔に鮮やかなオレンジ色のタカラダニが1匹付着してます。(体外寄生?) 
アブが身繕いして異物を払い落とさないということは、タカラダニの存在に全く気づいていないのでしょう。
オオイシアブは顔を上下に動かして、油断なく上空を見張っています。 
性別の見分け方が私には分からないのですが、 ♀なら獲物の待伏せですし、♂なら縄張りを張って♀を待ち伏せしてる可能性も考えられます。 
オオイシアブだとすると、胸部が黒いので♀らしい。

飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:08〜) 
左右をキョロキョロ見渡してから急に飛び去りました。

山形県に泥を塗るスズバチ♀:造巣行動

 

2021年7月下旬・午前6:20頃・くもり 

里山の苔むした山道の道端にコンクリート製の境界標が点々と打ち込まれており、その1つにスズバチOreumenes decoratus)の初期巣を見つけました。 
ここには築坑性の狩蜂がたまに泥巣を作るので、通りかかる度にチェックしていたのです。
関連記事(6年前のまとめ記事)▶ 境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察:2015年
境界標(12cm×12cm×40cm)の東側面に「山形県」と刻印されています。 
その「山」という文字の第1画の縦溝に沿って下端に小さな徳利状の泥巣がありました。 
泥巣の一部は未だ湿っており(周囲と色が違う)、作りかけの状態と分かります。 
巣口は地上30cmの高さで開口したままです。 
泥巣内部を覗いても暗くて貯食物の有無は見えませんでした。 
おそらく1番目の育房に貯食する前の造巣段階と思われます。 
ストロボを焚いて泥巣の写真を撮ると、境界標の赤く塗られたコンクリート側面を巣の内壁としてそのまま使っていました。(巣材の節約)
私が定規を当てて泥巣を採寸していたら(横幅2.5cm×縦2.0cm)虫の羽音♪が聞こえ、振り返ると泥玉を咥えた母蜂が帰って来ました。 
巣材集めから帰巣したようです。 
動画では周囲の蝉しぐれにかき消されて、蜂の羽音は聞き取れませんね。 
スズバチ♀は警戒して私の周囲を飛び回り、私に対して少し向かって来ました(動画撮り損ね)。 
「すまん、すまん」と侘びつつ私が少し巣から離れると、スズバチ♀は境界標に着陸しました。 
羽ばたきを止めるとスズバチ♀はまず泥巣全体を点検して回ります。 
巣口の中も覗き込みました。 
やがて巣材の泥玉を初期巣の外壁に少しずつ塗り始めました。 
背側からでは肝心の造巣作業の様子があまりよく見えません。 
母蜂の側面から撮りたかったのですが、私が下手に動くと逃げられそうなので、今回はこのまま背面から撮影します。 

スズバチ♀は大顎の裏面と前脚の間に湿った泥玉を抱え込んでいます。 
巣口を形成する徳利のくびれた首の部分の下面に巣材を追加しました。 
次は泥巣の左端に巣材を追加し、境界標との境目の部分を強化しました。
造巣作業中は翅を斜めに広げています。 
作業の途中に泥巣上で少し羽ばたいたのは、巣材の泥を乾かしているのでしょうか? 

ヒメクモバチ♀とは異なり、スズバチ♀は腹端を左官のコテのように使うことはありませんでした。 
大顎(および前脚?)だけを使って左官屋の仕事をしています。
関連記事(6年前の撮影)▶ 山形県に泥を塗るヒメクモバチ♀【10倍速映像】
ろくろも使わずに徳利状の泥巣を一から作り上げるドロバチ類の本能行動には感嘆します。 
持って来た泥玉を使い切ると、スズバチ♀は飛び去りました。 
巣の位置は既にしっかり記憶しているらしく、定位飛行はやりませんでした。 

スズバチは私のフィールドでよく見かける普通種です。 
♀が巣材集めする行動は散々観察してきました。 
念願(悲願)の造巣シーンを初めて観察できて、感無量です。 
こんな早朝から巣作りするとは知りませんでした。

※ 現場はかなり薄暗い林縁なので、手持ち夜景モードで動画撮影しました。
   
スズバチ♀が戻る前に、営巣地の周囲の状況を調べてみましょう。 
苔むした山道の両側に境界標が点々と(非等間隔で)並んでいます。 
今季ドロバチ類の泥巣が作られたのは、そのうち1箇所だけでした。 
同じ規格サイズの境界標が並んでいる繰り返しパターンなのに、帰巣時に母蜂が迷子になってないことを示唆しています。 
境界標が等間隔に並んでないことがミソのようです。 
営巣地となった境界標の周囲の茂みの様子などをスズバチ♀は正確に記憶しているのでしょう。 

次は造巣の過程を微速度撮影で横から記録しようと、境界標の近くに三脚を立てて母蜂の帰りを待ち構えます。 
また、寄生蜂(オオセイボウやキアシオナガトガリヒメバチなど)や寄生バエ(ドロバチヤドリニクバエなど)が寄主スズバチの泥巣を物色に来るのではないか?と期待しました。 

ところが、待てど暮せどスズバチ♀が帰って来ません。 
泥巣が乾くまで待っているのかもしれません。 
素人目には1番目の育房は未完成ですけど、獲物(蛾の幼虫)を狩りに出かけたのでしょうか? 
ヤブ蚊の襲来に閉口した私が虫除けスプレーを噴霧したせいだとしたら、痛恨のミスです。 
私なりに気を使って営巣地から少し離れた所でスプレーを掛けたつもりなのですが、虫よけのきつい匂いを繊細なスズバチ♀は嫌ったのかな? 

スズバチを待っている間、頻繁に飛来するカノコガAmata fortunei)が紛らわしくて仕方ありません。 
蜂にベーツ型擬態している蛾なので、毎回ドキッとします。 
群飛というほどではないものの、多数のカノコガが低空で辺りを飛び回っていました。 

暇を持て余した私は他の被写体が気になり、少し現場を離れることにしました。 
ススキの細い葉先をちぎり、目印としてスズバチの巣口に差し込んでおきます。 
もし私の留守中に母蜂が帰巣すれば、邪魔な障害物を取り除くはずです。 
しばらくして私が戻って来ても、巣口の草葉はそのままでした。 





実は現場から少し離れた渓流沿いの崖で、採土していたスズバチを目撃しました。 
同一個体の母蜂かどうか不明です。 
営巣地の近くでも巣材の泥や水飲み場は豊富にありそうなので、こんなに遠出するかどうか疑問です。 
私が余計なことをしたばかりに、巣口の異物を警戒した母蜂が造巣を中断し泥巣に近づかなくなってしまったのでしょうか? 

せっかく作りかけのスズバチ泥巣を見つけた千載一遇の機会を逃すまいと、無理して数日後にも現場を再訪したのですが、残念ながらスズバチの造巣行動は二度と観察できませんでした。
母蜂の身に何かあったのかもしれません。(天敵に捕食された?)

2021/10/15

獣糞で吸い戻し中のキバネセセリ♂の翅に寄生蜂が産卵?!

前回の記事:タヌキの溜め糞にオシッコをかけて吸い戻しをするキバネセセリ♂
2021年7月中旬・午後15:30頃・晴れ 

山道に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞で吸い戻しを繰り返すキバネセセリ♂(Bibasis aqulina chrysaeglia)の動画を撮っていたら、興味深い瞬間がたまたま撮れていました。 
メタリックに輝く微小の蜂(種名不詳)が飛来して、キバネセセリ♂の閉じた左前翅の裏面にぶつかってきたのです。 
なんとも思わせぶりな行動をまずは1/10倍速のスローモーションでご覧ください。 
直後に等倍速でリプレイ。 
これは偶然のうっかり衝突事故ではありません。 
なぜなら、ぶつかる直前に蜂はキバネセセリの翅の手前でホバリング(停空飛行)して狙いを定めていたからです。 
蜂はチョウの左前翅の裏面にほんの一瞬着陸しただけで、すぐに飛び去りました。 

寄生蜂♀が寄主に産卵したのではないかと私は疑いました。 
しかし勉強不足の私は、チョウの成虫に寄生する蜂を知りません。(見たことも聞いたこともありません。) 
成虫の寿命が長い種類のチョウに産卵しないと、寄生蜂は次世代を残せないでしょう。
また、寄生蜂がチョウに産卵するのなら、寄主の胴体に産卵しそうなものです。 
寄主の翅の表面に産卵したら、よほど強力な接着剤で卵を固定しない限り、激しく羽ばたく際に振り落とされてしまうでしょう。 
卵から孵化した寄生蜂の幼虫は自力で這って寄主の翅裏から移動し、栄養豊富な胴体に食いつくのかな? 
あるいは寄生蜂♀は一瞬の早業で産卵管を寄主に突き刺して翅の組織の内部に卵を産みつけたのかもしれません。(体内寄生)
いくら目を凝らして映像を見直しても、蜂が飛び去った後のキバネセセリ♂の翅の表面に微小な卵は見つけられませんでした。(鱗粉のサイズよりも小さいのであれば、肉眼で見るのは不可能です。)

果たしてこんな奇妙な寄生蜂がいるのかどうか、何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたらお知らせ下さい。 
動画撮影中の私は現場でこの出来事に全く気づかなかったので、残念ながら問題のキバネセセリ♂を採集・飼育できていません。 

次の一手としては、山中でキバネセセリを大量に採集して室内飼育し、寄生蜂が羽化してくるかどうか調べるのが正攻法でしょう。
想像しただけでも大変そうで気が遠くなりますけど、だからこそ今まで誰も調べなかったのかもしれません。
そもそも私はフィールドでキバネセセリを滅多に見かけません。

それともやっぱり、ただの偶然の衝突事故ですかね? 


【追記】
1月後に標高は違うものの同じ里山で別な溜め糞でも見かけました。
このときはキバネセセリとは無関係で、獣糞に(又は獣糞内のハエの卵や幼虫?)産卵しているようでした。
関連記事 ▶ タヌキの溜め糞に来た謎の微小な寄生蜂?【名前を教えて】



【追記2】 

翌年、タヌキの溜め糞を注意深く見て回ると、メタリックに輝く微小のハエを見つけました。

翅紋を誇示しながら林床で身繕いするハネフリバエ科Euxesta属の一種

ハネフリバエ科Euxesta属の一種がタヌキの糞を舐め、肉食性ハネカクシ類から逃げ回る

ただし、体型が違うので別種かもしれません。

この記事の映像に写っているのも、蜂ではなくハエの可能性が高そうです。



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