2021/04/17

電柱の天辺から脱糞後に飛び立ち帆翔するチョウゲンボウ♂(野鳥)

 

2020年12月上旬・午後12:20頃・晴れ 

田んぼと住宅地との境界に立つ電信柱の天辺にチョウゲンボウ♂(Falco tinnunculus)が止まっていました。 
鋭い眼光で眼下の刈田を見下ろしています。 
何度も頷いているのは、両眼視で対象物をよく見極めるためでしょう。 
しかし眼の前をトンボが飛んで横切っても知らん顔。 
私が撮影アングルを変えるために目の前を歩いて横切っても逃げませんでした。 

やがて尾羽を持ち上げると、固形の糞を少量ポタリと排泄しました。 
チョウゲンボウの糞は電柱の天辺に付着しました。 
この電柱は鳥がよく止まる場所のようで、よく見るとあちこちが鳥の糞で白く汚れています。 
脱糞で体重を軽くすると、チョウゲンボウ♂は電柱を足で力強く蹴り出して飛び立ちました。 (脱糞は飛び立つ前兆)
ヒラヒラと羽ばたいて速度を上げると、滑翔に移行し、旋回を始めました。 
羽ばたきと滑翔を交互に繰り返しています。 
上昇気流に乗って青空を帆翔し、ぐんぐん行動を上げていきます。 
この間、鳴き声は全く発しませんでした。(聞き取れず) 
脱糞および飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

チョウゲンボウ♂が飛び立った直後に近くの鉄道を列車が通過しました。 
たまたまかもしれませんが、列車の騒音を嫌って飛び立ったのかな? 
(脱糞したのは列車が来る前でした。) 
 狩りのためのホバリングを見れるかと期待したのですが、ちょっと残念でした。




 

繭塊から続々と羽化するサムライコマユバチ【10倍速映像】寄主ナシケンモン(蛾)幼虫

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#12

前回の記事:▶ 繭塊の外で蛹化したサムライコマユバチ:寄主ナシケンモン(蛾)幼虫
2020年11月中旬・午後22:00〜翌日の午後12:45・室温〜21℃ 

前回の動画から3日後。 
寄主から脱出して繭塊を紡いでから11日後。 
円筒形の透明プラスチック容器(直径7.5cm、高さ8cm、綿棒容器を再利用)に閉じ込めておいた繭塊から、いよいよサムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)成虫の羽化が始まりました。 
プラスチック越しの撮影は不鮮明になるので、予め密閉容器の蓋代わりにサランラップを張っておきました。 
ところが、いざ接写しようとすると室内の照明がサランラップに反射して白飛びしてしまい、セッティングに苦労しました。 

10倍速の早回し映像をご覧ください。 
フワフワの白い繭塊の中から黒っぽい寄生バチが頭から苦労して這い出してきます。 
繭の絹糸を大顎で噛み切りながら脱出路を切り開くのか、それとも絹糸を分解する消化酵素を吐き戻しているのか、不明です。
(1匹ずつ蜂の口元をもっと拡大して接写するべきでしたね。) 
無事に羽脱した新成虫は繭塊の表面に留まって身繕いしてから徘徊を開始。 

もっと多数の個体が一斉に羽化してくるかと期待したのですけど、かなり間隔を空けて五月雨式の羽化でした。 
自然界でも夜に羽化が始まるのだとしたら、撮影用の照明が眩しいせいで羽化が抑制されてしまったのかもしれません。 
長撮りした素材から羽化のシーンだけを抜粋し、成虫がこれから脱出してくる部位を赤い丸で示しました。 

羽化がいつもスムーズに行くとは限りません。 
脱出孔から仰向けに出てしまった個体は、繭塊表面の絹糸に翅が絡まってしまい、長時間もがいていました。 
疲労困憊でときどき休みながらも、ようやく自力で脱出することが出来ました。 
揺り籠があわや死のトラップと化すところでした。 
翅が繭の絹糸に絡まってシワクチャになっても、脱出直後には自然と真っ直ぐ伸びるのが蜂の羽化に特有です。 
チョウなどの鱗翅目なら羽化不全(翅の奇形)になるはずです。 

後半(@2:40〜)は等倍速の映像です。 
私にはサムライコマユバチ成虫の性別が見分けられません。 
枯葉の上で休んでいた新成虫が別個体と遭遇しても、2匹は交尾せずにすぐ別れました。 
翌日になると、密閉容器内で多数の寄生バチが歩き回っていました。 
ときどき容器内を飛び回る個体もいます。 

 

↑【おまけの動画】 

等倍速の映像と長撮りしたタイムラプス映像(10倍速)ノーカット版をブログ限定で公開しておきます。 


2021/04/16

コガラがヤマガラの貯食物を横取り?(野鳥)

 

2020年11月下旬・午後12:20頃・くもり

平地の池を囲む雑木林でカラ類の混群を観察していると、コガラPoecile montanus)も苔むした柳の幹に止まり、樹皮や苔をつついていました。 
樹皮の下などで越冬している虫を探して食べるつもりなのでしょうか? 

遂にコガラが樹皮の隙間から何か丸い粒状の物を見つけ出して持ち去りました(@1:57)。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
餌を咥えたまま下に飛び降りました。 
これは先程、ヤマガラが貯食していた(あるいは食べていた)木の実とそっくりです。
前回の記事:▶ 木の実を樹皮の下に貯食するヤマガラ(野鳥)
ひょっとすると、ヤマガラが苦労して隠した木の実をコガラが探してこっそり横取りしているのかもしれない、と思いつきました。 
だとすればコガラの行動は労働寄生(盗み寄生)ということになります。 

案の定、コガラがヤマガラに猛スピードで追いかけられているシーン(混群内での小競り合い) がたまたま撮れました。(@0:33)
私の勝手な想像ですけど、貯食したばかりの木の実をコガラが盗み取ろうとしていることに気づいたヤマガラが怒って襲いかかったのかもしれません。 
慌てたコガラは華麗な三角跳びで逃げて行きました。 
激しい大喧嘩にはならず、ヤマガラの追跡をまいたコガラは何食わぬ顔で探餌行動を続けています。 

混群としてヤマガラと行動を共にしている他のカラ類は、ヤマガラがせっかく苦労して幹の割れ目などに隠した木の実を探し出して隙あらば横取り(盗み食い)しようとしているのでしょうか?
ヤマガラが木の実を頻繁に隠し直す理由もそれで説明できます。 
互いにメリットがあるからこそ異種のカラ類が混群を形成しているはずですけど、ヤマガラは泥棒につきまとわれて迷惑しているのかもしれません。 
仲良く共生しているイメージがある混群も、その実態は殺伐とした寄合所帯なのかもしれません。
しかし資料によると、コガラも貯食することが報告されているそうです。(『エソロジカル・エッセイ 無名のものたちの世界IV』p10より) 
だとすれば、私の妄想はコガラにとって濡れ衣(冤罪)になります。 
コガラが自分で貯食した木の実を自分で食べたり、隠し場所を変更したりしていただけかもしれません。 
決定的な証拠映像が撮れるまでは、個人的な仮説として頭の片隅で温めておきます。 

※ カラ混群の鳴き声を聞き取れるように動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。



【追記】
ピッキオ『鳥のおもしろ私生活』でコガラの習性を調べる
と、
彼らが雪山に残れる秘訣は、秋のうちからの食糧の貯蔵である。(中略)10月に採った食物の9割近くはたくわえに回すという。樹皮のすき間などに種子を押し込んで冬への備えとするのだ。しかも、場所が気に入らないのか、他人にみつかりたくないのか、せっかく隠した食物の移しかえを頻繁に行う。
アザミ類やヨモギ類など、草の種子をたくさん食べたりたくわえたりするのも、カラ類の中ではコガラだけである。(p92〜93より引用)



【追記2】 

上田恵介『鳥はなぜ集まる?―群れの行動生態学』という本で混群の意味を考察した第12〜13章を読み返すと、昆虫食の側面からカラ混群を論じていました。

・混群が形成される森林環境では、昆虫の種類が豊富で、一種当たりの数が少なく、広い範囲に分散しています。(p150より引用)

・混群をつくるカラ類のくちばしはよく見るとさまざまな形をしている。(p151より)

・混群をつくるカラたちで採食方法はかなり異なっています。ということは捕らえる虫の種類も種によって異なるということです。

・カラ類では採餌の空間も異なります。(p152より)

・混群をつくる鳥たちはエサをめぐって、生存にかかわるような激しい競争を繰り広げる必要がありません。(といっても、これは結果であり、過去において厳しい競争があったからこそ、多様な昆虫食の鳥が進化したと考えることもできます。)それなら争いに無駄なエネルギーを浪費するより、共同行動を発達させた方が有利です。昆虫食の鳥で混群形成という生活手段が進化してきたのは、森林の昆虫資源を有効に開発・利用するひとつの必然だったのだと思われます。(p153−154より引用)

ニッチを分けて共存しているという教科書通りの解説で一応納得するのですが、木の実を貯食する行動との関わりについては全く触れられていませんでした。

嘴の構造上、ヤマガラしか割れない木の実を貯食するならともかく、別種のカラ類でも食べやすい小さな木の実を貯食すると盗まれやすいはずです。

冬の森で樹皮をつついたり苔をめくったりして餌(越冬昆虫)を探す方法も素人目にはカラ類ではほぼ共通して見えます。

誰かが貯食した木の実を偶然見つけたら喜んで食べてしまうでしょう。

特に自ら貯食する習性のある種類の鳥は、木の実をどこに隠しやすいか熟知しているはずです。

つまり貯食・種子食という面ではカラ類の種間でニッチが充分に別れておらず競争が生じてしまう(混群のデメリット)気がします。


・多くの種がいりまじって行動している混群の中でも、カラたちはそれぞれの種ごとにまとまって、種群として行動しています。(同書p137より引用)

・混群のメンバーはいつも仲よくしているわけではありません。時には争いもあります。(p138より)

・カラ類の混群でも構成メンバーは折あらばと他のメンバーの隙を狙っているといえます。(p139より)

種によって独自の隠し場所あるいは隠蔽法を開拓するように、これから行動が進化するかもしれません。


 

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