民家の庭木が落葉した後に、コガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の古巣を見つけました。
初冬でコロニーが解散した後ですから、成虫の出入りはありません。
コガタスズメバチはヒトへの攻撃性がそれほど高くなく、当地(東北地方の雪国)では巣があまり大きく育ちません。
夏に横を通りかかっても巣の存在に気付きませんでした。
このように「知らぬが仏」という事例が多いことから、少なくともコガタスズメバチに関しては、人家の近くに巣を作っても、ほぼ問題なく共存できると私は考えます。
コロニーが解散するまで干渉せずに放っておけば良いのです。
下手に駆除しようとするから、蜂に反撃されて刺傷事故が起きるのです。
むしろコガタスズメバチが庭木に営巣したおかげで、周囲の庭や家庭菜園で害虫の発生が抑えられたはずです。
ヒトの知らない間にスズメバチは重要な生態系サービスを担っています。
ミツバチなどのハナバチ類が植物の花を受粉してくれる生態系サービスについては一般人でも理解されているようですが、スズメバチやアシナガバチなど社会性カリバチについてはその危険性ばかりが過剰に喧伝されているのが残念です。
蜂好きが「べき論」を言ったところで反感を買うばかりですが、身近にスズメバチの巣を見つけたら、まずはその種類を正しく見分けることが大切です。
巣の形状や営巣環境などからスズメバチの種類をおおよそ推測することができます。
マスコミがオオスズメバチへの恐怖を毎年煽るので強烈な印象に残り、虫に詳しくない人は最悪を想定してしまいがちです。
しかし、必ずしもオオスズメバチの巣とは限りません。
オオスズメバチは地中に営巣する種類であって、樹上には決して巣を作りません。
そもそもオオスズメバチが営巣するのは、よほど自然豊かな環境(山林)になります。
知識がなくて不必要に怖がる結果、スズメバチに対して不寛容になっている(見つけ次第、皆殺しにすべきだ!)ケースが多いと私は感じます。
完全に落葉した後でも特徴的な翼果が枝に残っていたことから、営巣木の樹種はカエデの仲間[(おそらくイロハモミジ(=イロハカエデ)]と分かりました。