2023/12/29

サルナシの果実を食べてみる

2022年10月上旬

河畔林のオニグルミ灌木に巻き付いた謎の蔓植物に果実がつきました。

図鑑で調べてみると、名前だけは聞いたことのあるサルナシ(マタタビ科)でした。

 



緑色で熟しているかどうか分からないのですけど、果実を1個採取し、ナイフで輪切りにしてみました。
切り口になぜか粘り気があります。


2022年10月中旬

19日後に現場を再訪すると、手の届く範囲のサルナシ果実は無くなっていました。
野生動物が食べ尽くしたのか、それとも通りすがりのヒトが誰か採取したのかな?

蔓を強引に引き寄せて、残った熟果をなんとか1房(5個)だけ採集しました。
果実が熟しても果皮は緑色のままで、表面がシワシワになるだけです。

採寸代わりに1円玉(直径2cm)を並べて写真に撮りました。
ナイフで輪切りと縦切りにしてみました。
断面の果汁に粘り気があります。


試食してみると、酸味が強いものの、確かにキウイフルーツと同じ味でした。
小さな種子のプチプチした歯応えも同じでした。
しかしサルナシは1個の果実が小さいので、食べごたえがありません。
食後に口内が少しピリピリするのは、アクチニジンと呼ばれるタンパク質分解酵素が含まれているからでしょうか。

多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』を紐解いてサルナシについて調べると、このタンパク質分解酵素の役割りについて興味深い話が書いてありました。
なるほどなぁ。

・キウイに似て美味だが、食べ進むと甘みを感じなくなり、苦痛になる。果肉中のタンパク質分解酵素で舌の味蕾がやられてしまうのだ。大食いの哺乳類が1回に食べる量を制限して、タネを少しずつ分散させるために酵素はある。

・種子の粒は小さく、サルやタヌキやクマの歯の間をすり抜ける。(p147より引用)

サルナシやキウイフルーツは熟しても果皮が色づかず地味なままなので、鳥類ではなく哺乳類に果実を食べてもらって種子を糞と一緒に散布してもらう戦略です。
サルナシの果実を食べる種子散布者としてはホンドテンやハクビシン、ニホンザル、ツキノワグマなどが予想されます。
(『身近な草木の実とタネハンドブック』にはタヌキも挙げられていましたが、木登りのできないタヌキは落果を食べるしかないでしょう。)

大井徹『獣たちの森 (日本の森林/多様性の生物学シリーズ 3)』という専門書によると、
哺乳類に食べてもらうための果実の特性としては色彩よりも匂いが大事なようであり、ケンポナシ、サルナシ、マタタビのように色は地味だが、甘く強い匂いを発する。(p136より引用)
しかし、今回サルナシの果実に甘い芳香を私は感じませんでした。(もっと熟す必要があるのかな?)

トレイルカメラを設置して、サルナシの実を食べに来る野生動物を観察してみたいところです。
しかし、この場所は川沿いの遊歩道のすぐ横なので人通りが多く、隠しカメラを設置したらトラブルになりそうです。
人里離れた山林に自生するサルナシを探しているのですが、なかなか見つかりません。
適当な場所にサルナシの種子をばらまいて育つのを待つ方が早いかもしれません。


同じ日の帰り道に、民家の庭の蔓棚でたわわに実ったキウイフルーツの熟果を2箇所で写真に撮りました。
東北地方の雪国でもキウイフルーツが育つとは最近まで知りませんでした。
品種改良すればサルナシの果実もこのぐらい大きく立派に育つのでしょうか。

民家aの蔓棚
民家bの大きな蔓棚

【追記】
2023年5月下旬
同じ場所に定点観察に通い、蕾の写真を撮りました。






その後は忙しくなってしまい、残念ながらサルナシの花を観察しそびれてしまいました。
訪花昆虫(サルナシの送粉者)に興味があるので、花を見るのは来季の宿題です。

同じ日に民家の蔓棚bで育つキウィフルーツの蕾も写真に撮っています。






次は6月中旬に定点で撮ったサルナシ未熟果の写真です。





2024年5月下旬

翌年もしつこく定点観察に通い、念願だったサルナシの花をようやく写真で記録することが出来ました。
撮影時刻が夕方だったためか、訪花昆虫(送粉者)の姿はありませんでした。

民家の蔓棚に植栽されたキウィフルーツが開花した頃を見計らってサルナシを見に行けばよいことが分かりました。











カキドオシの花蜜を吸うルリシジミ♀

 

2023年4月中旬・午後14:40頃・晴れ 

河畔林の林床に咲いたカキドオシの群落でルリシジミ♀(Celastrina argiolus)が訪花していました。 
晴れているのに、初めは翅を閉じたまま吸蜜していました。 
閉じた後翅を互いに擦り合わせています。 
春風が強く吹くせいであまり飛ばず、隣の花に歩いて移動します。 

後半からは花弁に止まったまま吸蜜を止め、翅を半開きにして日光浴に専念しています。 
前翅の外縁に太い黒帯があることから♀と判明。 
粘って撮影しても飛んでくれませんでした。 

近くでウグイス♂のさえずる鳴き声♪が聞こえます。 
春の林床に咲くスプリング・エフェメラルは、カキドオシに交代したようです。

2023/12/28

雨夜に巣材集めを始めたニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 




2023年5月中旬


シーン1:5/14・午後19:18・(@0:00〜) 
小雨がぱらつく晩に、ニホンアナグマ♀(Meles anakuma) がせっせと巣材集めを始めました。 
落ち葉などを前脚で抱え込みながら、右奥にある巣穴Rに後ろ向きで入りました。 
雨で巣材が濡れている(湿っている)はずなのに、気にせず搬入しました。 
すぐに同じ巣穴Rから外に出ると、身震いしてから左の二次林へ向かいました。 
ちらっとカメラ目線をくれた際に、右目の小さな♀個体であることが確認できました。 


シーン2:5/15・午前3:43・(@0:38〜) 
日付が変わった深夜未明、雨は止んでいました。 
♀が左手前の巣穴Lから外に出て来ました。 
画面の左端で軽く立ち上がると、低木に前脚を掛けました。 
カメラの死角で何か作業しています。
灌木の茂みがガサガサ動いているので、枝についた葉を直接採取して寝床(敷き藁、巣材)として集めているようです。 
落ち葉だけでは量が足りないのでしょう。 
少しずつ後退しています。 
巣穴に辿り着く前に、尻切れトンボで録画が終わってしまったのが残念です。 


シーン3:5/16・午前3:12・(@2:08〜) 
翌日も未明に♀が巣材を巣穴Rへと運び込んでいました。 
カメラの電池が消耗していて、細切れの映像になってしまいました。 


※ 動画の一部は、編集時に自動色調補正を施しています。 
残念ながら、この時期は1台のカメラでしか撮れていません。 


アナグマ関連の本を読むと、使い古した巣材や濡れた巣材を外に出して干すのだそうです。(寄生虫対策?) 
今回のアナグマは逆に、濡れた落ち葉を巣材として運び込んだので、とても驚きました。 
濡れ落ち葉は寝床として冷たいですし、地中でカビが生えたりしないのか?と心配になります。 
何か緊急事態が勃発し、新しい巣材が急遽必要になったのでしょうか? 
出産が近いので新しい巣材を産室に持ち込んだのか?と想像したものの、私の予想は外れました。 
この翌日になんと…。 


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