19日後に現場を再訪すると、手の届く範囲のサルナシ果実は無くなっていました。
野生動物が食べ尽くしたのか、それとも通りすがりのヒトが誰か採取したのかな?
蔓を強引に引き寄せて、残った熟果をなんとか1房(5個)だけ採集しました。
果実が熟しても果皮は緑色のままで、表面がシワシワになるだけです。
採寸代わりに1円玉(直径2cm)を並べて写真に撮りました。
ナイフで輪切りと縦切りにしてみました。
断面の果汁に粘り気があります。
試食してみると、酸味が強いものの、確かにキウイフルーツと同じ味でした。
小さな種子のプチプチした歯応えも同じでした。
しかしサルナシは1個の果実が小さいので、食べごたえがありません。
食後に口内が少しピリピリするのは、アクチニジンと呼ばれるタンパク質分解酵素が含まれているからでしょうか。
食後に口内が少しピリピリするのは、アクチニジンと呼ばれるタンパク質分解酵素が含まれているからでしょうか。
多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』を紐解いてサルナシについて調べると、このタンパク質分解酵素の役割りについて興味深い話が書いてありました。
なるほどなぁ。
・キウイに似て美味だが、食べ進むと甘みを感じなくなり、苦痛になる。果肉中のタンパク質分解酵素で舌の味蕾がやられてしまうのだ。大食いの哺乳類が1回に食べる量を制限して、タネを少しずつ分散させるために酵素はある。・種子の粒は小さく、サルやタヌキやクマの歯の間をすり抜ける。(p147より引用)
サルナシやキウイフルーツは熟しても果皮が色づかず地味なままなので、鳥類ではなく哺乳類に果実を食べてもらって種子を糞と一緒に散布してもらう戦略です。
サルナシの果実を食べる種子散布者としてはホンドテンやハクビシン、ニホンザル、ツキノワグマなどが予想されます。
(『身近な草木の実とタネハンドブック』にはタヌキも挙げられていましたが、木登りのできないタヌキは落果を食べるしかないでしょう。)
大井徹『獣たちの森 (日本の森林/多様性の生物学シリーズ 3)』という専門書によると、
哺乳類に食べてもらうための果実の特性としては色彩よりも匂いが大事なようであり、ケンポナシ、サルナシ、マタタビのように色は地味だが、甘く強い匂いを発する。(p136より引用)
しかし、今回サルナシの果実に甘い芳香を私は感じませんでした。(もっと熟す必要があるのかな?)
トレイルカメラを設置して、サルナシの実を食べに来る野生動物を観察してみたいところです。
しかし、この場所は川沿いの遊歩道のすぐ横なので人通りが多く、隠しカメラを設置したらトラブルになりそうです。
人里離れた山林に自生するサルナシを探しているのですが、なかなか見つかりません。
適当な場所にサルナシの種子をばらまいて育つのを待つ方が早いかもしれません。
同じ日の帰り道に、民家の庭の蔓棚でたわわに実ったキウイフルーツの熟果を2箇所で写真に撮りました。
東北地方の雪国でもキウイフルーツが育つとは最近まで知りませんでした。
品種改良すればサルナシの果実もこのぐらい大きく立派に育つのでしょうか。
2023年5月下旬
同じ場所に定点観察に通い、蕾の写真を撮りました。
訪花昆虫(サルナシの送粉者)に興味があるので、花を見るのは来季の宿題です。
同じ日に民家の蔓棚bで育つキウィフルーツの蕾も写真に撮っています。
次は6月中旬に定点で撮ったサルナシ未熟果の写真です。
2024年5月下旬
翌年もしつこく定点観察に通い、念願だったサルナシの花をようやく写真で記録することが出来ました。
撮影時刻が夕方だったためか、訪花昆虫(送粉者)の姿はありませんでした。
民家の蔓棚に植栽されたキウィフルーツが開花した頃を見計らってサルナシを見に行けばよいことが分かりました。