2023/03/07

落枝を登り降りして遊び、ゼンマイ(羊歯)の葉を試食するニホンザルの幼児

 



2022年9月中旬・午後14:45頃・気温17℃ 

トレイルカメラを設置している里山のスギ林道を野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れが次々と通り過ぎます。 
音量を上げるとニホンザルが静かに鳴き交わす声が聞こえます。 
コンタクトコールやクーコール♪と呼ばれる鳴き声でしょう。 

対面に見えるスギ大木の左隣に太い落枝が急に出現し、奥の斜面に引っかかるように止まりました。 
秋の台風や冬の大雪で横枝が折れかけたままずっとブラブラしていたのですが、通りすがりの猿が跳びついて重みに耐え切れず、遂に折れたのかもしれません。 
枝が折れてバキバキッと落ちてくる瞬間はさすがに撮れていませんでした。 
それでも、落下時刻が2022年9月20日の午後14:43とほぼ正確に推定できてしまいます。 

遊動する成獣の後を追いかけるように赤ん坊の子ザルが懸命に走ってきました。 
例の太い落枝の手前で立ち止まると、両手を掛けて後足で立ち上がりました。 
子猿はキュルキュル♪と可愛らしい声で鳴きながら、落枝に素早くよじ登ると、すぐに天辺から林道へ大きくジャンプして跳び降りました。 
好奇心旺盛で元気一杯な子猿の独り遊びはいつ見ても微笑ましいものです。 
画角の右端ギリギリで座っていた母親の元へと子猿は駆け戻りました。 

次に、子猿は林床から自分の背よりも高く育ったゼンマイ の葉に興味を示すと、手で掴みました。(@0:37〜) 
母親の真似をして食べたのではなく、自発的に戯れで口にしたように見えました。
葉を味見しても美味しくなかったのか、子猿の歯では噛み千切れなかったのか分かりませんが、結局ゼンマイの葉を食べませんでした。 
その間、子猿のすぐ横で母親は林道に座り直すと、頬袋に詰めていた餌を取り出して食べました。 
子ザルが近寄って来ても、食べ物を分け与えたりしません。(給餌しない) 
逆に母猿は子猿を手で邪険に押しのけると、スギの落ち葉をかき分けて何か虫?を拾い食いしました。

成獣でもニホンザルがシダ植物を採食した例を私は観察したことがありません。
PDFで公開されている『ニホンザル採食植物リスト』を参照すると、驚いたことにゼンマイが含まれていました。 
ゼンマイのどの部位を食べたのか、細かい情報を知るためには原著論文に当たらないといけないようです。 
ヒトが山菜として食べるように、ニホンザルもゼンマイの芽や若葉が好きなのでしょうか?
三戸幸久. (2002). ニホンザル採食植物リスト. Asian paleoprimatology, 2, 89-113.
今回の動画でゼンマイを味見したのは、子猿の気まぐれや遊びではなかったようです。 




 

タヌキの溜め糞に集まり産卵するツヤホソバエ科の一種【名前を教えて】

 

2022年9月中旬・午後13:40頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が里山の稜線(尾根道)に残した溜め糞場cに様々なハエ類が群がっています。
去年からの懸案だった謎の微小昆虫が何匹も集まっていたので、カメラにマクロレンズをいそいそと装着して接写してみました。 
三脚なしの手持ちカメラだと無理な体勢を強いられ、長時間の接写は疲れて無理でした。 
一緒に来ていたハネフリバエ科Euxesta属のハエとは明らかに別種と私でも分かります。 

翅は透明ですけど、全身が美しい金属光沢の構造色で覆われています。 
特に腹部は見る角度によって赤紫や鈍い金色に輝き、とても綺麗です。 

透明な翅の先端付近(前縁)に黒いシンプルな斑紋(縁紋?)あります。 
その翅紋を誇示するように広げた翅を振り立てることもありますが、Euxestaほど熱心ではありません。 
歩行中も白い平均棍を上下にピコピコと動かしています。 

白くて細長い卵を腹端から出し入れしている個体がいました。 
立ち止まると後脚を擦り合わせて身繕いを始めました。 
せっかく♀が産卵しそうだったのに、なぜか私は撮影を中断してしまいました。 

糞塊の上をとにかく忙しなく歩き回るので、口吻を伸ばして獣糞を吸汁するシーンが上手く接写できませんでした。 
同種のハエ同士が糞上で頻繁にニアミスするものの、もう少しズームアウトしないと求愛や闘争などの相互作用が撮れません。 

さて、このハエの名前は何でしょう? 
ときどきお世話になっている「みんなで作る双翅目図鑑サイト」の画像一括閲覧ページを眺めてみると、似た写真に「ツヤホソバエ科Sepsis sp?」とキャプションが付いてました。 
ツヤホソバエ科Sepsis」で改めて検索すると、フッカーSさんのブログ記事がヒットしました。 
翅の外縁あたりに1対の小黒点がある、スリムな体型のハエ。頭部は丸い。 翅に小黒点があるツヤホソバエといえば、Sepsis属のヒトテンツヤホソバエ(Sepsis monostigma)がよく知られているが、Sepsis属で翅に黒紋があるものは10種類くらいおり、安易にヒトテンツヤホソバエとは判断出来ない。 (ツヤホソバエ科の一種 @東京23区内の虫 2 より引用)
今回私が撮ったハエも、とりあえずSepsis sp.としておきます。 
もし間違っていたら、ご指摘願います。
昨年は通常レンズでしか撮れず、ハエなのかハチなのかさえ見分けられませんでした。
微小な寄生蜂なのかと思い込んでいたぐらいです。
この謎の虫をなんとか接写したいがために、今季は頑張ってタヌキの溜め糞をひたすら見て回っていたと言っても過言ではありません。
手ブレの酷い動画ですけど、これで一歩前進です。




【追記】
平凡社『日本動物大百科 (9)昆虫II』を紐解くと、ツヤホソバエ類に関する詳細な解説が載っていました。
 ツヤホソバエ科は小型で体の細いハエで、アリに似ていることから英語でant fly、地上では翅を頻繁に動かすことからドイツ語でSchwing Fliegenと呼ばれている。
 日本全国に分布し、11属35種が知られる。(中略)
翅の先に黒い点状の斑紋をもつものが多い。
 成虫は(中略)あらゆる環境に生息し、動物、家畜の糞、堆肥、腐肉など、広く腐敗物によく集まり、(中略)花を訪れるのは吸蜜するためである。(中略)幼虫はほとんどが糞食性または腐食性で、成虫が集まる糞や腐敗物に発生するが、なかには泥に発生するものもいる。
 卵は白く、長楕円形で、大きさは0.7〜1.5mm、ほとんどが卵の長さの何倍もある呼吸管をもっている。卵は少なくとも2日以内に1齢幼虫となる。(中略)幼虫は、糞や腐敗物を食べて成長し、発生源の内部または下の土中で蛹になる。
 ツヤホソバエ類の成虫の行動でもっとも特徴的なものは、求愛行動と繁殖戦略である。とくにSepsis属の多くの種の交尾行動は新鮮な牛糞上で起きる。♀を探索する♂は、牛糞周辺で活発に活動し、翅を頻繁に動かしたり、腹部を上下に動かすなどして、牛糞に飛来した♀をつかまえる。そして♀の体の上に乗り、そのまま牛糞上を移動して歩き、♀が産卵しているあいだ、交尾器の接触を試み、ほかの♂に侵略されそうになると翅を頻繁に動かして反応する。♀が成熟卵を産み付けたのち、ペアは牛糞から離れ、一般には交尾は成立するが、♀に拒否されることもある。交尾は約20分ほど続く。このように、最初の産卵の後の交尾によって受精が起きる。最初の産卵における受精については正確にはわかっていない。
次に機会があれば、Sepsisの繁殖行動をじっくり観察してみたいものです。

産卵シーン?

2023/03/06

タヌキの溜め糞場で早朝に虫を捕食するトラツグミ?【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月中旬・午前5:18・気温16℃ (日の出時刻は午前5:14) 

夜明け直後のスギ林にはまだ朝日が射さず、かなり暗くてトレイルカメラは赤外線の暗視モードのまま起動しました。 
里山のスギ林道上にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞の上に冒頭から鳥が乗っていました。 
赤丸の中に注目してください。 
林床に佇み、辺りをキョロキョロ見回しています。 
見事な迷彩模様で、動かないと絶対に見つけられません。 
熱源の動きを感知するトレイルカメラは、その点でヒトの視覚より優れています。(擬態や保護色に騙されない。)
この地味な鳥はトラツグミZoothera aurea)ですかね? 
もし間違っていたら、ご指摘願います。 

しばらくすると、急に左へ歩き始めました。 
ホッピングではなくウォーキングで駆け寄ると、スギの落ち葉を嘴で2回啄んで何か虫を捕食したようです。(@0:30〜) 
気温の低い(1日の最低気温になる)早朝は虫の動きが鈍く、捕食しやすいはずです。
その後のトラツグミは動きに乏しく、飛び去る前に尻切れトンボで録画終了してしまいました。 
トラツグミも朝目覚めたばかりで未だ少し寝ぼけているのでしょうか? 

トラツグミの食性について調べると、
食性は雑食。雑木林などの地面で、積もる落ち葉などをかき分けながら歩き、土中のミミズや昆虫類などを捕食することが多い。(wikipediaより引用)
 比較的暗い林の林床で大好物のミミズや虫を捕っている。この時、屈伸運動をするように上下に尾を振る仕草をする。(『やまがた野鳥図鑑』p44より引用)

今回の動画を見直しても、尾羽根を動かしていませんでした。 



つづく→晩秋の朝、スギ林道に出没したトラツグミ【野鳥:トレイルカメラ】

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