2022/05/07

雪国の河畔林を朝に走るホンドテン【トレイルカメラ】

 

2022年2月下旬・午前6:08・晴れ(日の出時刻は午前6:14) 

雪深い河畔林でタヌキの溜め糞場rvをトレイルカメラで監視する調査を再開したところ、新たな珍客が現れました。 
朝日が昇る直前にホンドテンMartes melampus melampus)が雪面を左から右へ走り抜けました。 
ニセアカシア立木の下(画角内)でちょっと立ち止まってくれ、サービス精神旺盛です。 
雪の下に埋もれたタヌキの溜め糞の匂いに少し反応している(気づいている)ような気もするのですけど、よく分かりません。 

1/3倍速のスローモーションでリプレイすると(@0:14)、細長い胴体を尺取虫のように上下に波打たせながら歩行することがよく分かります。 
早朝の雪面は凍って固く締まっているようで、テンが歩き回っても足は雪の中に潜っていません。

画面全体が朝焼けのようにピンクがかった最後のパート(@0:35〜)は元々の映像です。 
夜が明けて明るくなったのに赤外線の暗視モードのまま動画を撮ると、このような症状になります。 (この機種の癖というか不具合)
不自然なピンク色を消すために、動画編集時に自動色調補正を施しました。 
肝心の被写体が果たしてホンドテンかどうかは体色が決め手になるので、修正前のオリジナル動画も念のために追加しておきました。


ちなみに冒頭では奥の川面をカモ(カルガモ?)の小群がのんびり遊泳しています。

平地の河畔林にもホンドテンが出没することが分かりました。
関連記事(2か月前、根雪が積もる前の撮影)▶ 夜の河畔林を歩くニホンイタチ?ホンドテン?【暗視映像:トレイルカメラ】

2022/05/06

雪国の裏庭を夜な夜な徘徊するホンドタヌキのペア【暗視映像:トレイルカメラ】

 

2022年2月中旬〜下旬 

郊外の住宅地で裏庭の雪面に残る動物の足跡が気になって、雪道を監視する無人センサーカメラ(トレイルカメラ)を設置しました。 
イエネコ(その1その2)の他にはホンドタヌキNyctereutes viverrinus)も夜な夜な来ていることが分かり、驚きました。 
今まで気づきませんでしたが、タヌキが暮らせる自然が未だ辛うじて残っていることになります。 
新雪ではなく雪道が踏み固められている場合、野生動物は足早に通り過ぎてしまいます。
そうなるとトレイルカメラの起動が間に合わずに撮り漏らす失敗が頻発しました。 
カメラの前に立ち止まってもらうために予め雪道に餌を少し撒いておく作戦も考えられます。 
しかし野生動物への餌付けには色々と問題があるので、今季はストイックに餌付け無しでどこまでやれるか挑戦です。 
カメラの設置場所やアングルをあれこれと試行錯誤しました。 
厳冬期はどうしても低温でバッテリー(の電圧?)がへたり、カメラの起動が少し遅くなるようです。 


シーン1:2/12・午前1:09・晴れ 
深夜にいきなり獣の顔(下顎)がドアップで写りました。 
カメラの匂いを嗅いでいるようです。 
立ち去る獣の正体はいつもの猫ではなく、タヌキでした。 
その背後からもう1頭のタヌキが登場しました。 
おそらく♀♂ペアで出歩いているのでしょう。 
2頭目の目つきが悪いことに気づきました。 
素人目には、右目が斜視または軽度の白内障を患っている気がします。 
カメラのすぐ手前まで近寄り、(匂いを嗅いでから)立ち去りました。 
放射冷却現象で雪面は固くクラスト(凍結)しており、タヌキの足は雪に潜りませんし足跡は残りません。 


シーン2:2/15・午前2:49・晴れ 
この日も積雪は無く、クラストした雪面をタヌキのペアが通りかかりました。 
先導する個体がカメラの前を横切ったものの、カメラの起動が間に合いませんでした。 
5秒遅れて後続の別個体が早足で横切るシーンがなんとか動画に記録されていました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
前回(3日前)とは逆向きの巡回(パトロール)ルートでした。 


シーン3:2/18・午前3:28・晴れ 
おそらくいつもの♀♂ペアがやって来たようですが、先頭個体は撮り損ね。 
後続の個体の通過シーンがなんとか撮れました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
凍った雪面を歩いても足跡は残りません。 
これまでのところ、タヌキのペアは毎晩ではなく、規則正しく3日おきに通っていました。


シーン4:2/25・午後23:18・晴れ 
しばらく来なかったタヌキが次に登場したのは1週間後の夜中でした。 
トレイルカメラの起動が間に合わず、歩き去る(おそらく2匹目の)タヌキの下半身だけ写っていました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 


実はカメラの設置場所の近く(裏手)にはコンポスト容器が設置されていたり、雪原に穴を掘って家庭から出る生ゴミを埋めたりしてありました。 
イヌ科のタヌキは匂いで気づいていたはずなのに、生ゴミや残飯を食い漁った形跡が一度も無いのは意外でした。 
腐った生ごみよりも良い餌に近所でありつけるのを知っていてタヌキが夜な夜な通ってきたのではないかと私は想像しています。 
誰かがこっそり(無自覚、無意識に)タヌキに餌付けしていたのかな? 
例えば畜舎や納屋に忍び込んで飼料を盗み食いしている可能性なども考えられます。 
もっと多数のトレイルカメラを獣道に沿って点々と導入できれば冬の餌場を突き止められたかもしれません。 
カメラ1台での調査にはどうしても限界があります。 

この雪道(獣道)を夜に利用する猫とタヌキがニアミスした時の反応も見たいところです。 (異種遭遇)
ネコが怒ってタヌキを縄張りから追い払うのではないかと予想しています。 
それとも通行する時間帯を上手いこと分けて同じ獣道を共用しているのかな? 


【追記】
雪面に残る足跡をよく見ればタヌキとイエネコの区別がつくそうです。
タヌキの足あとには爪の跡がつくので区別できます。
ネコの足跡には爪の跡がつかないことから区別できる。(関谷圭史『信州のタヌキ』p131より引用)

ネコは足の爪を引っ込めて歩くのです。 


2022/05/05

ナンテンの熟果をついばむ雪国のヒヨドリ【冬の野鳥】

 

2022年2月中旬・午後16:05頃・晴れ 

飲み屋の店先に植栽されたナンテンの灌木でヒヨドリHypsipetes amaurotis)が赤く熟した果実を啄んでいました。 
ナンテンの細い枝先になんとか器用に止まり、赤い実をひと粒ずつ啄んで丸呑みしています。 
餌の乏しい雪国の厳冬期でヒヨドリはよほど空腹なのか、私が歩いて近づいてもギリギリまで逃げずに食事を続けています。 
横の車道を車が次々に通過しても平気でした。 
実は私が一度通り過ぎるとヒヨドリは近くの電線に避難したものの、私が撮影のために通りの反対側に渡ってしばらくすると、ヒヨドリはナンテンの灌木に舞い戻って食事を再開してくれました。 

この組み合わせはバードウォッチャーには馴染みのある季節の風物詩ですが、ようやく私も動画で記録することが出来て感無量です。 
長年の宿題が片付きました。 

叶内拓哉『野鳥と木の実ハンドブック』でナンテンの項目を参照すると、
12月頃までは鳥が食べることはほとんどない。採食し始めるのは、多くは年が明けた頃からで、ほとんどはヒヨドリが採食し、他の鳥が食べるのは非常に珍しい。(p18より引用)
満腹になるとヒヨドリはようやく飛び去りました。
丸呑みした果実に含まれる種子は未消化のまま糞と一緒にどこか遠くに排泄され、ナンテンの種子散布を助けていることになります。
 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、ヒヨドリがときどき採食に失敗して実を落としていることが分かりました。 
小さくて丸くてツルツル滑りやすいナンテンの果実を嘴で掴み損ねてしまい、弾き飛ばしてしまったようです。 
うっかり失敗した(取りこぼした)のではなく、意図的に果実を選り好みしている可能性もありますかね? 
動画撮影中に計12個のナンテン果実の採食を試み、そのうち2個失敗しました(捨てた?)。 


【追記】
『稲垣栄洋 『たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書)』によれば、
ナンテンは、哺乳動物に対しては有毒植物だが、鳥はナンテンの実を食べることができる。ただし、ナンテンの毒は鳥に対しても効果があるので、鳥も一度にたくさん食べることができない。そのため、一気に食べられることはなく、少しずつ何度も食べられたり、何羽もの鳥に食べられる。こうして植物は、鳥に対しても弱い毒を利用しているのである。(p164より引用)
ここまで踏み込んで解説してある本は少ないです。

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